専門分野
健康経済学、開発経済学
研究テーマ
健康経済学、開発経済学
研究紹介
人の行動や態度は同級生や友人、知人から影響を受けることがあり、経済学ではこれを「ピア効果」と呼んでいます。特に、消費におけるピア効果とは、ピアの消費行動に対する消費反応のことを指しています。例えば、友人がiPadを購入するのを見て、自分も購入を検討することがあります。
私の研究のひとつは、中国のデモリッション(Urban Housing Demolition, UHD)を利用して、消費に対するピア効果を検証するものです。中国では、都市化と開発のため、大規模な建物のデモリッションが行われています。デモリッションは政府によって決定され、家計はそれを予測することができません。2015年の一人当たり可処分所得は21,966元(3,195ドル)に対して、デモリッションされた家計には平均的に908,918元(132,221ドル)の補助金をもらえます。したがって、このように予想外の巨額の富を得た家計は、消費を大幅に増加させたことがわかります。これにより、消費に対するピア効果を検証することができます。仮にピア効果がないとすると、デモリッションされた県の非デモリッション世帯(緑)は、非デモリッション県の非デモリッション世帯(ピンク)と同様の消費をするはずです。一方、緑色世帯がデモリッション世帯(黄色)の影響を受けて消費を増やしたというピア効果があるとすれば、緑色世帯とピンク色世帯の消費に差が出るはずです。
操作変数(instrument variable, IV)法を使い、結果は統計的に有意なピア効果を示しています。ピアの消費に対する家計の年間消費の弾力性は0.233~0.292です。つまり、デモリッション世帯(黄色)の年間平均消費成長率が10%上昇すると、ピア(緑色)の年間消費成長率が2.33%~2.92%上昇します。さらに、プラセボテストで各世帯にランダムにプラセボピアを割り当て直し、それを1000回繰り返します。図2は、プラセボテストの係数の分布を示しています。黒い線は分布の95%以上の点であり、赤い線は推定されたピア効果を示しています。赤い線は分布の右端にあり、プラセボ郡に基づく推定値とは異なることから、メインの結果は偶然ではなく、ピア効果によるものであることが考えられます。
これらの効果は、デモリッションの割合が高い郡でより顕著です。また、この結果は、都市部の大規模なデモリッションが消費に及ぼす正の有意な外部性を示しています。
沈 燕妮
SHEN, Yanni
助教:Assistant Professor
学位:博士(国際公共政策)(大阪大学)
yan-shen@osipp.osaka-u.ac.jp