専門分野
犯罪学,都市社会学,社会的不平等
研究テーマ
(1)社会政策や法の取締が犯罪に与える影響の検討
(2)犯罪が社会的不平等に与える影響の検討
研究紹介
私の研究関心は,犯罪と地域コミュニティの相互的な関係を実証的に検証することです.具体的には,(1)社会政策や犯罪への取締が犯罪にいかなる影響を与えるのか,(2)犯罪が社会不平等に対していかなる影響を与えるのか,という2つのリサーチクエスチョン(RQ)に取り組んでいます.私の研究では,因果効果を識別できるように,準実験的なリサーチデザインを構築し,科学的根拠の提示,さらに,そこから導出される政策的インプリケーションを提示することを重視しています.以下では,RQ(1)と(2)の具体的な研究内容を簡潔に紹介したいと思います.
RQ (1)
医療大麻合法化が,メキシコ麻薬組織の活動に損害を与える (Evalina Gavrilova氏とFloris Zoutman氏との共同研究)
アメリカ国内で乱用される薬物の多くはメキシコ麻薬組織によって密輸され,麻薬組織間の抗争は後を経ちません.このような問題に対し,これまで厳罰な政策が取られてきましたが,本研究では,代替的な政策の一つとして,米国の医療大麻合法化を検討しています.下のグラフは,医療大麻合法化の暴行罪に与える効果が,アメリカ=メキシコの国境から離れるに従い,低減していることを示しています.
暴力団排除条例は,暴力団組員数を減らす一方,振り込め詐欺を増やす(星野哲也氏との共同研究)
他国では組織犯罪の構成自体が違法ですが,日本では,「指定暴力団」という形で暴力団(ヤクザ)の存在そのものは従来取り締まっていませんでした.しかし,近年暴力団排除条例が制定され,ヤクザへの取り締まりが強化されています.本研究では,政策の「意図する結果」と「意図せざる結果」を検討しています.下のグラフは,暴力団排除条例が制定された後に,振込め詐欺の被害総額が上がっていることを示しています.
RQ (2)
クラック・エピデミックによって, 20年間にわたり都市の不平等が変容した(博士論文)
1980年中頃アメリカの都市部では,クラックと呼ばれる薬物のエピデミックによって,社会不安が高まりました.本研究では,この歴史的な薬物蔓延が,人種・階級別の郊外化,人種間の住み分け,さらにはスラムの台頭へ与える長期的効果を検討しています.下のグラフは,クラックが都市部に蔓延したことによって,その後20年間にわたり都市部の黒人貧困の集中化が促進されたことを示しています.
学生へのメッセージ
犯罪,都市問題,社会的不平等は学際的な研究領域です.OSIPPでは,様々なバックグラウンドを持った研究者がいますので,色々なところにアンテナを張り巡らし,フレキシブルにアイディアを得て欲しいと思っています.私の研究室はいつでも空いていますので,遊びに来てください.
鎌田 拓馬
KAMADA, Takuma
准教授:Associate Professor
学位:Ph.D. in Sociology(ペンシルバニア州立大学)
kamada@osipp.osaka-u.ac.jp