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【院生紹介】JSPS特別研究員インタビュー(野津成希さん)

【院生紹介】JSPS特別研究員インタビュー(野津成希さん) 2025年4月より日本学術振興会DC2の研究員になった野津成希さんにインタビューしました。 ・大学院進学を志した理由学部時代に指導教員の先生(武蔵大学の広田啓朗先生)が僕にもわかる言葉で研究の面白さを伝えてくれたことがきっかけです。OSIPPの博士前期課程に進学する際には、博士後期課程への進学も視野に入れていました。修士論文を執筆している段階では、将来も研究を続けられるかどうか不安に感じることもありましたが、先生方のサポートと日々の積み重ねによってその不安がなくなり、現在、博士後期課程にて研究を続けられています。 (写真:大学院赤井ゼミメンバーとその他学生たちと。野津さんは後列右から3番目。) ・研究のやりがいを感じる瞬間論文が一通り完成した後,意味もなくpdf化された論文をPC上でスクロールする瞬間です。私の研究論文は様々な図や表を用いながら分析結果について説明します。それらの配置や見せ方など、工夫した末にでき上がった論文を見ると、やり切ったという達成感を得ることができます。 ・特別研究員になるまでの経緯を教えてください。私は博士後期課程の最初の2年間は大阪大学のSPRINGプログラム(JST 次世代研究者挑戦的研究プログラム)に採択されていました。博士後期課程3年目にあたる2025年の春から日本学術振興会(以下、学振)DC2に採択され、特別研究員になりました。博士後期課程にいる学生は、基本的に申請書を執筆して学振に応募します。私もそうでした。今から考えると、この申請書を書くプロセスが博士後期課程での研究計画を考えるきっかけになっていたように思います。・特別研究員になってみて(SPRINGとの違い)支給される研究費の総額はほぼ変わらないのですが、学振の方が研究費の使い方の用途が広いところがあると思います。SPRINGでは英文論文投稿のサポート等、研究費使用の目的用途がある程度決められていました。一方で学振は決まった予算の中で、自分自身で用途を決めて使えます。また、学振は「研究員」という立場なので、より独立した立場になったと思います。それにより、学内の手続きで指導教員に処理をしていただかなければならない場面が減ってご負担を減らすことができたので、個人的には良かったと思っています。 ・OSIPPでの研究環境自分のペースで望む研究に取り組める環境が整っており、成果を発表する機会も多く用意されています。また、多くの先生方がオフィスアワーを設けてくださっており、積極的に質問や相談ができる体制が整っています。特に、指導教員と副指導教員の先生方(OSIPPの赤井伸郎先生、OSIPPの鎌田拓馬先生)には、技術的な側面のみならず、論文執筆や研究への取り組み方・考え方に至るまで、いつも丁寧にご指導いただいていており、おかげで今の研究活動をここまで進めることができました。 個人Website: https://narukinotsu.github.io/ (OSIPP博士前期課程 奥野愛理)
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教員紹介:松島法明 教授

教員紹介:松島法明 教授 2025年4月に着任した松島法明先生にインタビューを行いました。松島先生は産業組織論の理論分析を専門としています。 研究室の棚に将棋の雑誌を置いているのですね!お好きなのですか 大学院後期課程のころから将棋が好きでした。特に詰め将棋が好きで、パズルのように論理的に解いていくところに惹かれます。もしかすると、研究の思考と近いものがあるのかもしれません。ある時、研究発表の後に「あなたの説明の仕方は詰め将棋のようだ」と言われたことがありました。「これがこうだからこう」といった論理展開が、将棋の詰め筋と似ているのかもしれませんね。 これまでの研究について紹介していただけますでしょうか。 企業間競争の帰結について、学部生でも理解できる極めて素朴な理論モデルを使って分析してきました。 21世紀初頭は民営化や民業圧迫といった公企業に係る問題があったので、この問題を考えた結果、それなりに引用される成果を出せました。この中の1つでは、公企業の存在が民間企業の投資を過剰に引き出す可能性があり、過剰投資を抑制するために民営化が必要になることを明らかにしています。企業間取引関係を考慮して企業間競争の問題を考えると従来の考えとは大きく異なる帰結が得られることもわかってきたので、この問題も考えた結果、ぼちぼちの成果を出せました。この中の1つでは、川下企業が取引関係にある川上企業と垂直統合すると、当該企業が製品を競争相手と差別化する程度が高まることを明らかにしています。他にも、現存の川上企業が川下企業との取引を確保するために、この川下企業と排他条件付取引を締結できる市場環境も明らかにしています。上記の問題を発展させ、企業数が増えて競争が厳しくなると企業利潤が減るといった素朴な常識が成り立たないような競争環境も考えてみました。これも、それなりに引用される成果になりました。例えば、商標価値の低い製品を供給する企業が数多く参入することで、商標価値が高い製品を供給する企業間の競争が緩和される競争環境を明らかにしています。他にも、技術投資が重要な産業において、普通の水準にある企業が参入すると、現存企業の中で技術優位にある企業の利潤を改善する可能性も明らかにしています。 最近は個人情報の活用に関する研究をされていると伺っています。 個人情報に係ることは大学院のとき(20世紀末)から時々考えていました。当時は電子商取引の黎明期で、光通信や携帯電話市場が盛り上がっていました。電子商取引では個人情報や閲覧履歴を追跡できるので、この情報を活かした価格付けができるようになることで、価格競争の様相が変化すると漠然と考えていました。21世紀頭からは別の研究を中心に考えていましたが、最終消費者向けの役務で強い影響力を有する企業が隆盛してきたことを受けて2010年代前半から再び考え始め、意外と引用される成果を出せました。例えば、企業が2期間競争する下で1期目に供給した顧客について選好の情報が入手できることを利用して、2期目において1期目の顧客に個別価格を提示できる状況を考えました。その結果、製品特性を変更できない場合には1期目の価格付けが非対称になる一方、製品特性を事前に設定できる場合、対称な企業であっても一方の企業だけ差別化の程度を低くすることを明らかにしました。他にも「各企業が個別価格を提示できる場合は競争が促進されやすい」という従来の見解とは大きく異なり、競争環境の下でも個別価格を設定できることで完全に消費者の余剰を搾取する結果が実現しうることを明らかにしています。個人情報を活用した企業間競争については、これと関連する規制が欧州を中心に導入され、これに反応して経営戦略を変更する有力企業も存在するので、しばらくは研究する必要がある課題になると思いますし、最近、1つ成果を出せました。 どのようなきっかけで研究が始まることが多いですか。 主に2つのアプローチがあります。1つ目は既存モデルの拡張を試みる方法です。現実との対応を意識しなくてもできるという意味で思いつきやすい一方、分析結果と現実世界の対応や示唆を説明しにくいのが難点です。2つ目は現実の問題を分析する方法です。この方法で分析可能な研究を思いつくのは難しい分、うまくいった場合にはいい論文ができます。また、Management Scienceなど経営学の雑誌に出版する論文はこちらの方が多い気がします。少し前の話ですが、国立大学に勤務していた際に公務員の給料が民間企業に連動して下がることが望ましいかどうかを疑問に感じたため、分析をしようとしました。ただし、最初は分析がうまくできませんでした。公企業の労働者が賃金を要求しても社会厚生に影響しないので均衡賃金が求まらなくなるからです。研究に詰まって2年後、単純な仮定を置けば解決することに気づきました。公企業の利潤が負になってはいけない、という仮定です。この仮定は当時の郵便局の状況とも整合的で、自然な仮定でした。利潤に仮定を置くことで制約条件付きの最大化問題を解けるようになり、論文になりました現実から研究が生まれるきっかけとして、私はanecdotal evidenceをとても大切にしています。例えば、これまでの研究の紹介の際に「素朴な常識が成り立たないような競争環境」について考えたと申し上げた企業参入についての論文は、大企業が小企業の参入を競争相手と思わない、むしろ歓迎するというanecdotal evidenceが直感的には奇妙だという話を共著者と話して、モデル化できそうだったことが論文につながりました 大学院生を指導するにあたって心掛けていることについて教えてください。 経済学は基礎知識の習得を非常に重要視します。もちろん、私も全く気にしないわけではありません。しかし、それ以上に研究課題や問いをいかに分析可能な形に設定するかが非常に難しいです。学生のそのような能力を涵養すべく、可能な限りの手助けを行っていますまずは学生から何か分析したいアイディアを持ってきてほしいと思っています。その際、基本的に突っぱねずになぜそのテーマ・課題が面白いと思ったのか聞くことにしています。その面白さがモデル分析の際に手助けとなります。また、どのようなジャーナルに出版可能な研究になりうるか、という主観的な見通しも伝えるようにしていますとはいえ、博士後期課程の学生にはタイミングを見計らって、見通しがある程度たっている共著を持ち掛けたほうが良いと判断すれば、そうすることもあります。これまで博士後期課程で指導した学生は標準修業年数内で修了・就職をされる学生が多かったですが、これは結果論なところもあります。 産業組織論の魅力や面白いところはどんなところですか。 現実の企業間競争の帰結の背後にある論理が理論分析によって明快に理解できることだと思います。背後の論理に応じて注力すべき活動がわかるようになると思います。私自身、公正取引委員会の競争政策研究センターで所長を務めています。ここでは、公正取引委員会の職員に経済学の理解を深めてもらうことが主な仕事です。研究センター主催のシンポジウムでコメントしたり、職員から相談を受けた際に産業組織論をはじめとする学術的知見を提供したりしています。経済学の博士号を持つ職員もいるため、そうした知見は最終的に政策形成の現場で活用されています。とはいえ、最終的に制度設計を決めるのは法制度なので、経済学はあくまで補助的な役割にとどまります。ただ、その補助的な役割が果たす意義は非常に大きいと感じています。 松島先生の研究については以下のページでも紹介されていますので是非ご覧ください。先生曰く「1つ目のブログは論文が受理されるごとに更新する予定です。」とのことです。https://nmatsush.blog.shinobi.jp/https://sdgs.osaka-u.ac.jp/research/3142.html ****** 教授 松島法明(まつしまのりあき)研究テーマ: 情報通信技術の進展を踏まえた企業間競争の理論分析専門分野:応用ミクロ経済学(産業組織、競争政策、経営の経済分析)学位:博士(工学) <代表的な業績>Choe, C., N. Matsushima, S. Shekhar, 2024. The bright side of the GDPR: Welfare-improving privacy management. Management Science, Forthcoming.Lu, Q., N. Matsushima, 2024. Personalized pricing when consumers can purchase multiple items. Journal of Industrial Economics 72 (4), 1507-1524.Choe, C., S. King, N. Matsushima, 2018. Pricing with cookies: Behavior-based price discrimination and spatial competition. Management Science 64(12), 5669-5687 <現在取り組まれている研究プロジェクト>個人情報に係る規制が企業間競争に与える影響個人情報を活用した価格差別が企業間競争に与える影響労働市場や投入物市場などの川上市場と最終財市場(川下市場)の相互依存関係を考慮した企業間競争 <個人ホームページ>https://norick.sakura.ne.jp <好きな論文>Anderson and Renault (2006) Advertising Content, American Economic Review序文だけで理論分析の結果と直観が理解できる書き方になっている上に、問題設定の重要性も非常によく説明できているので、勉強になります。 (博士後期課程 辻本篤輝)
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野津成希さん(博士後期課程)が日本地方財政学会佐藤賞を受賞

