専門分野
マクロ経済学、国際経済学
研究テーマ
景気循環、貿易、金融政策、経済発展の理論実証分析
研究紹介
GDP、消費、物価変化率、輸出入、為替といった集計変数を動かすものは何でしょうか。マクロ経済学、国際経済学と呼ばれる経済学の分野では、これら集計量の決定要因を家計や企業、政府、銀行などの行動を出発点に分析しています。私は、景気循環や経済成長に焦点を当てるマクロ経済学と、貿易や国際金融に焦点を当てる国際経済学の交点で研究を行ってきました。
過去の代表的な研究として、資本財の製造年数と貿易の関係を理論的に検証したものがあります。既存研究で生産性と輸出の関係が検証されてきたのを補完し、製造年数と貿易の関係を示したものです。新しい資本財は平均して生産性が高く、その中でもとくに生産性の高い資本財が輸出に使われる一方、古くなった資本財は陳腐化することで生産性が低く置き換えられていくことをあらわしています。
最近は、物価変化率や名目為替といった名目変数が貿易に与える影響を理論的に分析した上で、データを用いて実証的に確認しています。一つの結果として、低物価変化の国では硬直的な素材価格に直面している産業に比較優位があることを示しました。
学生へのメッセージ
複雑な現実を単純化したモデル分析は、政策の効果を予測するための強力な道具です。しかし、仮定を少し変えるだけで全く正反対の結果が得られることがあります。そもそも、そのモデル分析では何が仮定されていて、その仮定が妥当なのか、その仮定を変えるとどんなことが起こりそうか、その仮定が妥当か確かめるにはどのようなデータを用いて何を見ればいいのか、ということを常に意識することが大切です。
同じようにデータを用いた統計分析は、いままでの政策の効果を確認し、将来を予測するための強力な道具です。しかし、異なる仮定、別の時代の別のデータを用いたために正反対の政策的効果が示唆されることもしばしばあります。そもそも、その統計分析はどのような論理的背景があって行われているのか、背後にある論理(モデル分析)は一体何なのか、ということを常に意識することが大切です。
政策論議では、このような前提条件を吟味せず、分析の結果だけを見て議論が混迷することがしばしば見受けられます。結果だけを摘み食いせず、分析そのもののを吟味する習慣をOSIPPでの学習を通じてぜひ身に着けてください。
石瀬 寛和
ISHISE, Hirokazu
准教授:Associate Professor
学位:Ph.D. in Economics (Boston University)
ishise@osipp.osaka-u.ac.jp