専門分野
国際貿易
研究テーマ
貿易理論
研究紹介
関税政策が各国の厚生に及ぼす影響について理論研究をしています。特に、企業間で生産性が異なるようなフレームワークのもとで、各国政府による関税政策がそれぞれの企業の行動をどのように変化させ、それを通じて厚生にどのような影響を与えるのかを分析しています。
伝統的な貿易理論モデルは、基本的に各企業の生産性を同一と仮定しているため、全ての企業が輸出することを想定したフレームワークのもとで関税政策の効果を分析してきました。しかし、1990年代に企業レベルのデータが入手できるようになったことで、各産業の輸出企業を調べると、輸出を行う企業は一部の生産性の高い企業のみであることが明らかになりました。さらに、最近の実証研究では、企業が設定するマークアップ(費用に対して価格を上乗せする割合)の平均は年々増加しており、そしてその増加はごく一部の生産性の高い大企業によってもたらされていることが報告されています。これらの特徴を組み込んだフレームワークの下で関税政策の効果を分析すると、関税政策が貿易相手国の輸出企業の行動に与える影響は伝統的な貿易理論モデルとは異なり、各輸出企業の生産性に応じて大きく異なることが最近の研究でわかってきています。
最近は、国家間で貿易協定を締結するときに、締結国間で取引される物品に課す関税率をどのような水準にすることが望ましいのかを分析しています。現実世界で観察される特徴を組み込んだ前述のフレームワークの下でこの分析を行うと、対象とする物品によっては一定水準の関税率を締結国間の取引に課すことで締結国の厚生を改善することができる可能性が示されました。この結果は、各企業の生産性と価格設定行動の違いを考慮して関税政策の分析を行うことによって得られるもので、今まで明らかにされてこなかった関税政策の重要な政策的含意を得ることができると考えられています。
田所 篤
TADOKORO, Atsushi
助教:Assistant Professor
学位:修士(経済学)(大阪大学)
tadokoro@osipp.osaka-u.ac.jp