専門分野
国際政治学、メディア学
研究テーマ
国際政治、紛争研究(特にアフリカ)、メディア研究
研究紹介
国際報道を研究しています。現状はマスメディアが提供する報道を通して世界の一部を断片的にしか覗くことができません。日本での国際報道は報道全体の10%程度にとどまっており、地域・トピックにおいても大きく偏っています。国際報道の大半はアメリカ、東アジア、西ヨーロッパに集中しており、アフリカ、中南米、南アジアなど世界の人口のマジョリティを構成する、いわゆる「グローバル・サウス」に関する報道は極めて少ないのです。このような傾向は新聞、テレビニュース、インターネットニュースにおいても、国営・民営を問わず、偏りはよく似通っています。
どのような、どれほどの偏りがあるのか、そしてなぜこのような傾向が生まれるのかを解明すべく、報道量を分析しつつ、報道機関による取捨選択のプロセスを探っています。その成果を公開するため、学生と一緒にGNV(Global News View)[http://globalnewsview.org/]というニュース・報道分析ウェブサイトを設立し、運営しています。地域や国別の報道量の他、報道される・されない出来事・現象と、そのタイミングを比較・分析するケーススタディも行っています。世界全体を視野に入れていますが、特に、本来なら報道に値する現象・課題を多く抱えているにも拘わらず報道量が極めて少ないアフリカにフォーカスを当てています。その関連で、南部アフリカの安全保障問題の研究ネットワーク(SACCPS)[http://saccps.org/]の運営にも携わっています。
また、メディアを見つめるだけでは、報道の決定要素を理解することはできません。国内外の政府機関や関係者、企業、世論なども、また社会全般に浸透しているイデオロギーもメディアの優先順位に大きく影響しています。従って、メディア学だけではなく、これらのアクターが相互に影響を及ぼすプロセスを分析するアジェンダ・セッティング(議題設定)の研究も行っています。
国別報道量 文字数 2017年
各国ごとに、3社(朝日・読売・毎日)の文字数の平均を取り作成。
学生へのメッセージ
報道を通して描かれる世界を鵜呑みにせず、常に問う姿勢を持ってもらいたいです。報道されていない世界があるとすれば、なぜ取り上げられないのかを考えてください。
世界に蔓延し深く根付いている「自国中心主義」のイデオロギーがまずそのベースにあるでしょう。それは報道の構成から、政治や事件・事故・現象、スポーツ報道などの内容にまで見受けられます。また、マスメディアは力と富に迎合してきた傾向があることとも関係しているのかもしれません。さらに、ニュースのオンライン化に伴う報道業界において悪化しつつある財政状況はどのような影響を与えているのか。答えを探すことによって生まれたときから刷り込まれている「常識」も見つめ直すことにもなるかもしれません。
グローバル化が急速に進み、環境、貧困・格差、保健衛生、安全保障など世界が抱えている課題が密接に絡み合っており、世界全体を視野に入れなければ理解することも解決することもできません。そのような中で、ジャーナリズム、情報の流れとそのあり方についてぜひ考えてもらいたいです。
ホーキンス, ヴァージル
HAWKINS, Virgil
教授:Professor
学位:博士(国際公共政策)(大阪大学)
hawkins@osipp.osaka-u.ac.jp