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【院生紹介】山口真有美さん(OSIPP博士後期課程)

【院生紹介】山口真有美さん(OSIPP博士後期課程) 博士後期課程2年の山口真有美です。9年の看護師経験を経て、大学病院での臨床から看護学部教員となりました。修士課程では研究に専念し、大阪大学大学院にて看護学の修士号を取得したのち、他大学の博士課程でさらに知見を広げました。現在は実務の場で看護政策に携わる傍ら、再び阪大の門を叩き、OSIPPで研究を続けています。看護学から公共政策へ。現場の実感を政策の議論に耐えうるかたちに整え直したいと思っています。(写真:ENA Emergency Nursing Conference 2019, Austinにて。下段左から二人目が筆者。) 1. 研究テーマ私の研究テーマは救急外来看護師の役割です。一次から三次救急対応の救急外来で働いていたとき、先輩たちの知識の豊富さとそれを支える勉強量、それでいて細やかな気遣いに圧倒されました。自分も先輩たちのようになりたいと思う一方で、どこかで追いつけなさも感じており、この現場の看護師たちが思う存分力を発揮できるよう、場を整える側となる研究者を志しました。 もう一つ、「緊急で重症度の高い2割の患者を見極めるのはもちろんのこと、残り8割の軽症受診を減らす努力も不可欠である」と常々感じていました。救急外来を受診される方々にとっては、その時その場がまさに一大事であり、受診時の興奮や混乱、帰宅後の不安から再受診に至ることも少なくありません。そこで、看護師が最後にかける「何かあったらいつでも来てくださいね」という言葉だけではなく、家庭でのケアに繋がる判断材料を一つでも持ち帰ってもらえたら、状況は変わるのではないか、と考えていました。こうした臨床から立ち上がった臨床疑問をもってから、もう20年になります。当時はトリアージやドクターヘリがテレビで盛んに取り上げられ、救急外来を受診して帰宅する患者は救急医療の対象ではない、と言われた時期もありました。それでも諦めず、糖尿病看護の研究室に所属しながら研究を進めました。他領域の研究者とのディスカッションを通して問いの形を変えながら、次第に医療資源の配分や地域の救急外来のセーフティネットとしての役割を俯瞰して見たいと思うようになりました。 2. OSIPPへの入学看護の博士課程在籍中は、学会の医療政策委員となり救急外来看護の診療報酬獲得を目指し、調査を行なってきました。臨床家の現場感覚は、そのままでは政策の議論に乗りにくく、政策決定において通用するエビデンスをどう示すかという壁にぶつかっていました。看護学では「看護は実践の科学」と教えられます。これは単に客観的なデータのみを追うのではなく、患者さんやご家族の置かれた状況、さらにはその場の対人関係といった個別のナラティブの中で最適なケアを探究することを意味します。一方で政策は、集団や制度、資源配分を扱い、比較可能な指標や説明責任が求められます。現場の実感がそのままでは届きにくいのは、この根拠の形の違いが大きいのではないかと感じました。看護の実践を検証可能な問いに整える必要性を強く意識するようになり、修士時代から慣れ親しんだ緑豊かな環境や、落ち着いて研究に没頭できる空間がある阪大で政策を学ぶことにしました。OSIPPには、研究生としていくつかの講義の聴講をしてから、翌年に入学しました。現在はOSIPPでの学びと実務の現場で得る気づきから、理論と実践を往復する日々を送っています。これは周囲の理解とOSIPPの先生方のサポートのおかげであり、本当に感謝しています。OSIPPの仲間たちの研究は広く看護政策にもつながることが多く、いろいろな刺激とインスピレーションをもらっています。 3. OSIPPを目指す皆様へ現在は東京で働きながら、月に一度のペースで豊中キャンパスに通っています。遠距離での両立において、講義の受け方は非常に重要です。とくに私の場合は、経済学も政策学も初めての学びです。先生方にご相談しながらアーカイブ視聴やレクチャーノートで自学するほか、本務に支障のない夕方からの講義や短期集中講義を柔軟に組み合わせることで、本務と学業のバランスを保っています。一方で、社会人学生が学びやすいよう昼休憩の時間や土曜日にゼミ開催を調整・協力してくださる指導教員や院生仲間の配慮にはいつも本当に助けられています。キャンパスへ足を運ぶ際は、指導教員との対面での打ち合わせや、院生仲間とのディスカッションに集中します。