専門分野
公共経済学、政策評価、教育、医療、国際協力、社会関係資本などの実証研究
研究テーマ
政策実証分析、NPO/NGO、国際協力、環境、ジェンダー、税制、格差など
研究紹介
私の研究は、「市民社会(Civil Society)」「ソーシャル・キャピタル(Social Capital)」「幸福度(Happiness, Well-being)」という3つのキーワードで表すことができます。
第一は、市民社会研究です。NPO、NGOが寄付やボランティアによって政府や営利企業が提供できない公共サービスを提供するのが市民社会セクターあるいは非営利セクターで、こうしたセクターの経済活動の規模や収入構造はどのくらいか、寄付やボランティアの動機は利他的か利己的か、寄付優遇税制は寄付の増加をもたらすか、といったことを研究してきました。この市民社会研究の分野では、多くの国際プロジェクトに日本やアジアの代表として参加して実績を積み重ねてきました。
第二は、ソーシャル・キャピタルの研究です。ソーシャル・キャピタルとは、コミュニティを円滑に運営するための触媒のような、目に見えない社会インフラで、人々が他者や組織に対していだく信頼(Trust)、相互に助け合う習慣、人脈・交友関係などの人的ネットワークなどから構成されます。成長企業と衰退企業、犯罪多発地域と安全な地域、災害に強い町と脆弱な町といった様々な違いをソーシャル・キャピタルの違いによって説明できる可能性があります。捉えどころがないようにみえるソーシャル・キャピタルというものを可視化し、SCの源泉や社会経済的な効果を、様々な統計データを使って分析しようという試みが多くの研究者によって行われており、私たちの研究室も国際的研究ネットワークと連携しつつ活動しています。
第三は、幸福度研究です。「World Happiness Report 2019」によると、日本人の幸福度(2016~2018)は、世界156か国のなかで58番目、OECDに加盟する36か国のなかでは、32番目にとどまっています。私の研究室では、内閣府経済社会総合研究所などと共同で、日本人の幸福度の測定や決定要因の分析、主観的幸福度に影響を与える客観的指標の体系化などを行ってきました。GDPなどで表される経済的豊かさは、必ずしも主観的幸福度と一致しません(イースタリン・パラドクスと呼ばれます)。日本人の主観的幸福度がそれほど高くないのはなぜか、幸福だと感じていないのはどういう属性の人か、幸福度を政策的介入によって高めることはできるか、またそうすべきなのか。幸福度研究は比較的新しい研究分野ですが、研究課題は無限にあり、興味が尽きない分野でもあります。
以上、私の研究室で取り組んでいる3つの研究分野を紹介しましたが、これらに共通する特徴の一つは「学際性」です。私自身は、主として経済学の視点から研究を行っていますが、心理学、社会学、政治学、開発学、社会疫学、社会学、経営学、都市工学などの研究者や実践家と共同研究したり、議論したりする機会が常にあり、大きな刺激を受けています。もう一つの共通項は「政策志向」だという点です。三つの研究分野は、これからの日本社会や世界を考えるうえでいずれも重要な分野であり、様々な政策が実施されていますから、実証分析に基づいて政策効果を測定したり評価することが不可欠です。多くの優秀な共同研究者や研究室の学生とともに、こうした研究領域のフロンティアに身をおいて研究をすることができることは、とても幸せなことだと感じています。
山内 直人
YAMAUCHI, Naoto
教授:Professor
学位:博士(国際公共政策)(大阪大学)
yamauchi@osipp.osaka-u.ac.jp