野津成希さん(博士後期課程)が日本地方財政学会佐藤賞を受賞 OSIPP博士後期課程の野津成希さんが、日本地方財政学会「第二十五回(2025)佐藤賞」を受賞しました。「論文の部」受賞者:野津成希 氏受賞論文:Inter-municipal cooperation cloud and tax administrative costs“Regional Science and Urban Economics”2024 詳細は、下記URLからご覧ください。https://www.gakkai.ne.jp/jilf/award/
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薮中三十二特任教授 OPEN教室 「日本の針路を考える–分断された世界、トランプ大統領で大揺れの世界で–」

2025年7月7日、OSIPP棟講義シアターにおいて、元外務省事務次官の薮中三十二特任教授によるOPENクラス「日本の針路を考える–分断された世界、トランプ大統領で大揺れの世界で–」が開催された。講義は英語で行われ、多様な国籍の参加者が集まった。 はじめに、薮中先生は過去の80年間の世界の大きな変化に触れ、特に戦後の国際秩序はアメリカ主導で再構築されてきたと述べた。そのうえで、トランプ政権の「アメリカ・ファースト」政策がこの秩序にどのような変化をもたらしたのか、またそれをどのように評価すべきかについて問題提起を行った。特に、日本にとって、アメリカの対外政策の転換をいかに理解し、いかなる対応を取るべきかという点について、参加者に思考を促した。 続いて、法の支配、自由貿易体制、アメリカの国際的関与、そして対中関係について、それぞれの現状を分析し問題を論じた。まず、国際社会における法の支配については、ウクライナ侵攻や中東での武力行使に対する安保理の機能不全と国際社会のダブルスタンダードにより、大きく揺らいでいると述べた。 自由貿易体制に関しては、1929年の世界恐慌から1994年のWTO創設までの歴史を踏まえつつ、トランプ政権の一方的な関税措置をWTOルールに反した新たな挑戦と位置付けた。また、アメリカの国際的関与については、トランプ政権下では民主主義の原則がもはや中心的価値とみなされなくなり、それによってG7サミットも本来の目的を失いつつあると述べた。 対中関係については、中国の軍事および経済面における台頭や、台湾有事問題に言及した。米中関係については、トランプ政権が関税をめぐって中国に強硬な姿勢を示す一方で、他の分野では必ずしも同様の態度をとっているわけではないと指摘した。 これらの問題を踏まえ、薮中先生は日本の針路として次の3点を提示した。第一に、日米同盟を強化し、とりわけ、核兵器を含むアメリカの戦力による抑止力を同盟国の防衛に適用する体制−いわゆる「拡大抑止(extended deterrence)」−の実効性を高めること。第二に、日本の防衛力を強化すること。防衛関連予算を巡る議論を単にアメリカの意向に沿うのではなく、「日本のため」という視点で考えるべきだとし、日米安保は日本のみならずアメリカの東アジア戦略の一部でもあることから、交渉を通じた対応の必要性を指摘した。そして第三に、アジアの平和に向けた外交努力を強化し、ASEAN+3、RCEP、TPPなどの地域協力を積極的に推進することが重要だと述べた。 既存の国際秩序が揺さぶられる一方、新たな国際秩序もまだ確立されていない現在、私たちはいかにして目の前の諸問題を捉えるべきだろうか。外交実務の経験を持つ薮中先生の講演を通じて、筆者は国際関係と法の支配との摩擦を実感すると同時に、紛争処理において平和的解決を模索しつつも国際法の規範を堅守しようとする姿勢に触れることができた。今回の講演は日本の外交方針を扱うものであったが、薮中先生の伝えたメッセージは、国籍を問わず多くの人にとって意義のあるものだったのではないだろうか。 (OSIPP博士前期課程 WANG Hsin Ni)
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6月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の6月の研究業績をご紹介します。 ・丸山士行 先生 ・宮野紗由美 先生 ・川窪悦章 先生 ・大久保邦彦 先生 ・瀧井克也 先生 Shiko Maruyama (論文) Fujimoto, Ayame, Rong Fu, Haruko Noguchi, Shiko Maruyama, Sayaka Nakamura (2025) “Breaking Brand: An Observational Study on Pharmacy-Hospital-Patient Relationships and Generic Drug Utilisation in Japan,” BMJ Open, 15(5). May, 2025(査読あり)https://bmjopen.bmj.com/content/15/5/e093601 Abstract: ウェブリンクでご確認ください Shiko Maruyama (論文) Bai, Yuting, Shiko Maruyama, Si Wang (2025) “Nonlinear Relationship between the Number of Children and Late-Life Cognition,” China Economic Review, 91. June 2025,(査読あり)https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1043951X25000756 Abstract: Late-life cognition is a growing concern as populations age. This study investigates how the number of children affects late-life cognition in rural China by exploiting the exogenous variation in the rollout timing of Family Planning Policies. Theoretical analysis suggests a nonlinear effect along the fertility dimension. Using data from the China Health and Retirement Longitudinal Study, we find nonlinear causal effects of fertility. Having one more child when the mother has 4+ children leads to adverse effects on a range of late-life cognition measures, while positive effects exist for episodic memory and mental intactness at low parities, implying hump-shaped effect heterogeneity. Underlying this hump-shaped causal relationship is increased interaction with children but a greater risk of chronic conditions. Shiko Maruyama (論文) Maruyama, Shiko, Sayaka Nakamura (2025) “Wholesome Lunch to the Whole Classroom: Short- and Longer-Term Effects on Early Teenagers’ Weight,” Health Economics, 34(7), 1255-1273. July 2025(査読あり)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/hec.4959 Abstract: Previous studies on the effect of school lunch programs on child obesity have been hampered by effect heterogeneity, self-selection, and stigma-induced under-reporting, having produced mixed findings. Its potential long-lasting effect has also been debated. We study the body-weight effect of a Japanese school lunch program, which provides nutritional lunch to all students at participating municipal junior highs. The lack of means testing and individual participation choice offers causal estimates of actual participation for a diverse and representative group of children. By exploiting almost universal school lunch coverage for elementary school children nationwide, we construct a difference-in-differences (DID) framework. Using the 1975–1994 National Nutrition Survey, a nationally representative household survey with measured height and weight, we find a regressive benefit of school lunch: while no statistically significant effect is found for the full sample, we find significant obesity-reducing effects for the subsamples of children with low socioeconomic backgrounds. This obesity-reducing effect remains at least a few years after graduation, implying effect through not only nutritional contents but also guiding healthy eating behavior. We find little evidence that school lunch reduces underweight. Propensity score weighting, the DID analysis for percentiles, and various falsification tests confirm the robustness of our estimates. Sayumi Miyano (論文) Li, Jialu and Sayumi Miyano (2025) “Mutual Gains or Exclusive Contests?: The Strategic Calculus of Japanese Firms on China’s CPTPP Bid”, Law & Geoeconomics, Published online: 28 May 2025(査読あり)https://doi.org/10.1163/29505720-bja00001 Abstract: Firms today must assess the impact of new trade policies within a complex global business landscape shaped by expanding global value chains and geopolitical risks. How do they respond to new trade policies under discussion? We argue that firms take informational cues from other firms in the same industry and along their supply chains. We test this through a survey experiment with Japanese firm managers, examining their reactions to China’s potential entry into the Comprehensive and Progressive Agreement for the Trans-Pacific Partnership. Our findings show that positive views from large co-industry firms and supply chain partners lead to negative assessments by managers, not only among small firms but also among large exporting firms, driven by fears of rising domestic competition. Concerns also extend to the broader national economic impact. The study contributes to our understanding of the micro-foundations of trade politics, highlighting firm heterogeneity in their response to multifaceted trade policies. 川窪悦章 (論文) 「統計から見る経済安全保障」統計 第76巻第5号(2025年5月号)https://jstat.stores.jp/items/6811a19e544a4b2b58b57692 概要:経済安全保障の問題に関して、マクロレベルのさまざまな統計を紹介するとともに、サプライチェーンの脆弱性に関する最新のミクロ実証研究をまとめている。 大久保邦彦 (判例批評) 「旧優生保護法の優生規定の違憲性と国賠請求の期間制限」民商法雑誌、第161巻第2号(2025年6月号)https://www.yuhikaku.co.jp/static/minshoho.html 概要:「障害者に不妊手術を強制する旧優生保護法の各規定の内容は、日本国憲法13条及び14条1項により保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白であったというべきであるから、同規定に係る国会議員の立法行為は、国家賠償法1条1項の適用上、違法であり、これに基づく損害賠償請求権の行使に対し国が除斥期間の主張をすることは、信義則に反し、権利の濫用として許されない。」(TKCの要旨)とした最高裁判決(最大判令和6・7・3民集78巻3号382頁)の判例批評 Katsuya Takii (Discussion Paper) Tomoharu Mori and Katsuya Takii “The Effect of Coarse Score Labels on College Application Decisions” OSIPP Discussion Paper, DP-2025-E-002, June 6, 2025https://hdl.handle.net/11094/101440 Abstract: This study examines whether people are inattentive to once-in-a-lifetime events. Using data from Japanese entrance examinations, we show that, even in situations where there appears to be little difference in the actual admissions probability, students change their school of choice simply because the coarse label describing admissions probability has changed. To understand the mechanism behind this result, we model students’ application decisions by incorporating inattention. The results suggest that, in once-in-a-lifetime situations, students do observe information more carefully than usual, but they still cannot be completely attentive. We also find that people with better information processing skills and who are accustomed to processing more information daily pay greater attention to information.
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【新刊:中嶋啓雄教授】A・G・ホプキンズ著 ; 菅英輝、森丈夫、中嶋啓雄、上英明訳『アメリカ帝国 : グローバル・ヒストリー』上・下

