専門分野
健康経済学
研究テーマ
健康、医療保険、労働
研究紹介
病気の発症や、それに伴う医療費の支払いは誰にでも起こりうるリスクです。 私の研究関心は、人々がそのような健康・医療費リスクにどう対応しているのか、また関連する政策が人々の行動を通じて社会にどう影響しているのかをデータを用いて検証することです。
一例として医療費支払いの金銭的リスクを考えます。教科書的に言えば、医療保険に多くの人が加入して保険料を支払い、誰かが運悪く病気にかかったら給付金を出すことで対処します。それでは、アメリカのように公的医療保険が国民の一部にしか提供されない場合、人々はこのリスクにどう対処するのでしょうか?
主に三つの手段が用いられています。一つは民間医療保険への加入です。主に、職場の雇用主が提供する保険(Employer-Sponsored Health Insurance、以下ESHI)が利用されています。二つ目は貯蓄・借入です。健康な時期に貯蓄したお金を使って医療費を支払う、または病気時にお金を借りて支払い、後で元気になってから返済する方法です。三つ目は、医療機関が提供するセーフティネットです。連邦法により、医療機関は緊急状態の患者に対しては支払い能力を問わず医療を提供しなければならないと定められています。そのため支払い能力が乏しい患者が治療を受けた場合、医療機関は医療費を一部免除したり、支払いの先延ばしを事実上許容したりしています。このような慣行は、無保険者や低所得者にとって重要な保険機能を果たしていると考えられています。
私が現在行っている研究では、人々が医療費リスクに対して、この三つの手段をどのように使い分けているのか、また民間医療保険への需要が他の二つの代替手段の利用可能性に応じてどの程度異なるのかを明らかにしようとしています。例えば下図は、ESHIへの支払い意志額(Marginal willingness to pay)が、各個人が保有する純流動資産(Net liquid assets)と医療機関への借金(Medical debt)に応じてどのように変わるのかを図示したものです。今後はこの分析を拡張して、ESHIに関連する政策が人々の行動を通じて労働市場にどのような影響を与えるのか検証したいと考えています。
また医療保険以外にも、健康診断の結果がその後の健康状態に与える影響や、人口減少・少子高齢化が外来医療サービスへのアクセスに与える影響などの研究も行っています。興味のある方はホームページなどからチェックしてみてください
西山 克彦
NISHIYAMA, Katsuhiko
講師:Lecturer
学位:Ph.D. in Economics (ノースカロライナ大学チャペルヒル校)
nishiyama.katsuhiko.osipp@osaka-u.ac.jp