東京と大阪という物理的な距離はありますが、むしろ「OSIPPに行けば、分野や国籍、立場、世代を超えて議論できる」という醍醐味が、今の私の大きなモチベーションになっています。その中で、Facebookやメールなどで届くOSIPPからの発信にもいつも励まされています。画面越しに流れてくる先生方や院生の論文発表のニュース、活気ある研究会、そして楽しそうなパーティーなどOSIPPの熱量が伝わってきます。専門外のためゼロからのスタートですが、周囲に助けてもらいながら少しずつ学んでいます。院生室には、共に課題を解決し合えるピア・メンターのような仲間が揃っており、これまでの院生生活の中で今が一番楽しいかもしれません。ぜひ、お待ちしています。
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【院生紹介】井筒穂奈美さん(OSIPP博士後期課程)

【院生紹介】井筒穂奈美さん(OSIPP博士後期課程) 博士後期課程1年の井筒穂奈美です。私は現在、兵庫県庁で行政職員として勤務しながら、政治学の研究に取り組んでいます。今回は特に、社会人として働きながら大学院への進学を考えている方に、これまでの経験を共有できればと思います。(写真は井筒穂奈美さん) 1.これまでの経歴大学卒業後、新卒で東京に本社のある総合電機メーカーに就職しました。発電所のタービンや発電機を製造する電力・エネルギー部門で、国内外の拠点の内部監査や国際規格の取得、M&A等を担当しました。3年間勤務した後、より公共性の高い仕事がしたかったこと、また地元である関西に戻りたかったことから兵庫県にUターンし、県庁に入庁しました。兵庫県庁では、高齢者政策、人口政策、税務、内閣官房への出向、予算・労務管理を経験し、その後、自己啓発等休業制度を利用してOSIPPの博士前期課程に入学しました。昨年3月に修了し、職場に復帰するとともに博士後期課程に進学しました。現在は休職前から在籍していた部署に戻り、地方創生の事業を担当しています。学部生の頃から大学院で勉強したい気持ちはあったのですが、早く経済的に自立したかったことに加え、当時は関心分野が定まらなかったことから、就職を選びました。一方で、いつか大学院に進学したいと思っていたため、働きながら勉強をしつつ、機会をうかがっていました。OSIPPに入学した時には、最初の就職から10年が経過していました。 2.研究テーマとOSIPPを進学先として選んだ理由女性の政治参入について、計量的な手法を用いた研究に取り組んでいます。具体的には、なぜ女性の政治家が少ないのか、どのような条件が整えば女性が選挙に立候補・当選するのかに関心があります。学生時代は性別による違いを意識することはありませんでしたが、いざ社会に出てみると、女性が働き続けるには多くのハードルがあることや女性のリーダーが少ないことを実感し、なぜ男性と女性でこのような違いが生じるのか、その背景にある要因を知りたいと思ったのがきっかけです。ジェンダー問題を研究テーマにすることは決まったものの、どのようなアプローチで研究しようかと悩んでいた時に、兵庫県庁から内閣官房へ2年間出向する機会を得ました。自治体向けの交付金事業の担当として、予算配分をめぐり国会議員や首長から寄せられる「要望」に対応する中で、政治家が持つ権限と影響力の大きさを目の当たりにし、政治が社会のあり方を左右していると強く認識したことから、政治という切り口でジェンダー問題を研究しようと考えました。 進学先を決めるにあたって政治学の本を読んでいたところ、OSIPPの松林哲也先生が計量的な分析手法を用いて政治を研究されていることを知りました。業務でデータを扱う機会が多く、データ分析についても学びたいと思っていたため、松林先生の研究室であれば、ジェンダーと政治の研究に取り組みながら計量分析のスキルも習得できるのではないかと考え、進学を決めました。 3.仕事と研究をどのように両立しているのか 授業については、1学期に1科目(2単位)ずつ履修する計画としています。先学期は土曜日に開講された小原美紀先生の労働経済学の授業を履修しました。今学期は休日出勤が多くなることが事前に分かっていたため、金曜日の午後に代休を取得し、北村周平先生の計量経済学の授業を受講しています。論文指導はオンラインでのやり取りに加え、授業で通学した際に時間を取っていただき、対面での指導も受けています。