専門分野
民法
研究テーマ
民法(主に財産法)、法学方法論
研究紹介
学問とは、目に見えるもの(経験)を目に見えないもの(自然法則・ドグマ・原理・構造······)で説明する営みである。たとえば、リンゴの落下と天体の運行の背後に万有引力の法則を見つけたり、われわれが話したり書いたりする言葉の背後に文法を見いだしたりする営みである。そして、ニュートンの万有引力の法則がガリレオの落体の法則とケプラーの惑星運動の法則を統一したように、学問は体系化を目指す。法学という営みも、多くの法令や判例を整合的に説明できる「何か」を見つけ、法令や判例を体系化することを目的としている。
私のこれまでの研究の柱の一つは、その「何か」が何であるか、どこで見つけることができるか、を追求することにあった。それに対するさしあたりの答えは、その「何か」は「法原理」と呼ばれるものであり、それは紙に書かれた・憲法を含む制定法の中にではなく、自然法の中に見いだすことができる、というものである。しかし、法原理と呼ばれるものの中にも、さまざまな性質のものがある。まず、正義・自由・平等・人権・平和・民主主義といった一定の法価値が可能な限り高い程度で実現されることを命ずる規範が「法原理」と呼ばれる。このような法原理は互いに衝突し合うが、それらの法原理間の調整を行う法原則(例、過失責任主義)も「法原理」と呼ばれる。これら以外にも「法原理」と呼ばれるものがあるように思われる。種々の法原理の相互の関係を明確にし、法規範の世界の構造化を図り、法の内的体系の姿をより鮮明に描き出すことが、現在まで続く私の研究の総論的なテーマである。
私の研究のもう一つの柱は、以上の総論的な研究成果を、私の専門である民法の諸領域に応用することにある。すでに、契約法・事務管理法・不当利得法・不法行為法については一応の検討を終え、それぞれの法領域で作用している複数の法原理(内的体系)を明らかにし、その成果をさまざまな形で公表してきた。現在は同様の研究を、科学研究費と信託研究奨励金の助成を受けて、時効法と信託法について継続している。
大久保 邦彦
OKUBO, Kunihiko
教授:Professor
学位:修士(法学)(京都大学)
ohkubo@osipp.osaka-u.ac.jp