OSIPPライブラリーでは、教員の研究業績を収集した「スタッフコーナー」を設置しています。このたび、スタッフコーナーへ受入した中嶋先生の新刊をご紹介いたします。 中嶋啓雄先生 A・G・ホプキンズ著 ; 菅英輝、森丈夫、中嶋啓雄、上英明訳『アメリカ帝国 : グローバル・ヒストリー』上・下(ミネルヴァ書房、2025年) ⇒ 大阪大学所蔵検索 書誌詳細画面はこちら(上)https://opac.library.osaka-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2004599628(下)https://opac.library.osaka-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2004599629 (OSIPPライブラリー)
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【書評】赤井 伸郎・宮錦 三樹 著 『教育の財政構造:経済学からみた費用と財源』

慶應義塾大学出版会、2025年https://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766430066/   水田健輔(大学改革支援・学位授与機構教授)  本書は、初等教育から高等教育まで多段階の教育財政について、責任主体(国・地方自治体)別に費用と財源の整理を行っている点で類書にない特徴を有している。対象は国・公立の教育機関に対する直接の財源負担と費用支出であり、制度の詳細に目を配り、執筆時点での最新の情報を網羅するように心がけられている。その目的については、日本の財政が厳しい制約下にある中、効率的効果的な教育政策が実施されるために必要なエビデンスを得る上で、不可欠となる制度情報やヒントとなるデータ分析結果を示すことにある。よって、教育政策の評価を公財政負担と機関支出を含めた視点で行う場合に、まず読まれるべき書籍として推薦したい。  全体は、序章を含めて8章で構成されており、各章の内容には次のような特徴が確認できる。まず序章では、本書で「教育財政学」と呼んでいるものについて、隣接領域との異同を整理し、本書の対象とアプローチ(公共経済学アプローチ)を明らかにしている。そして第1章では、教育振興基本計画の推移を顧みるとともに、客観的なエビデンスにもとづくPDCAサイクルの構築が求められていることを指摘している。その上でPISAのスコアと教育支出の関係を検証し、支出の規模自体がそのまま教育成果につながる訳ではないことを例として示している。つまり、財源の量だけでなく、配分方法や支出構造により着目すべきである点を強調している。次に第2章では、国・地方自治体が責任主体となっている公的教育機関への機関補助について、その制度的な成り立ちと資金の流れが全体像として把握できるようにまとめられている。  続く第3章から第5章は、責任主体別・教育段階別の財源構造について、執筆時点での最新情報がまとめられており、一読すると日本の初等教育から高等教育に至るまでの公財政による機関補助がどのようになされているかを把握できる。まず第3章は、国立大学を対象とした財源構造、特に運営費交付金制度を解説しており、評価制度と業績連動型配分の仕組みを細かく紹介している点に特徴がある。効率的効果的な財源措置を希求する上で、メリハリのある財源配分がどうあるべきかについて検討する基礎情報となる。次に第4章では、公立小中学校を対象としており、国から地方自治体への財源措置と両者の責任分担について、制度の歴史的な変遷を含めて論じられている。特に義務教育費国庫負担金の地方交付税による一般財源化により、給与削減による効率化のインセンティブが働く点についてページを割いている。そして、第5章は公立大学を対象としており、国から地方自治体への地方交付税措置について、制度上の説明がなされている。基準財政需要額への公立大学経費の算入については、先行研究でも学問系統別の単位費用の差と推移がよく取り上げられるが、単位費用×測定単位×補正係数の細かい算出方法まで平易に説明している点に特徴がある。なお、ここでも国と地方自治体の責任分担の在り方について問題提起がなされている。  最後に第6章と第7章は、学術論文で仮説検証した内容を一般読者にも理解可能なように加筆し、収録している。まず、第6章については、公立小中学校の消費的支出とその費目内訳について、「規模の経済性」が働いているかどうかを検証している。結論として、支出総額については規模の経済性が働いているが、個別の費目によっては働かないものもあることが示された。少子化の進展とともに、小中学校の統廃合が課題となる中、こうした実証研究の結果を政策立案に活かしていく必要性を示唆している。次に第7章では、公立大学の「規模の経済性」と「範囲の経済性」について検証している。結果として、規模の経済性は、文系教育、理系教育、研究のいずれでも効いており、機関統合等の政策が費用効率の側面から支持されることを明らかにしている。そして、注目すべきは範囲の経済性の検証結果であり、文系教育と理系教育はそれぞれ単体で実施した方が費用効率的であるが、どちらの教育も研究と一体生産した方が範囲の経済性が働くという結論が示されている。この点については、豊富な先行研究も参照しつつ慎重な解釈と取り扱いが必要と思われるが、大学の機能設計を考える上で興味深い知見といえる。  ちなみに、本書には5つの「コラム」が設けられているが、閑話休題的な軽い読み物ではなく、本筋に関わる重要な情報が含まれている。  なお、あとがきで触れているとおり、公平性の議論や私立機関への公財政負担、あるいは就学支援等の個人補助については、今後の研究の進展と本書の内容への発展的反映が待たれるところである。また、丁寧な制度解説が本書の特徴の一つだが、今後の制度変更や政策動向については、読者が情報を補完しながら読むことが求められる。 ※この記事は、『IDE 現代の高等教育』(NO.672 2025年7月号(7月1日発行))からの転載です。
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2025年度「OSIPPでデータ分析を学び卒業した先輩とのオンライン交流会」開催