また、年に数回ある学会や研究会は週末に開催されることが多いため、業務に支障をきたさずに研究活動に取り組めています。時間の確保が容易ではない面もありますが、職場の上司や同僚、そして指導教員の松林先生をはじめとするOSIPPの先生方・スタッフの皆さんの理解と応援をいただきながら、何とか仕事と研究を両立しています。OSIPPには社会人学生が多く、情報交換をしたり、励まし合ったり(時には飲み会も)しながら、ともに学べる仲間がいることも支えになっています。また、社会人以外の学生の皆さんも院生室で気軽に声をかけてくれたり、私の関心分野の論文を教えてくれたりと、OSIPPでのつながりが研究の励みになっています。 4.社会人経験は研究にどのように活かせるか 現場の実態を知っていることは、研究を進める上での足掛かりになっていると思います。特に私の場合は研究テーマと業務が関連しているため、現場での実感と照らし合わせながら研究の問いや仮説を考えられることは強みになると感じています。実際に修士論文では、行政の施策が女性の政治参入に与える影響について研究しました。また、仕事を通じて培った資料作成やプレゼンテーションのスキルも研究発表等で活かせています。 反対に、研究を通じて得たものが日々の仕事に活かせていると感じる場面もあります。例えば、担当する施策の効果検証では、様々な制約から厳密に因果効果を測ることは難しいものの、「誰に対して、どの経路で、どのような効果を及ぼすのか」という視点を常に持つようになりました。また、業務で課題に直面した際には背景に構造的な要因がないか考えたり、同様の事例が既に研究されていないか文献を調べたりする習慣が身につきました。目の前の仕事と適切な距離をとり、俯瞰的に見られるようになったことは自分にとって大きな変化でした。 5.社会人学生としてOSIPPへの入学を考えている方へ 仕事では多くの場合、テーマは組織や上司から与えられますが、研究は自分自身の興味・関心を起点として取り組むことができます。そこが仕事と研究の違いであり、研究の魅力の一つだと感じています。仕事とは別に自分の中に積み上がり、生涯を通じて取り組めるテーマを持つことは、大きな喜びにつながると思います。 OSIPPには様々な分野の先生や幅広い関心を持つ学生が集まっており、自分の視野を広げられます。長期履修制度やオンラインでの授業・論文指導など、仕事と研究を両立するための制度も充実していて、個人の状況に合わせて柔軟に研究計画を組み立てることが可能です。大学院進学に関心をお持ちの方はぜひ思い切って、一歩踏み出してみることをおすすめします。
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【院生紹介】齊藤弘晃さん(OSIPP博士前期課程)

【院生紹介】齊藤弘晃さん(OSIPP博士前期課程) OSIPP博士前期課程に在学中の齊藤弘晃さんにインタビューを行いました。齊藤さんは、メーカーで海外営業企画の仕事をしながら長期履修制度を利用してOSIPPの博士前期課程に入学され、3年目となる今年修士論文を提出されました。(写真:齊藤弘晃さん) 社会人学生になろうと思ったきっかけ、OSIPPに入学した理由やきっかけを教えてください学部生時代に台湾へ留学し、多様な民族が共存している社会を目の当たりにしました。それがどのように実現しているのかに強い関心を持った為、学部卒業時から大学院進学自体には興味がありました。一方で、当時は周囲から「大学院に行くと就職が難しくなる」といった話をよく聞いていたこともあり、まずは就職することを選びました。ただ、大学院進学という選択肢はその後も常に意識していました。社会人として仕事をしながら大学院に通う人は身近にほとんどおらず、最初は自分にできるのか不安もありましたが、「人生で後悔しないように一度挑戦してみよう」と思い、社会人10年目頃の仕事が少し落ち着いたタイミングで大学院進学を決意しました。OSIPPを選んだ理由は主に二つあります。一つは、国際政治をより専門的に学びたいという関心があったこと。もう一つは、OSIPP出身の友人から話を聞き、自分の関心分野を深く掘り下げられる環境だと感じたことです。 社会人をしながらの出願や学生生活をどのように両立されましたか社会人として働きながらの出願準備は、ちょうど社内の昇格試験の勉強時期と重なっていたこともあり、正直大変でした。研究計画書を書くのは初めてだったので、参考書を読んだり、関連論文を探して読んだりしながら、自分が取り組みたい研究テーマを具体化していきました。 