専門分野
公共経済学
研究テーマ
公共経済学、公共経営、財政学、地方分権、公共ガバナンス
研究紹介
公共経済学では、「市場の失敗」のメカニズムを明らかにして、この失敗を是正する政策を考えるとともに、失敗を是正する主体である公共部門(政府)の失敗 (「政府の失敗」と言う。)を正す制度設計についても、理論的、実証的に研究しています。
具体的な例として、国と地方の政府間財政制度に関連した研究を紹介します。日本の政府は、中央政府(国) および、地方自治体(都道府県・市町村)から成り立っていますが、地方自治体の行動は、国で制定される法律で規定されています。つまり、国は、地方自治体の行動を想定して、様々な制度・法律を作っています。この政府間関係は、経済学モデルにおけるプリンシパルとエージェントの関係といえます。政府間には、情報の非対称性や外部性など、政府の失敗を引き起こす、さまざまな要因が潜んでいます。夕張が財政破綻したことも、この失敗が生じた結果といえます。研究では、この政府間の関係において、望ましいガバナンス制度とは何かを明らかにする理論的・実証的研究を行っています。
また、非効率な財政運営は、財政赤字を生み出し、将来世代に借金のツケをまわすことになります。以下の図からわかるように、日本は、世界諸国と比べ、歳出に対して歳入が低く、持続可能ではない状態になっています。この状態から抜け出すためには、1)歳出と歳入のそれぞれの大きさのバランスを考えること、2)歳出を真に必要なものに限定すること、3)必要な財源確保(税の徴収)を行うことが重要です。そのため、政府の行動をガバナンスする仕組みづくりの研究が重要視されています。
学生へのメッセージ
望ましい制度の設計には、「現実の制度が、関係主体にどのようなインセンティブを与え、どの様な行動を促すのかを、理論的・実証的に分析する」ことが不可欠です。ゲーム理論をベースに行動仮説を導出し、その結果をデータで客観的に裏付けることが出来れば、望ましい制度設計に向けた、説得的な政策提言ができます。データの違いによって結果が変る場合も多く見られます。説得的な議論を行うためには、データの違いが何から生じているのかに関して、再度、理論的な視点に立ち戻り、新たな要素を織り込んだ仮説を提示することも必要でしょう。このような習慣をOSIPPでの学習を通じてぜひ身に着けてもらえればと思います。
赤井 伸郎
AKAI, Nobuo
教授:Professor
学位:博士(経済学)(大阪大学)
akai@osipp.osaka-u.ac.jp