OSIPPでデータ分析を学び卒業した先輩とのオンライン交流会 2025年6月21日、「OSIPPでデータ分析を学び卒業した先輩とのオンライン交流会」(CEPO* 主催)が開かれた。Zoomにて開催され、12名の学部生、大学院生が参加した。プログラムでは、OSIPP博士前期課程に在学中の学生である筆者と、OSIPP博士前期課程、博士後期課程を修了後に就職している先輩が登壇した。 株式会社dipでデータサイエンティストとして働いている久保知生さん(2024年3月 博士前期課程修了)は、データ分析を仕事にしたいと考えている人たちに向けて仕事の内容や魅力について話した。OSIPPで学んでいるうちに専門性を活かした職に就きたいと考え、当職を志望するようになった久保さんは、ぜひデータサイエンティストという職業を考えてみてほしい、というメッセージを伝えた。 シンクタンクである日本経済研究センターで働いている阿部眞子さん(2025年3月 博士後期課程修了)は、働きながら博士後期課程を修了しており、その過程や難しさ、学位を取得するための努力について語った。阿部さんの現在の仕事の内容についても説明があり、シンクタンクでの業務にOSIPPでの学びがどう生かされているのかについて話した。 プログラムの後半ではブレイクアウトルームに分かれて質疑応答が行われ、参加者が質問する機会が設けられた。OSIPPの研究環境や専門性を活かした就職の仕方などについての質問があった。 学部生にとって大学院という場所は心理的に遠い存在で、関心があったとしてもその様子について知ることができる機会は少ない。また、大学院生にとってもOSIPP修了後の進路について詳しく共有される機会は珍しい。そういった意味でも、本プログラムはOSIPPでの学びとその生かし方について関心のある人に直接情報が提供される貴重な機会であったように思う。これを機に、参加者は大学院進学、OSIPP進学、そしてその先の将来の選択肢の多さについて認識できたのではないだろうか。 (OSIPP博士前期課程 奥野愛理) * CEPO(Center for Evidence-Based Policy Making):OSIPP経済系教員で構成されている研究センターで、質の高いエビデンスに基づく政策立案に役立つ、厳密な実証/理論研究の推進に努めている。 登壇者の久保さんのレポート記事: https://www.wantedly.com/companies/dip/post_articles/985090?fbclid=IwY2xjawLO4B9leHRuA2FlbQIxMQABHhTEYI-WylhQQnuZzWp04UWdL45hSNV9VAzwuQGVwgwKOd7p30aRrT-cjHdy_aem_6pkzPP-uG1AdYpXjMOg4kg
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OSIPP海外インターンシップ・海外研究の助成に関する説明会

OSIPP海外インターンシップ・海外研究の助成に関する説明会 2025年6月13日金曜日の昼休みに、OSIPP棟2階講義シアターにて海外インターンシップ・海外研究の助成に関する説明会が開催された。説明会はオンラインとのハイブリッド形式で、日英両方の言語で実施された。 説明会では、国際交流委員長であるヴァージル・ホーキンス教授より、助成の対象となるインターン・研究の開催時期や、応募方法の詳細などが述べられた。現時点ではまだ受け入れ先などが決定していなくても良いことも強調され、積極的な応募が推奨された。 最後には質疑応答の時間も設けられ、参加者からは他の助成金との違いや、提出書類などについての質問が寄せられた。 興味がある方は応募要項等を確認の上、是非ご応募いただきたい。 問い合わせ先:研究支援室 国際交流担当 (OSIPPライブラリー)
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2024年度博士論文 タイトル一覧

2024年度にOSIPP博士後期課程を修了した方々が執筆された博士論文の論文名を紹介します。 これらの論文は「2024年度博士論文 タイトル一覧表」で閲覧できます。※公開されている情報は論文によって異なります。詳細は「大阪大学の博士論文について」をご覧ください。 ※大阪大学の博士論文は「大阪大学学術情報庫OUKA」で検索できます。
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【院生紹介】白石優希さん(OSIPP博士前期課程)

【院生紹介】白石優希さん(OSIPP博士前期課程) 今回は、OSIPP博士前期課程に所属する白石優希さん(M2)にインタビューしました。白石さんは、経済学の分野で交通行動の意思決定に関する研究を進める一方で、修士1年の頃から「超域イノベーション博士課程プログラム」にも参加しています。このインタビューでは、白石さんの研究内容に加え、OSIPPからの履修者が比較的少ない超域のプログラムの実態について、詳しくお話を伺いました。 交通をめぐる意思決定に関心を持ったきっかけ――白石さんは、どのような研究に取り組んでいるのですか? もともと、交通渋滞をどうすれば解消できるかに興味があって、そこから「人々の移動手段を自家用車から公共交通にどうシフトさせるか」という問いに関心を持つようになりました。学部時代には、地元のバス会社に協力いただき、移動手段を選ぶときにどんな要素が意思決定に影響を与えているのかを調べました。大学院では、交通行動の意思決定について、経済学や統計学の視点を取り入れて分析を進めています。 超域ってどんなプログラム?――「超域イノベーション博士課程プログラム」(以下、超域)とは、どういったものなのでしょうか? 超域は、社会と知の統合によってイノベーションを起こすことができる人材を育成することを目的とした、修士・博士の5年一貫の教育プログラムです。プログラムでは、大きく分けて「授業」「経済的支援」「教員によるサポート」の3つが提供されます。授業は14単位の必修科目があり、体系的な講義というよりは、最前線で活躍する実務家の方々から直接お話を聞くスタイルが多いです。例えば環境系の授業では、企業で生態系の実地調査を行っている方から現場での体験談を聞くことができ、とても刺激になります。授業はディスカッション中心で、発表する機会も多く、受講生同士が自然と打ち解けられる雰囲気があります。本履修生には、月6〜9万円の給付型奨学金があります。さらに、授業や超域の活動にかかる費用も支援してもらえます。博士後期課程の学生にはSPRINGへの採用枠や授業料免除などがあります。この他にも、履修者1人につき2人の担当教員がつき、半年に1回、約30分の面談が行われます。事前に提出する自己評価シートをもとに、この半年間の振り返りや今後の課題について話すことができ、自分自身の学びを見つめ直す貴重な時間になっています。 応募した理由は?――どうして超域を履修しようと思ったのですか? 「意義のある研究課題を設定し、社会課題に関わる多様なセクターと積極的にコミュニケーションをとることができる人になりたい」という思いがあり、そのビジョンを実現するために超域への参加を決めました。具体的に言うと、1つ目の理由は、研究テーマに対して多角的な視点を持ちたかったからです。私の研究テーマである交通については、経済学だけでなく工学などの分野でも議論されています。学部時代からこのテーマを一貫して追ってきたことで専門性は深まりましたが、視点が偏ってしまうのではという不安もありました。他分野ではこのテーマがどう考えられているのかを知ることで、もっと客観的に見られるようになりたいと思いました。2つ目は、論理的に説明し、自分の意見を正確に伝える力を身につけたかったからです。将来的に政策立案に関わる仕事がしたいと考えており、そのためにはいろいろな立場の人と対話し、自分の考えをきちんと説明する力が必要です。超域は経済学の前提が共有されていない環境なので、わかりやすく伝える力を鍛えるにはぴったりだと思いました。 履修してみて感じたこと――実際に履修してみて、いかがですか? 「履修して本当によかった」、この一言に尽きます。私自身は経済的支援以上に、他研究科の学生との交流に魅力を感じて超域に参加しました。そして、実際にたくさんのかけがえのない友人ができました。14単位の授業を一緒に受ける仲間とは自然と仲良くなり、昼休みに一緒にご飯を食べながら研究の話をすることもよくあります。文化人類学や医療分野の話など、OSIPPでは触れられないような分野の話も聞けて、毎回新しい発見があります。さらに、活動費支援もあるので専門が異なる履修生同士で「一緒に研究してみよう!」という話が出ることもよくあります。まさに、境域を超えて新しいものが生まれていく瞬間に立ち会っていることを実感します。 選抜について知りたい!――選抜のプロセスについて教えてください。 私が出願した年は、6月末に研究計画書・志望理由書・小論文形式の課題を提出しました。書類審査の通過後、Zoomでの口頭試問がありました。試問では、自分の研究計画について20分ほど発表し、その後30分ほど質疑応答が行われました。ちょうど春夏学期のテスト期間と重なっていたので、準備はとても大変でした。特に小論文は、答えが1つに決まらない問いに対して自分の意見を論じる内容で、思考力が問われるものでした。また、指導教員からの履修許可も必要だったため、6月はほぼ出願準備に費やしていました。出願スケジュールや提出書類は年度によって変わる可能性があるので、履修を考えている人は必ず公式ホームページなどで最新情報を確認してください! OSIPPの学生へのメッセージ――超域を履修しようか迷っているOSIPPの学生に、メッセージをお願いします。 特にOSIPPの1年生は授業が多くて忙しいので、修了要件を超えて授業を取らなければならない超域のようなプログラムは、ハードルが高く感じられるかもしれません。でも、私は超域を履修して本当に良かったと心から思っています。経済学という自分の専門から一歩外に出て、他の分野の人と対話することで、自分の研究を相対的に見つめ直すきっかけになりました。自分の強みや立ち位置を再認識できたことは、何よりの成果だと思っています。 超域は本当に面白くて楽しいです。「ちょっと興味ないかも」と思っている人にこそ、一度調べてみてほしいです!想像していた通りの負担で、想像以上の学びが得られます!! ▶超域プログラムのホームページhttps://www.cbi.osaka-u.ac.jp/https://itgp.osaka-u.ac.jp/program/leading_4324/
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2025年度 留学説明会

