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【院生紹介】OSIPPでの学生生活を振り返って(久保知生さん)

私は2023年4月に大阪大学法学部国際公共政策学科からOSIPPに入学し、早期修了プログラムを利用して2024年3月に博士前期課程(修士課程)を修了します。ここではOSIPPでの生活を簡単に振り返りながら、大学院に進学することの意味を自分なりに述べたいと思います。 振り返ると、早期修了プログラムを利用して1年で修士課程を終えるというのは想像以上に大変で、いつも何かに追われていました。週に7日OSIPP棟に行く、という週も少なくなかったように思います。ただ、決して辛くはありませんでした。その理由の一つには、修士課程の編集員メンバーの仲が良かったことが挙げられます。よく授業の後で一緒にご飯を食べたり、リフレッシュルームで談笑したりしていました。思えば彼・彼女らと切磋琢磨した一年間でした(もちろん他の学生とも)。 このプログラムは学部4年次に10単位までOSIPPの単位を取得できるため、OSIPPに入学した時点でミクロ・マクロ・計量といった経済学のコア科目は取得済みでした。そのため、修士課程の1年間は、主にあらかじめ論文を読んでディスカッションをするような授業を履修していました。とりわけ秋冬学期は授業に出ながら修士論文を執筆していたため、飛ぶように時間が過ぎていきました。10月に学期が始まって気がつけば年が明け、修士論文の提出期限が迫ってきました。論文提出後はその忙しさから解放されたことで、1月の残り20日がまるで一年のように長く感じたことを記憶しています。 今になって思うと、かなり期限に追われていたのだと思います。 OSIPPで履修した授業の中でも、鎌田先生のEconomics of crimeとData Management and Analysisは本当に履修して良かったと思う授業でした。端的に言えば、洗礼を浴びたんですね。毎週のように自分の実力不足・理解不足を痛感しました。これらの授業を履修したことで、自分に課す「最低限」のレベルが上がりました。授業で扱ったことは就職後にも活かせると思うので、入社前に学べて良かったです。 最後に、修士課程修了を目前に控えた今、自分なりに思う大学院に行く意味を述べたいと思います。ここで想定しているのは、博士後期課程(博士課程)まで進むつもりはないけれど、修士課程には関心がある方です。修士課程で学ぶ意味を一つ選ぶとすれば、知らないこと・分からないことを自分で学ぶ力がつくということではないかと思います。学部生時代、私は大学院に進学すれば、知らないことをもっと知ることができると思っていました。でも、実際はそうではありませんでした。新たに学んだことが多いのも確かですが、それ以上に知らないことが増えました。そのときに、最低限のことだけ教えてもらって、あとは自分で勉強するというのが学びの本来の姿なのだということに気づきました。  大学院に行かなくても、最近はネット上に情報があふれているから自分で勉強できるのでは?という意見もあると思います。でも、一人で勉強できていたとしても、使える知識として体系的に学べているとは限りません。複数のテキストを渉猟しながら体系的に物事を理解するというのはなかなか難しいように感じます。一方で、大学院では授業資料や、違った角度からの先生の一言で急に理解が深まったりすることが良くあります。 大学院といえば何やら難しいことをする場所、というイメージがあるかも知れませんが、知らないことを学ぶ上でのベースになる知識を身につけるには最適の場所だったと改めて感じています。4月からは民間企業に就職しますが、OSIPPで身につけた力をさらに伸ばせるように頑張ります。 (OSIPP博士前期課程 久保知生) 【院生投稿】久保知生さん(OSIPP博士前期課程・早期修了プログラム)
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2023年度 「優秀学位論文賞」受賞者発表!

当該年度に提出されたすべての課程博士論文及び修士論文を対象に、それぞれ優秀学位論文が発表されました。 優秀学位論文の選考はOSIPP優秀論文選考委員会が行い、教授会が選考委員会からの推薦をうけて下記のとおり決定されました。 優秀学位論文賞受賞者には、OSIPP学位記授与式にて賞状が授与されます。受賞者の皆さん、おめでとうございます!
