教員紹介
Faculty
研究テーマ
民法(主に財産法)、法学方法論
研究紹介
法律家は制定法を前提として紛争の法的解決を図るが、その際、結論は直観的に導かれるにもかかわらず、その理由を十分に説明できないことがある。このメカニズムを説明するモデルを構築し、直観と制定法の関係を明らかにすることに、私はこれまで取り組んできた。
結論が直観的に導かれるのは、脳がそのための高度に専門化した仕組みを備えているからである。人間は言葉や論理だけで思考しているわけではない。母語話者が「誰は学校へ行ったの」という文を不自然だと即座に感じるのは、その一例である。
脳は多数のモジュール型処理システムから構成されている(ガザニガ)。直観的判断は、これらのモジュールから生じる。たとえばトロッコ問題の異なるバージョンで結論が分かれるのは、状況によって前面に現れるモジュール——「可能な限り多くの命を救うべきだ」というものと、「他人の身体を傷つけるべきではない」というもの——が異なるからである。
これらの要請は、法原理としても機能する。法原理とは、ある価値や状態を可能な限り高い程度で実現することを命じる規範、すなわち最適化命令である(アレクシー)。全ての人間がほぼ普遍的に共有し、遺伝的に基礎づけられていると考えられる価値体系の初期状態を、普遍道徳文法と呼ぶ。その有力な候補の一つが、他者の身体を傷つけたくないという衝動である(私は「要請」ではなく「衝動」と呼ぶべきだと考えている)。もしこの衝動が普遍道徳文法として脳に備わっているとすれば、法原理の一部もまた、生得的に人間の脳に存在することになる。
法原理は最適化命令である以上、その構造上、互いに衝突せざるを得ない。法の世界においてこの衝突を解決するのは、立法者や裁判所による政治的決定である。立法者の決定は制定法となり、裁判所の決定は判例となる。ただし、法のインテグリティを維持する必要があるため、これらの決定の間には評価上の矛盾があってはならない。その意味で、立法者や裁判所の判断は一定の枠組みに制約されている。
制定法や判例を通じて学習された評価は、脳内に内在化され、直観的判断の基礎の一つとなる。直観と制定法は、このように密接に関連している。
