専門分野
社会学、民族・エスニシティ、市民社会論
研究テーマ
多文化主義、自由主義、移民
研究紹介
移民に対する排斥が高まったり、それに耐えかねて移民が暴動を起こしたりするなど、今日では文化の異なる人々が同じ社会で暮らすのが難しくなっています。どういう規範原理ならば、彼らを納得させ、共存させることができるでしょうか。
これまでの支配的な規範原理には大きく分けて二つあります。一つは、国家が諸々の文化に対して中立を保つという統合主義です。人々は私的領域ではどのような文化や伝統、価値観を持っても自由ですが、公的には一般的ルールに従ってもらうというものです。しかし、これでは弱いエスニック集団が被っている隠れた不平等を十分是正できないおそれがあります。
もう一つは、弱いエスニック集団を政府が積極的に支援するという多文化主義です。そのような支援を受ければ、彼らも自分たちの文化の価値が認められていると感じ、社会に参入できるようになるかもしれません。しかし、この政策だと集団の特徴が固定的に捉えられ、人々が自由に様々な文化や価値観を追求するのが難しくなってしまうかもしれません。
結局、弱者支援について統合主義は消極的過ぎ、多文化主義は積極的過ぎます。このようなジレンマを乗り越えるには、人々が社会関係資本を対等に得られるようにすべきだというのが私の考えです。人々が生を送る上では、他者から有益な情報が伝わってくることや、他者と相互に信頼し合えること、いざという時には他者と協力し合えることなどの社会関係資本が必要です。特定の文化集団に属する人々がそのような社会関係資本を得られないでいると、不平等に苛まれることになります。もし社会関係資本が対等に得られるようになれば、人々は統合主義のように隠れた不平等を放置されることもなく、また、多文化主義のように文化を固定的に扱われることなく、それぞれが望ましいと思う価値や文化を追求できるようになるものと考えられます。
ところで、人々が社会資本を得るのは交流ネットワークに包摂されることによってです。社会資本は外部から与えることができず、人々の相互作用の中から生み出すしかないものです。では、そのようなネットワークとはどのようなものであり、どうやって支援すればできるのでしょうか。そのような課題に現在取り組んでいます。
学生へのメッセージ
OSIPPの政治系の教員は、外交史や国際組織の研究をされている方々もいますが、紛争の研究をされている方々も多いです。私もその一人であり、規範的なアプローチで研究を進めています。しかし、他の先生方はもっと実証的な研究をされています。このように紛争研究にも色々な切り口があるということも、OSIPPで研究することの一つのメリットだと思いますので、ぜひ多様な紛争研究に触れてみてください。
河村 倫哉
KAWAMURA, Michiya
准教授:Associate Professor
学位:修士(社会学)(東京大学)
kawamura@osipp.osaka-u.ac.jp