2025年5月28日、OSIPP棟2階講義シアターにて留学説明会が開催された。説明会では、アメリカへの留学経験がある片桐梓准教授が、大阪大学の交換留学制度や、留学に向けた準備等について説明を行った。今回はOSIPP生に加え、法学部国際公共政策学科および法学科の学部生、合わせて15人が出席した。 はじめに、大阪大学の交換留学制度についての紹介があり、大学間および部局間の交流協定に基づき、協定校が世界各地に広がっていること、留学制度が豊富であることが強調された。 特に、OSIPP生を対象とした「ダブルディグリー・プログラム」についての説明がなされた。本プログラムでは、オランダのグローニンゲン大学、フィリピンのデ・ラ・サール大学、韓国の延世大学校のいずれかの大学に留学することで、大阪大学と留学先の大学の双方から修士号を取得することが可能である。 交換留学のメリットとしては、留学先で修得した単位が本学の単位と互換可能である点、また、修業年限にも算入されるため、卒業時期を伸ばすことなく留学ができる点が挙げられた。さらに、交換留学では留学先大学の授業料を支払う必要がないため、経済的な負担が軽減されることも大きなメリットとして紹介された。 申請にあたっては、希望する留学先や学部によって高いGPAや語学能力証明の提出が求められる場合があるため、事前に各自で確認するよう案内があった。特に語学の成績については、余裕を持って早めに準備を始めた方が良いとのアドバイスがあった。 続いて、学位取得を目的とした学位留学や、研究留学・調査研究についての説明が行われた。(詳細は説明会資料を参照) その後、質疑応答の時間が設けられ、学位留学の提出書類や出願期間、研究留学・調査研究に関する質問等が寄せられた。特に海外での研究調査に関しては、助成についての詳細な説明会が6月以降に別途開催される予定であることが伝えられた。 留学経験のある片桐准教授のお話は、参加者の理解を深め、今後の準備の参考となっただろう。筆者自身も、学部から学位留学を経て本学に入学した経験があり、今回の説明の中でも特に「語学の成績は早めに準備すべき」というアドバイスには強く共感した。留学の準備にあたっては、経済的な負担や進路に対する不安など、様々な懸念を抱える方もいるだろう。大阪大学およびOSIPPでは、各種奨学金・助成金制度が整備されている。その他、留学に関する相談は、OSIPP研究支援室・国際交流担当までお気軽にお問い合わせいただきたい。 (OSIPP博士前期課程 WANG Hsin Ni)
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5月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の5月の研究業績をご紹介します。 ・前川和歌子 先生・二杉健斗 先生 Wakako Maekawa(論文) “Effects of the Deployment and Departure of UN Peacekeeping Operations on Foreign Direct Investment”, Journal of International Development, First published: 29 April 2025(査読あり)DOI:https://doi.org/10.1002/jid.4006 Abstract: Do United Nations peacekeeping operations (UNPKOs) foster foreign direct investment (FDI) in host countries over time? I argue that the deployment of UNPKOs increases FDI by signaling credibility in peace and the rule of law. However, once peacekeepers depart, uncertainty regarding political stability, due to premature withdrawal and unemployment shocks deters investment in the short term. Over time, however, FDI increases as investors recognize the country’s growing resilience, shaped by the legacy of UNPKOs. Empirical analyses test these hypotheses, demonstrating that while the departure of peacekeepers initially slows investment, it ultimately accelerates FDI inflows in the long run. Wakako Maekawa (論文) Barış Arı, Theodora-Ismene Gizelis, and Wakako Maekawa “How United Nations peace operations can help overcome perils to post-conflict elections”, Journal of Peace Research, First published online May 9, 2025(査読あり)https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/00223433251322287 Abstract: Agreeing to elections is generally seen as a key way to settle armed conflict and prevent recurrent violence. However, the transition from violent conflict to nonviolent electoral competition can be fraught with many challenges. Stable electoral competition requires trust in institutions, but trust often takes a long time to develop and is often lacking in post-conflict elections. We argue that UN peacebuilding operations can play an indispensable role in the development of stable electoral institutions through three interrelated ways: reducing political and electoral violence, supporting democratic attitudes and norms of peaceful coexistence, and reinforcing institutional capacity and the rule of law. Using a new measure of the expected quality of elections in post-conflict countries between 1946 and 2012, we show that UN peace missions are associated with better elections and a greater likelihood of successful transitions to electoral competition compared to post-conflict countries without UN involvement. We also find larger differences when the UN is involved in establishing electoral institutions, especially when there is no or limited prior electoral competition, indicating that the UN is effective at assisting the democratization processes in difficult contexts. 二杉健斗(論文) 「メガコンステレーション衛星の光害問題をめぐる国際法の意義と課題 」空法65号(2025年)35-56頁 概要:本稿は、メガコンステレーション衛星による光害問題への対処における国際法の意義と課題を考察する。衛星光害は、天文学的利益のみならず、地上における文化多様性や先住民族の権利とも関係し、宇宙活動国の利益を中心に形成されてきたとされる従来の国際宇宙法理解を問い直す契機となり得る。本稿は、宇宙条約の諸原則を分析した上で、国際海洋法、国際環境法および国際人権法との連関を論じ、規範の補完可能性を検討する。また併せて、天文学界の国際的な働きかけと米国における規制動向を取り上げ、持続可能な宇宙利用実現に向けた国際法形成の萌芽的動態を描写する。今後、国連宇宙平和利用委員会での議論の進展を見守る必要があるが、その際には、国際法規範の特定と適用方法の検討、異なる権利利益間の調整、先住民族や市民社会の意見反映のあり方など、広範な課題に対して多分野的な連携による対応が求められることを指摘した。 二杉健斗(解説) 「ロシア凍結資産をウクライナ支援に使うことはできるのか」国際法学会エキスパートコメントNo. 2025-2(2025年)https://jsil.jp/wp-content/uploads/2025/04/expert2025_2.pdf 概要:ロシアのウクライナ侵攻の長期化を受けて、各国で凍結されたロシア資産をウクライナ支援に充てる構想が進んでいる。本エキスパートコメントは、この方策を実施する上で障害となり得る国際法上の問題を分析し解説している。一方で、資産没収には国家免除や外国人財産の保護など国際法上の制約があり、対抗措置や集団的自衛権による違法性阻却の可否も争いがある。他方、凍結資産の運用益の活用は合法に行い得る余地があり、EUやG7を中心に制度構築が進められている。もっとも、ロシア側はこれに反発しており、報復や訴訟に発展する可能性もあり、今後の動きを注視する必要がある。
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第15代研究科長就任 大槻恒裕教授インタビュー

2025年4月よりOSIPP第15代研究科長に就任した大槻恒裕先生にインタビューを行いました。 先生が考えられているOSIPPの特徴や強みを教えてください。 OSIPPの特徴は、活気あふれる学びの環境です。まず、若手教員を積極的に採用しており、研究科に新しい風を吹き込んでいます。次に、留学生の入学も支援してきており、日本人学生と留学生が交流することで双方の国際性を伸ばすことができる場になっています。また、OSIPPの強みは、理論と実践を結びつけ、実際の政策に役立つ人材を育てていることです。最新の研究を通じて現実の問題に取り組み、みんなで必要な解決策を見つけることで、未来を切り拓く力を育んでいます。 2025(R7)年度以降に入学した博士後期課程の学生は、経済学または法学の学位も取得できるようになると伺いました。この制度変更について詳しく教えてください。  OSIPPでは、本年度から博士後期課程の学生が「博士(法学)」や「博士(経済学)」の学位を取得できるようになります。この制度変更は、公共政策を学ぶ学生にとって大きなメリットがあります。まず、専門性が明確になることが重要です。新しい学位が加わることで、法学や経済学を専門とする学生は、就職の際や将来のキャリアにおいて専門を明確に示すことができるようになります。OSIPPの教員には法学や経済学の学位を授与することができる教員がそろっており、この制度変更が実現しました。次に、学生にとっての選択肢が広がる点も魅力です。今までの国際公共政策の学位に加えて、自分の関心やキャリアに合った専門分野を選べるため、学びの幅が広がります。異なるバックグラウンドを持つ学生が自分の専門を深めるチャンスが増え、多様な視点で政策に取り組むことができるようになります。多数の複雑な問題が存在する現在、横断的・学際的な学びを持つ人が求められる一方で、その問題を分析して答えを導き出すには高い専門性が必要です。OSIPPはその両方を兼ね備えた人材を育てられる環境を提供しています。専門性を客観的に示せる学位を取得できるようになることで、OSIPPで育った学生が客観的な指標とともにより社会で活躍できるようになることを期待します。 研究科長としてどのようなことに取り組まれる予定なのかを教えてください。 国際的な視野を育むため、海外インターンシップや海外でのフィールドワークへの支援を強化し、後期課程の学生にはさらに国内学での学会発表や国際会議への参加を支援します。また、人文社会科学系オナー大学院プログラムにおいて、2026年に社会科学系のリーダー育成プログラムが新設されますので、プログラムを通じて政策の分野で社会のリーダーとなり得る人材を育てていきたいと思います。さらに、国連機関との連携を強化し、学生がグローバルな課題に取り組む機会を増やすことにより、学生が国際的な舞台で活躍できる人材として成長することを目指します。昨年、OSIPP創設30周年を記念して未来基金を設立しました。現役教員、退職した教員および卒業生の方々を中心に支援をいただく機会を増やし、現役学生への支援を拡充できるように努めていきます。 OSIPPに関心を持っている方や在校生に対してメッセージをお願いします。 OSIPPでの学びは、皆さんの未来を切り拓く貴重な経験です。若手教員の熱意と、多様な文化を持つ留学生との交流が、活気あふれる学びの場を作り出しています。講義の約半数が英語で行われる中で、世界的な視点を養い、実践的な政策立案に挑む力を身につけてください。 OSIPPは法学・政治学・経済学の専任教員を有し、それぞれの専門性を強めることが可能である国内では数少ない学びの場です。その一方で、専門が異なる人との交流の場でもあることから学際性を養うことができます。共に新しい知を紡ぎ、より良い未来を創り上げていきましょう。皆さんの成長を心から楽しみにしています。 (OSIPP博士前期課程 奥野愛理)
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2025年度OSIPP説明会(5月開催)