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2024年2月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の2月の研究業績をご紹介します。 ・二羽秀和 先生・二杉健斗 先生・遠藤勇哉 先生・髙田陽奈子 先生・和仁健太郎 先生二羽秀和(受賞)2023年度大銀協フォーラム研究支援「特別賞」受賞テーマ:国債のデフォルトと物価安定の関係性について Hidekazu Niwa coauthored with Eguchi Masataka and Takayuki Tsuruga(論文) “Should the fiscal authority avoid implementation lag?” forthcoming in Oxford Bulletin of Economics and Statistics (Accepted in February 14) (査読あり)https://doi.org/10.1111/obes.12604 Abstract:Implementation lags are a concern of policymakers as they may reduce the efficacy of fiscal policy. Using a standard New Keynesian model with an effective lower bound on the nominal interest rate, we compare the impacts of fiscal stimulus on output across various lengths of implementation lag. We show that despite concerns among policymakers, implementation lags may enhance the efficacy of government purchases on output when the economy is caught in a liquidity trap. Yuya Endo coauthored with Yoshikuni Ono(論文)“The Underrepresentation of Women in Politics: A Literature Review on Gender Bias in Political Recruitment Processes” Interdisciplinary Information Sciences  Issue: Online first (査読あり) DOI: https://doi.org/10.4036/iis.2024.r.01Abstract:This article discusses the underrepresentation of women in the political arena worldwide by reviewing the relevant literature in the field of political science. Despite women’s increasing participation in various fields, the average percentage of female legislators in OECD countries is only 33.83%, with only two countries achieving 50% representation. Increasing the number of female legislators is crucial to reflect the policy preferences of female voters and increase women’s future political participation. However, multiple studies suggest that women face gender bias at each of the three stages of the political recruitment process: self-selection of potential candidates, nomination of aspiring candidates by political parties, and selection of candidates as representatives by voters. We review how gender bias may manifest at each stage of the political recruitment process to understand why there is a significant gender gap in political representation. Additionally, we introduce research discussing ways to reduce the gender gap in political representation. 二杉健斗(論文)「安全保障化する外国直接投資――対内・対外投資規制の投資条約による統御」法律時報96巻1号(2024年)30-35頁概要:特集「経済安全保障の法的統御」のうちの1編として、近年先進国を中心に導入と強化の進められている、安全保障を理由とした外国直接投資の規制を投資条約の諸規定に照らして分析した。特に、条約上の規律の乏しい対外投資規制に対し、対内投資規制については、投資の受入れを義務づける自由化型の投資条約のみならず、投資受入後の保護義務しか課さない保護型の条約においても問題となり得ることや、留保や例外規定の援用可能性が問題となり得ること等を論じた。 和仁健太郎(論文) 「領海沿岸国の保護権と外国軍艦の免除」『阪大法学』73巻5号(2024年)895-931頁https://doi.org/10.18910/93893 概要:領海において無害でない通航をする外国軍艦に対し、沿岸国は、いかなる措置をとることができるか。本稿は、領海沿岸国の保護権と外国軍艦の免除との関係について、(1)この問題について論ずる際に海洋法条約32条の「例外」という言葉に引きずられてはならないこと、(2)この問題は領海沿岸国の保護権の性質の側から考えるのではなく、軍艦の免除原則の射程の問題として考えるべきであることを論じた。 髙田陽奈子(研究ノート) 「日本の裁判所における自由権規約の解釈 ー国際法上の条約解釈規則の具体的適用方法、一般的意見の法的意義、そして日本の裁判所による解釈の国際法上の帰結・影響ー」阪大法学73巻5号(2024年2月)989-1043頁、https://doi.org/10.18910/93896  概要:本研究ノートは、国内人権訴訟に携わる法実務家に対して、自由権規約をはじめとする人権条約の解釈のあり方についてまとまった指針を提供することを主要な目的としている。そのために、本研究ノートでは、自由権規約9条1項の「何人も、恣意的に逮捕され又は抑留されない」という規定の解釈という具体例を題材に、用いられるべき条約解釈規則とそうした規則の具体的な適用方法、自由権規約委員会による一般的意見やそれ以外の国際的な機関による諸文書の自由権規約の解釈における法的意義、そして、国内裁判所による自由権規約の解釈がもたらす国際的な帰結・影響について、最新の国際法実践を踏まえながら詳しく論じている。なお、本研究ノートは、昨年、令和4年(ワ)第528号自由権規約に基づく損害賠償請求事件において東京地方裁判所に提出した意見書をもとにして執筆したものである。 髙田陽奈子(裁判意見書) 「意見書:人権条約の解釈における、人権条約機関の『一般的意見』・『一般的勧告』の法的意義について」名古屋地方裁判所民事第9部、令和4年(行ウ)第92号、93号、94号、在留資格変更許可処分義務付け等請求事件(2024年2月19日提出) 概要:本意見書は、人権条約の解釈における、人権条約機関の「一般的意見」・「一般的勧告」の法的意義について、国際法・国際人権法の専門家という立場から意見を詳述したものである。 Kento Nisugi coauthored with Nisuke Ando and Shotaro Hamamoto(その他の記事)“Permanent Court of Arbitration (PCA),” Max Planck Encyclopedia of Public International Law (Online edition, 2024) (査読あり)https://opil.ouplaw.com/display/10.1093/law:epil/9780199231690/law-9780199231690-e71 Abstract:This is an updated entry to Max Planck Encyclopedia of Public International Law on the Permanent Court of Arbitration, whose authors draw upon the previous version written by Nisuke Ando in 2006. It describes the Court’s legal basis, organization, functions and procedure and explains several significant developments in its practice throughout its history, highlighting the important role of the Court in the promotion of peaceful settlement of international disputes and the rule of law. The entry was formally submitted in May 2023 and published in January 2024.