授業については、集中講義や土曜日の授業もあるものの、平日の昼間に開講されるものも多く、仕事との調整が大変でした。OSIPPの長期履修制度を利用し、通常の2年ではなく、3年で単位を取り切りました。入学当時は実務担当者だったので、与えられた仕事をこなし、残りの時間を授業の課題や研究に充てていました。例えば、当時は在宅勤務制度の「中抜け制度」を使い、1時間半ほど中抜けしオンラインで授業を受け、その後すぐ業務に戻り繰り越された定時まで働くといった形です。2年目の半ば頃までは、有給休暇を使って対面のゼミにも参加していましたが、途中から職場で責任者の立場になり、会議や業務が増えて時間のコントロールが難しくなったことで、オンライン参加に変更したこともありました。週末には友人と出かけたりする時間も取っていたので、工夫次第で仕事と学業は両立できると感じています。 研究とお仕事の関連について教えてください 私の研究では、台湾における多文化主義政策がどのような歴史的背景のもとで形成され、社会統合の理念として機能してきたのかを分析しています。台湾社会には、福建系や客家系といった漢民族内部の多様性に加え、先住民族、戦後に中国大陸から移住した外省人、さらに近年増加している東南アジア系の新住民など、複数の集団が存在します。日本統治期には、中国本土とは異なる経験を共有する中で「台湾人」という意識の萌芽が生まれましたが、戦後は国民党政権の下で中国本土のナショナリズムが強く押し出され、多様な文化やアイデンティティは抑圧されてきました。その後、1980年代以降の民主化を契機に、先住民族や客家文化の復興が進み、多文化共存を重視する傾向が強まっています。私の研究では、こうした歴史の積み重ねを通じて、台湾がさまざまな集団を排除するのではなく「包摂」を重視し台湾人としての社会統合の枠組みを形成してきた過程を歴史資料や政策文書を読み込みながら分析しています。 仕事では、メーカーで海外営業企画を担当しています。いわゆる営業というよりも、本社側から海外拠点をサポートする役割です。海外拠点の財務状況を把握し、赤字拠点への改善提案などを行っています。現在は中国担当の責任者を務めています。研究テーマ自体は業務と直接結びついているわけではありませんが、担当国が中国であることから、米中関係や中国の政策動向などを調べる必要があります。その際、一次資料や先行研究の探し方などの研究で身につけた「研究者的な視点」が役立っています。単にニュースを通じた「誰かがこう言っている」という情報にとどまらず、その国が何を目指し、どのような政策を打ち出しているのかを、自分の力で情報にアクセスし自分の言葉で説明できるようになった点は大きな変化です。また、論理的に考える力が身についたり、部下のレポート添削がしやすくなったりと、間接的に業務に活かされている部分も多いと感じています。反対に、仕事を通じて文章を書く機会や報告の経験を積んでいることが、研究において役立っているとも感じます。一度社会人を経験した上で、自分の意思で大学院に進学しているため、「どの授業も無駄にしない」という意識が強くなり、有意義に学習したり学生時代には見えなかった視点から物事を捉えられるようになったりした点も大きいです。 仕事と研究の両立はやはり大変そうですが、社会人として学ぶモチベーションは何ですか仕事と研究の両立は確かに大変ですが、仕事とは別の軸として「研究」があることで、仮に仕事でつまずいたとしても「自分が本当にやりたいことを学べている」という実感が支えにもなっていました。もともと研究テーマへの強い関心があり、その分野の授業を受けたり、先生方のお話を直接聞いたりできること自体が大きなモチベーションで、好きなことをしているからこそ続けられた面もあります。結果的に、仕事と研究の間に相乗効果が生まれていたと感じています。また、OSIPPには社会人学生も比較的多く、社会人同士で仲間ができたり情報交換ができたりする利点もありました。留学生とも交流でき、人とのつながりが広がったことも大きな魅力でした。 社会人で大学院進学を考えている方にメッセージをお願いします 社会人として働きながら大学院に通うのは、決して楽ではありませんが、時間の使い方や工夫次第で十分に両立は可能だと思います。「学生時代は研究を諦めたけれど、やはり挑戦してみたい」と思っている方も多いのではないでしょうか。思い立ったら吉日です。ぜひ一度、チャレンジしてみてほしいと思います。 (OSIPP博士後期課程 池内里桜)