2025年度OSIPP説明会(5月開催) 2025年5月16日、OSIPP棟6階会議室にて、オープンキャンパスの一環としてOSIPP説明会が行われた。当日は対面とオンラインを合わせて約60人が参加し、OSIPPのカリキュラム等についての説明や、質疑応答が行われた。説明会は、教務委員長の河村倫哉教授による、博士前期課程の入試情報、OSIPPの指導体制、学生支援制度等に関する説明から始まった。特に指導体制については、OSIPPに所属する教員に加え、経済学研究科および法学研究科の教員も指導教員として選択可能であることが紹介された。また、教員からのメッセージ動画がOSIPPのホームページに掲載されている旨の案内があり、各教員からのメッセージを自由に視聴できるようになっていることも紹介された。 続いて、法学系、政治学系、経済学系の教員からそれぞれの分野に関連する説明が行われた。 まず、法学分野からは和仁健太郎教授が登壇し、OSIPPでは国際法教員が3名在籍しているほか、日本では数少ないEU法を専門とする教員もいることが紹介された。国際法に関するカリキュラムは、基礎から研究に必要な能力を養うことのできる構成となっており、国際法分野の教育が充実している点が強調された。 次に、政治学分野について南和志准教授より説明があった。OSIPPでは政治科学(Political Science)、国際関係論、紛争研究、メディア研究など様々な視点から政治学を学ぶことができ、国際機関やNGOでの実務経験を持つ教員が在籍しているほか、外部講師や実務家による授業・講演も数多く実施されていることが紹介された。 経済学分野については松林哲也教授が登壇し、OSIPPの経済系カリキュラムは、学部で経済学を専攻していなかった学生でも基礎からしっかり学べるよう設計されていること、また、既に基礎を身につけた学生向けには演習科目も用意されていることが説明された。さらに、経済学研究科の授業も履修可能であるなど、柔軟な学びの体制が整っている点が強調された。 その後は、在学生3名による体験談があり、それぞれが感じているOSIPPの魅力や学生生活について語られた。OSIPPには多くの留学生や他大学出身の学生が在籍しているため、異なる価値観や視点に触れる機会が豊富であることが述べられ、多様な背景を持つ学生が共に学ぶ雰囲気が伝わってきた。 続けて行われた博士後期課程についての説明会では、河村教授より、研究者を目指す人に加え、国際機関やNGOでの活躍を志す人も歓迎している旨が説明された。また、社会人学生に向けた履修制度も整備されており、事前に教員と相談すれば、オンラインでの指導や授業の受講が可能で、仕事と両立しながら研究に取り組める環境が整えられていることも説明された。 その後、博士学位について、学位に付記する専攻分野が、従来の「国際公共政策」に加え「法学」や「経済学」からも選択可能になったことや、2026年度入学の博士後期課程の出願書類の変更点などが伝えられた。(詳細は2026年度募集要項を参照) 最後に、OSIPP修了生でタイ出身のPratippornkul Ruengrin氏が、スイスからオンラインで参加し、博士号取得およびOSIPPでの学生生活について語った。Ruengrin氏は、国際機関での就職を目指して博士前期課程に進学し、修了後も研究を続けたいという思いから博士後期課程に進んだと述べた。OSIPPでは留学生が多く、国際性豊かな環境で学ぶことができたことや、社会人学生も複数在籍していたことに触れ、異なる背景を持つ学生と交流できた経験が印象深かったと語った。また、大学院での生活について、「明確な目標を持ち、周囲と相談しながら進めていくことが大切」とし、積極的に学会発表を行うことの重要性にも言及した。 説明会ではOSIPPのカリキュラムに加え、学生生活についてもわかりやすく説明されており、参加者にとっては入学後の自分の姿を具体的に思い描く良い機会となったのではないかと思う。 (OSIPP博士前期課程 WANG Hsin Ni)
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教員紹介:久保田雅則 助教

2025年4月1日付で国際公共政策研究科に助教として着任した久保田雅則先生にインタビューを行いました。 ・これまでのご経歴を教えていただけますか?私は、修士、博士ともにOSIPPで取得し、2019年3月の博士後期課程修了後も特任教員としてOSIPPで研究教育活動に従事してまいりました。また、その間、関西学院大学、立命館大学、大阪経済法科大学で非常勤講師に従事してまいりました。 ・研究者を目指したきっかけのようなものはありますか? 核兵器の問題に取り組みたいという思いから、学問の力でこの課題を解決したいと考え、研究者を志すようになりました。長崎出身であることに加え、核廃絶市民集会に参加したことを通じて、核の問題が長崎だけにとどまらず、世界全体に関わる深刻な課題であることを認識し、より深い関心を抱くようになりました。 ・これまでの研究について紹介していただけますか? 博士前期課程では非核兵器地帯について研究していました。非核兵器地帯とは、特定の地域において、域内国による核兵器の生産、取得、保有及び管理を禁止することによって作り出される「核兵器のない地帯」 で、軍縮の取り組みの一つです。 博士後期課程では核不拡散条約について研究しました。世界全体の問題として国際規範と国際制度の観点から研究を進め、「国際規範としての核不拡散という規範がどのように条約に変化するのか」を理論構築し、実証していました。核兵器、大量破壊兵器問題に関する研究は今も継続しています。それに加えて、指導教員だった先生と研究室の先輩とともに、政治変動の共同研究を進めています。 ・現在の研究に取り組むことになったきっかけを教えてください 共同研究でこれまで自分にはなかった研究手法を学んだことがきっかけです。それまで私は国際政治という枠組みで研究をしていましたが、博士後期課程修了後に、比較政治学の手法を学びました。私が扱うテーマには事例数が少なく、その定性的な研究に限界を感じていました。しかし、国際、国家レベルの分析だけでなく、国家の指導者の個人レベルでの分析方法があることを、共同研究を通じて知ることで、比較政治と国際政治を絡めた量的研究に興味を惹かれ、現在の研究に取り組むようになりました。 ・この研究の魅力や面白いところはどんなところですか(最新の動向など) 核兵器や大量破壊兵器の拡散問題について個人レベル(政治家や指導者)と国際レベル(条約などの各種取り決め)をつなげるところが面白いと思います。ある問いに対して当時の指導者のバックグラウンドや思想が結びついているのかどうか、というところにアプローチすることができます。 例えば、ある国で過去の政治指導者がその座を退いた後の末路が悲惨なものだった場合、そのあとの指導者は自身の末路が同様のものにならないように政治運営を行うかもしれません。このように指導者の個人的な理由によって、戦争をはじめとした国や世界に対して大きな影響を及ぼす出来事が決定されているという指摘があります。歴史研究の観点からは、政治指導者の個人的な経歴が国家間関係に影響を与えることを示す研究はよく行われていますが、一般化して計量的に研究されているものは、軍縮・不拡散研究ではあまりありません。このように比較政治と国際政治を架橋するような研究は新しく、面白いと考えています。 ・推薦する図書があれば教えて下さい ①日本軍縮学会編『軍縮問題入門[第5版]』東信堂、2025年。 私の講義の教科書としている本で、軍縮や核問題に関心を持ち始めた方への入門書になります。 ②Sagan, Scott Douglas, and Kenneth Neal Waltz. The spread of nuclear weapons: an enduring debate: with new chapters on Iran, Iraq, and North Korea, and on the prospects for global nuclear disarmament. WW Norton, 2013 .  核問題について2人の研究者が意見を議論している本です。核やその保有について、反対する視点からだけではなく、様々な観点から考えられます。物事について考えるとき、自分が持つ意見と同じような意見だけではなく、対立する意見にも耳を傾けることが重要です。その議論を経ることで、自分の意見の正当性を改めて考えることができます。 (OSIPP博士前期課程 奥野愛理) ****助教 久保田 雅則 研究テーマ:軍縮・不拡散専門分野:国際関係論、比較政治学位:博士(国際公共政策)〈代表的な業績〉「核不拡散規範の制度化―制度形成と変容の要因としての逸脱行為に着目して」『国際政治』第205号、2022年。『外交・安全保障政策から読む欧州統合』大阪大学出版会、2023年(共著)。Life after exile: Introducing a new dataset on post-exile fate. Conflict Management and Peace Science, 2024. (共著)
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ナダ・アル=ナシフ氏(国連人権副高等弁務官) 基調講演

