専門分野
開発経済学、医療経済学
研究テーマ
開発経済学、医療経済学
研究紹介
私は開発経済学と医療経済学を専門に研究を行なっています。
私のプロジェクトの1つは、西アフリカにおける宗教とエボラ出血熱の感染率の相関に焦点を当てたものです。この研究により、他の要因を制御した上で、宗教信仰とエボラ出血熱の感染率において正の相関があることを明らかにしました。
また、宗教が女性のリプロダクティブ・ヘルスにどのような影響を与えるかを、ナイジェリアの金鉱業の事例において研究しています。人口保健調査データ(DHS)と金鉱山の位置情報を用いて、女性の居住地と採掘場の近接度を測定し(Figure )、採掘が健康に及ぼす因果関係を推計しました。この結果から、金鉱山に近い地域に住んでいるイスラム教徒の女性は、同地域に住むキリスト教徒女性に比べて不妊症や早期閉経となる確率が高くなることが分かりました。これは、イスラム教徒の女性が自宅で鉛を大量に含む金鉱石を精錬していることに原因があると考えられます。
その他にも、1990年代に中国の農村部で行われた衛生プロジェクト「トイレ革命」の効果を調査する共同プロジェクトに参加しており、この地域でのトイレの近代化が与えた効果を研究しています。我々の研究では、家庭のトイレの改装が人々の一日の外部労働時間を増やしたという結果が得られました。「トイレ革命」以前は、伝統的な中国農村部において人間の排泄物を餌の一つとして家畜を飼い育てており、これに時間が取られていました。しかし、衛生的なトイレは、家畜・家禽の飼育や家の掃除といった家事を著しく減少させ、人々は時間を再配分し、より長い時間、外部での仕事に従事することが可能になりました。家事の主たる担い手の女性にとっては、この傾向は特に顕著であり、外部労働時間がさらに増しています。しかし、労働時間が増えると短期的には健康指標が下がる可能性があると先行研究で指摘されています。トイレの改装が健康指標を変化させない理由はおそらく、健康への正の影響と労働時間の増加による健康への負の影響が相殺された結果だと考えられます。
WANG, Dongqin
助教:Assistant Professor
学位:博士(国際公共政策)(大阪大学)
d-wang@osipp.osaka-u.ac.jp