2025年5月9日に、OSIPP ESGインテグレーション研究教育センターの主催、国連政策研究委員会の共催により、国連人権副高等弁務官のナダ・アル=ナシフ氏(以下アル=ナシフ氏)による「激動する世界における人権の促進」と題した講演が行われた。本講演は豊中キャンパスの法経講義棟の法2番教室にて、英語で実施された。聴講者は主に学部生、大学院生、教員で、会場が満員近くになるほどの人が集まった。 まず大槻恒裕研究科長による開会挨拶および蓮生郁代教授によるアル=ナシフ氏の紹介の後、講演に移った。 講演でアル=ナシフ氏は、今日世界で発生している対立について述べつつ、国連がどのように世界を見ているかについて語った。人道支援者が犠牲になっているガザやウクライナの問題だけでなく、私たちの耳にはなかなか届かないスーダンの問題や、コンゴ、ミャンマーの現状についても述べた。また、現在対立を乗り越えて次の段階に進んでいるバングラデシュ、スリランカについては期待を寄せている旨を示した。権力集中の恐れや検閲の問題についても触れ、アメリカの大学での政府の力の増大については懸念を示した。 Humanitarian economyという言葉もあげ、利益を求めない人道支援についての話もあった。2025年の現在の世界情勢は厳しいものであり、支援をしたくてもできないような状況がある一方で、一緒に協力できる国とともに支援に努めたい、とのことだった。 最後に、答えのない様々な問題へのアプローチ方法について、それぞれの知恵を使いながらともに考えていきたい、という言葉で講演を終えた。 質疑応答の時間では、事前に寄せられていた100件以上の質問内容から抜粋された質問が読まれた。質問の内容は国際的な企業が守るべきルールの所在についてや、人権意識について、また国際連合ができることの限界や中立性の維持の方法についてと様々なものがあった。アル=ナシフ氏はそれぞれの質問に、ときには質問の意図や意味を尋ねながら丁寧に答えていた。ある質問者にはアル=ナシフ氏があなたはどう思うかと聞き返す場面もあり、「ともに考える」という姿勢が感じられた。 本講演は、長年、国際連合で幅広い業務に携わっているアル=ナシフ氏の経験や知識に基づく世界の見方について知ることができる場だった。 質疑応答に長い時間が与えられており、アル=ナシフ氏と直接話す機会が設けられていたため、聴講者にとってインタラクティブな講演だったように思う。また、本講演は常に不安定な世界情勢の中で、平和を求める国際連合の役割は大きいことを改めて認識するものだった。 講演の中では日本での人権の状況について語られる場面もあった。これから卒業後に就職や進学をしていく学生たちに人権の意識について新たな観点を与える機会になったのではないだろうか。 (OSIPP博士前期課程 奥野愛理)
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【院生紹介】WANG Hsin Niさん(OSIPP博士前期課程)

私は、2025年3月に大阪大学法学部国際公共政策学科を卒業し、4月からOSIPP博士前期課程に在籍しています。今回は、大学院(OSIPP)に進学した理由、院試の準備、そして入学後1か月の大学院生活について述べたいと思います。               ①大学院へ進学した理由私が大学院へ進学しようと思ったきっかけは、高校時代に参加した模擬国連でした。当時は、人権問題から軍備拡張競争まで、さまざまな国際問題について調べ、国家代表として議論を重ねました。会議中は、国際社会全体の利益に貢献する解決案の作成を目指しますが、各国の利益調整が難しく、会議が難航することもよくありました。この経験を通じて、国家間の交渉や利益調整の仕組みに関心を持つようになりました。また、将来的には国際機関で働きたいという思いも芽生え、大学院への進学を視野に入れるようになりました。 大学入学当初は国際関係を中心に学ぶつもりでしたが、法学部で開講された「国際公共政策」という授業で初めて国際法に触れ、その面白さに惹かれました。そして、模擬国連でも取り上げられていた人権保護や平和維持といった国際的課題を支える「法」の仕組みに関心を持つようになりました。その後、授業と並行し、卒業までの3年間に国際法のゼミにも所属していました。ゼミでは英語の論文や国際裁判所の判決を読み、それに関連する問題について先生やゼミ生と議論しました。答えが決まっていない問題がほとんどですが、自分なりの答えに辿り着くまでの過程と、議論してさらに新しい問題を見つけることがとても楽しく、もっと考えたいと思い、大学院への進学を決意しました。さらに、私がOSIPPを志望した理由は、まず指導を希望する教員が在籍していたからです。加えて、入試説明会に参加した際に、学生同士の交流が活発で、緊密なコミュニティーが築かれていることにも魅力を感じました。 ②院試の準備 院試の準備にあたり、私は一度つまずいた経験があります。それは、取り組もうとしていた研究テーマに関する参考資料が少なく、一度書き上げた研究計画書を全て書き直すことになったことです。 初めは、ゼミの議論で出てきた自分の興味があるテーマについて調査を始めました。しかし、文献が少なかったため研究の方向性が明確にならず、計画書を書き進めるうちに、研究テーマが深掘りできないことに気づきました。その後、先輩や同期と相談する中で、テーマを再考しました。結果として、研究計画書をほぼ一から書き直すことになりましたが、この再調整によって、より具体的な研究テーマに絞ることができました。 大学院生は「一人で研究を進めないといけない」とよく見聞きしますが、私はそうでもないと思います。確かに、自分が勉強しないと何も書けないですが、最初はわからないことがたくさんあり、「自分一人でやらなければ」と思い込むとかえって行き詰まってしまうかもしれません。私が無事に出願できたのは、先輩や同期のアドバイスやサポートのおかげです。 ③大学院の生活 本稿を執筆している時点で、大学院に入学してまだ1か月も経っていませんが、ここで修士1年の前期に履修している科目のいくつかを紹介したいと思います。 OSIPPでは履修登録にさいして、指導教員の面談を受け、履修計画についての承認を得る必要があります。私は指導教員である二杉健斗先生との面談を通じ、履修に関する多くのアドバイスをいただき、自分の研究に関連する科目を意識して履修することができました。 私の修士論文は、文献ベースなので、外国語と学術論文の読み方を身につけることが重要です。和仁健太郎先生の「国際法文献購読」の授業では、英語で書かれた国際法の論文を精読し、その論文の構造を分析したり、内容を評価したりします。論文の一部を和訳する課題もあり、日本語が第一言語でない私にとっては、日本語表現のニュアンスを学ぶよい機会にもなっています。 そのほか、国際法の理解を深めるため、私は法学研究科で開講された「民事訴訟法」および「法思想史」の授業も受講しています。いずれも国際法と直接の関連はありませんが、国際司法裁判所の手続きと民事訴訟の類似性や、法思想史が基礎的素養となる点から、研究に役立てたいと考えています。 最後に、大学院への進学を考えている方に、私なりのメッセージをお伝えしたいと思います。大学院に進むべきか、院試にどう備えるべきかなど、悩んだり不安を感じたりすることもあると思います。私も学部4年生の時の夏に同じ迷いを抱えました。そのようなときは、一人で考え込まず、周りの人に相談してみましょう。また、入試説明会への参加もおすすめです。私はOSIPP以外の入試説明会にも参加し、比較することで自分に合う進学先を見つける手掛かりを得たので、進路に迷ったら複数の入試説明会に参加してみてください。
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4月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の4月の研究業績をご紹介します。 ・前川和歌子 先生 ・髙田陽奈子 先生・赤井伸郎 先生  ・中嶋啓雄 先生・山下拓朗 先生 Wakako Maekawa(論文) “Introducing new data on UN Special Political Mission Mandated Tasks (UNSPMMT)”, Journal of Peace Research, First published online March 28, 2025(査読あり)https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/00223433251317816 Abstract: Whereas United Nations Special Political Missions are established following UN Peacekeeping Operations or as substitute measures to enhance peace and security, studies have paid little attention to what United Nations Special Political Missions do and whether they are effective. The UN Special Political Mission Mandated Tasks Dataset provides new data on United Nations Special Political Mission-mandated tasks between 1993 and 2021. The dataset covers traditional and relatively new mandated tasks, such as those concerned with the enhancement of the rule of law and addressing climate change mitigation and counter-terrorism, respectively. To illustrate the usefulness of the data, this study investigates the effectiveness of the election-mandated task of United Nations Special Political Missions as an exit strategy of UN Peacekeeping Operations on democratisation. The results show that election-mandated tasks improve the quality of democracy. It helps unpack the mixed results of the UN’s effectiveness in enhancing democratisation in post-conflict countries, implying that its intervention matters through both peacekeeping and political mission mandates. This dataset helps researchers investigate the interactive effects of mandates and provides insights into the sequence of peacebuilding strategies. Wakako Maekawa (論文) Kana Inata &Wakako Maekawa “Do aid punishments work forever? Recipients’ incentives for partial democratization and timing of aid punishments after coups”, Democratization, Published online: 24 Apr 2025(査読有)DOI: https://doi.org/10.1080/13510347.2025.2493917 Abstract: Does the impact of aid punishments on recipient states’ democratization depend on their timing after a coup? In this study, we argue that to prompt donors to lift aid punishments, recipient governments improve multipartyism in elections to signal democratization without endangering their survival. However, prolonged punishment can weaken their motivation for such democratic reforms as these efforts need to be backed by the prospect of aid rewards. We test these arguments using the Organisation for Economic Co-operation and Development data from 1967 to 2016. We find that the effect of aid punishments on multipartyism diminishes as the time since the last coup increases. The results suggest that donor states can effectively promote partial democratization in coup-affected recipient states by strategically transitioning from aid punishments to rewards at an opportune moment after the coup. 髙田陽奈子(判例評釈) 「刑訴法を自由権規約に適合的に解釈し、通訳費用を被告人に負担させてはならないとした判決 [大阪高等裁判所令和6年9月3日判決] 」新・判例解説Watch36号(2025年)285-288頁(査読なし:招待)https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-090602557_tkc.pdf 概要:本判決は、原審が有罪となった中国人の被告人に対して通訳費用を負担させたことについて職権判断で検討し、刑訴法181条1号を、自由権規約14条3項(f)に適合的に解釈して、被告人に通訳費用を負担させてはならないと判示したものである。本評釈においては、刑事訴訟における通訳費用負担をめぐるこれまでの国内裁判例の展開について整理し、自由権規約14条3号(f)について国際法上の解釈手法を用いて解釈するとどうなるかについて詳説したうえで、自由権規約14条3項(f)の実施における本判決の意義について分析を加えた。 Nobuo Akai(著書) “Evidence-based policy making in Japan’s public expenditure: compatibility of fiscal health and investing for the future” Chapter 6, Reforming Capitalism, Going Digital and Green-Japan’s Approach, Edited By D. Hugh Whittaker, Yoshifumi Nakata Published March 27, 2025 by Routledge (2025年3月刊行)https://www.routledge.com/Reforming-Capitalism-Going-Digital-and-Green-Japans-Approach/WhittakerNakata/p/book/9781032986159?srsltid=AfmBOoqHShQmdrLu1zCYav3c86BQZbM9mkajMI3rqFG5rqIxFy4oGma7 概要:本稿では、日本におけるエビデンスに基づく政策立案(EBPM)の導入、特に岸田政権の「新しい資本主義のためのグランドデザイン」と「行動計画」の文脈に焦点を当てる。まず、日本におけるEBPMの導入と現状を概説する。EBPMは、主要業績指標(KPI)、政策評価、行政事業レビューの3つの柱から構成される。これらを評価し、米国および英国のEBPMと簡潔に比較する。次に、グランドデザインで提案されているグリーン変革のための投資と支出をEBPMの観点から評価し、潜在的な落とし穴を指摘するとともに、将来の日本における経済成長と持続可能性のための公共資源の賢明な活用を確保するために何をすべきかを考察する。これは、他国にとって参考となるであろう。 中嶋啓雄 (翻訳書) A・G・ホプキンズ(菅英輝、森丈夫、中嶋啓雄、上英明訳)『アメリカ帝国―――グローバル・ヒストリー』上・下、ミネルヴァ書房、2025年(原著:A. G. Hopkins, American Empire : A Global History, Princeton, N.J.: Princeton University Press, 2018)https://www.minervashobo.co.jp/book/b657466.htmlhttps://www.minervashobo.co.jp/book/b657467.html 概要:グローバリゼーションの進展とともに展開してきた合衆国の歴史、すなわち植民地から出発し、従属的独立国、国民国家、帝国を経て、脱帝国するまでの過程を描く。上巻は、イギリスへの従属から出発し、南北戦争を経て独立を達成、「島嶼帝国」を獲得し、やがて他国と同様に「帝国」として振舞うに至る過程。 合衆国が独立後もイギリスの「非公式帝国」の一部にとどまっていた時代、そして南北戦争を経て、近代国民国家として「真の独立」を達成する中、「島嶼帝国」を獲得し、西欧の他の帝国主義と同じように振舞う時期を扱う。下巻は近代帝国が絶頂期を経て、解体に向かう時期、存続の危機に直面しつつもいまだ帝国への野望を抱き続ける、その姿に迫る。近代帝国が絶頂期に達するとともに、解体に向かう時期を扱う。二つの世界大戦を経て、世界経済の構造変化、人権の重視、脱植民地化運動の拡大など、帝国存続の危機に直面しつつも帝国への野望を抱き続けるヘゲモニー国家として振舞うその姿に迫る。 赤井伸郎(その他の記事) 「EBPMに基づく法人税改革の検証と税制設計に向けて」 特集『 「わが国税制の現状と課題―令和時代の構造変化と税制のあり方―」の評価と検討』機関誌「税研」 240号  Vol.40 No.6 (2025年3月刊行)https://www.jtri.or.jp/books/detail.php?id=600 概要:法人税改革と税制の設計に関して、EBPMの視点から、試行分析を紹介するとともに、EBPMをより適切な法人税制の設計に活かすために必要なポイントをまとめている。 赤井伸郎(その他の記事) 「「臨時」の地方債、正常化を生かせ」『十字路』日本経済新聞(2025年4月10日付夕刊)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF257EQ0V20C25A3000000/?msockid=07cc35830fa26d800f6f21fb0e296c6d 概要:2025 年度予算では地方債の一つである臨時財政対策債(臨財債)の発行がゼロになる見込みだ。その名称からもわかるように、最初に発行された01年度には「臨時」の地方債と位置づけられたが、それ以来、およそ四半世紀にわたり発行が続いた。税収の伸びを背景に、ようやく役目を終えるかたちだ。臨財債は地方の財源不足をまかなうために発行されてきた。地方全体の借金と位置づけられているが、各地方自治体は将来の地方交付税を返済の原資と考えており、負担の認識は希薄だ。地方自治体は住民と行政サービスや街づくりの将来像を共有して、前例にとらわれずに、人口減少に合わせた歳出の効率化を進めないといけない。臨財債の発行がゼロになるという「正常化」が実現した今こそ、地方財政の持続可能性を高めることを考えないといけない。 山下拓朗(お知らせ) 2023年にTheoretical Economicsに発表した論文が同誌において、2023年のTop Viewed Articleの一つに選ばれました。 3月の研究業績でお知らせしたTop Cited Articleに引き続き、Top Viewed Articleにも認定されました。Theoretical Economicsは経済理論の分野において最も重要とされる学術雑誌のひとつであり、そこに掲載されることはその論文が非常に重要な研究業績であることを示しています。 “Optimal persuasion via bi-pooling”, Itai Arieli, Yakov Babichenko, Rann Smorodinsky, Takuro Yamashita, Theoretical Economics, Volume18, Issue1, First published: 21 January 2023https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.3982/TE4663?utm_source=sfmc&utm_medium=email&utm_campaign=807786_AT_Top_Viewed_Authors_Mar25
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2024年度 OSIPP 海外インターンシップ・海外調査奨学金 報告会

OSIPPの国際交流委員会では、学生に海外での国際公共セクターの実務経験の獲得を奨励し、現場感覚を持った国際公共政策の研究者や実務家を育成することを目的として、学生の「海外インターンシップ」を助成してきた。2024度からはインターンシップだけでなく実地調査についても助成の対象としている。2024年度は3名の学生が奨学金で海外現地調査を行った。その成果報告会は、オンラインで2025年3月24日に英語で実施された。はじめに、本プログラムの担当教員の一人であるHawkins教授から挨拶があった。その後、報告者からの発表が行われた。 ・山本葉月さん: シエラレオネ (海外調査プログラム参加) 博士前期課程1年の山本さんは、現在はOSIPPのダブルディグリープログラムに参加し、オランダのグローニンゲン大学に留学中である。今回、海外調査でシエラレオネに赴き、現地の大学での10日間のプログラムに参加したことについて、「このプログラムでは実地調査の実践とその倫理を学んだ。調査を行う際に、自分のポジショナリティ(立場性)について認識することが大事だと学んだ」と述べた。 ・JARAMILLO ABAD Gleymang Yubertさん : ペルー (実地調査) 博士後期課程1年のJARAMILLOさんは、今回の実地調査で、政府機関、私的機関と市民団体などの12機関、37人にインタビューを行った。JARAMILLOさんは自身の研究で計量的手法も用いるが、インタビュー調査のような質的手法も用いている。「両方の手法を組み合わせることで、より深くトピックについて観察できる」と話した。 ・Nguyen Phuong Thaoさん: ベトナム (実地調査) 博士後期課程1年のNguyenさんは、メディア関係者、行政や関連分野に携わる専門家も含めて10人にインタビューを行った。インタビューの回答は多様であり、各専門家の職業的背景がその違いに影響を与えていたとのことだった。今後も継続的に専門家との対話を行い、研究をさらに深めていくとのことだった。 報告者の発表後には活発な質疑応答が行われ、本プログラムが助成した調査の内容とその展望について語られた。報告会には多くのOSIPPの教員も参加しており、鋭い質問が投げかけられる場面もあった。 外国を対象とした研究を行う学生が多いOSIPPでは、海外でのインタビュー調査を研究手法の一つとして考える学生もいる。しかし、海外渡航には多額の費用がかかるため、経済的な負担が大きな課題となる。このプログラムは、そうした学生を支援し、OSIPPに所属する学生の調査手法の幅を広げる貴重な機会を提供するものである。今後、海外でのインターンや調査を検討している学生は、ぜひ今年度の申請を考えてみてほしい。(学生の学年は2024年度のもの) (OSIPP博士前期課程 奥野愛理)
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