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教員紹介:遠藤勇哉 助教

OSIPP政治学の教員である遠藤勇哉先生にインタビューを行いました。遠藤先生は政治行動論が専門であり、東北大学で情報科学の博士号を取得しました。東北大学で助教を勤めた後、2023年9月16日付でOSIPPに助教として着任しました。 どんな研究をされていますか 主に「選挙で有権者が何を手がかりに政治行動を行っているのか?」という問いに基づいた研究をしています。特に、ジェンダーステレオタイプ(女性とはこういうもの、男性とはこういうものという決めつけた見方)、候補者の外見といった観点からアプローチしています。 この研究においては、ジェンダーステレオタイプと有権者の政治行動にはどのような関係があるのかを検証しています。私たちの研究で、日本の有権者は政治家の性別毎に得意な政策や当てはまる性格があると認識していることが明らかになっています。では、有権者はいつ、どのように意思決定の手がかりとしてジェンダーステレオタイプを用いているのでしょうか。現在の私の関心はここにあります。たとえば、「女性らしくない」と有権者に認識された女性政治家はどのように評価されるでしょうか。これらのことを主にサーベイ実験を用いて明らかにしています。 ジェンダーステレオタイプが有権者の政治行動へ与える影響は、多くの面で未だ明らかになっておらず、その解明を通じて、政治における男女の格差縮小へ繋がる手がかりや方策を発見し、社会全体の発展に寄与できることを目指しています。また、東北にいたことから復興と政治の研究にも取り組んでいます。 もともとジェンダーステレオタイプや候補者の外見といった問題に関心があったのですか 最初からジェンダーステレオタイプに関心があった訳ではありません。一時期は、政治とは無関係なイベントが有権者の政治行動に与える影響について関心を持っていました。例として修士課程で読んだアメフトの試合の研究を挙げますが、2015年の大学アメフトのチャンピオンシップであるオハイオ州立大学とオレゴン大学の試合にて、勝利した大学の学生(この試合ではオハイオ州立大学)の間で、そのときの大統領に対する評価が高まるといった現象が見られます。一方で、試合に負けた大学(この試合ではオレゴン大学)の学生の大統領への支持率は大幅に低下します。ただ、この効果は一週間も持続しない。この研究は、政治と無関係なアメリカンフットボールの試合の結果が人々の気分に影響を与え、その気分が政治行動に影響を及ぼす可能性があることを示唆しています。それで有権者は何の情報を手がかりに政治行動をしているんだろうと、興味をもつようになりました。 また、ジェンダーステレオタイプに関する論文を読んで、面白いと思ったことも関係しています。Ono and Yamada(2020)は、女性候補者は男性候補者に比べて不利な立場に置かれていて、それだけでなく、彼女たちが有権者のジェンダーステレオタイプから外れた行動を取るとpunishment(処罰)を受けるとしています。具体的には、支持される確率の低下です。そうなると、なかなか女性の候補者は身動きが取りづらいですよね。そうした事例を明らかにしていて、面白いと感じました。 それから、候補者の外見研究には私自身の投票の経験が関係しています。私が高校生の時は、まだ18歳の選挙権がなかったので、初めて投票に行ったのは学部3年生の時です。実際に投票に行ってみると、何を手がかりにして投票すれば良いのか分かりませんでした。そこで、候補者の顔を参考になんとなく政治家として良さそうな人に投票したわけです。学校では、さながら義務のように投票に行く重要性を教わりますが、多くの有権者は誰に投票するか迷うのではないでしょうか。いったい有権者は何の情報を手がかりにして投票しているのだろうという興味が湧き、より深く知りたいと思うようになりました。 研究者を目指したのはいつ頃ですか 博士前期課程を終えたら民間企業に就職しようと思っていました。実際に内々定もいただいていたのですが、お世話になっていた先生から東北大学の博士後期課程に来ないかという話をいただきました。「政治学と心理学を掛け合わせた研究って面白いな」と思っていた時期だったので、人生は一回きりですから、思い切って進学することにしました。 先生にとって、研究の魅力は何ですか ジェンダーステレオタイプというのは、人々の思い込みに過ぎません。例えば、男性政治家は女性政治家に比べて防衛政策に対する知識が多く、女性政治家は男性政治家に比べて育児政策に対する理解が高いなどと言われることがあります。このように、多くの有権者は、政治家、とりわけ女性の政治家をジェンダーステレオタイプというレンズを通して見がちです。有権者がこのような行動を取る理由を理解することは民主主義の機能の有効性を理解する上で重要で、興味深いと思っています。 今学期はどのような授業を担当されていますか 今学期は「現代の法と政治を考える」という授業を担当しています。週二回の開講ですが、それぞれ別の内容です。火曜日は選挙や政党、国会について、学術論文の知見をもとに理解する授業です。現代日本政治の授業ですね。水曜日の授業では、私の専門に近いテーマである政治心理学を扱っています。有権者がどのような手がかりで投票するのかやメディアが政治に与える影響、政治において感情が果たす役割とかね。 最後に、OSIPP生へのメッセージをお願いします 博士前期課程までは学問に興味関心があれば「ノリ」で進学して大丈夫だと思います。実際のところ、博士前期課程で学ぶ“ものの考え方”や“論理的な文章作成”は現実社会で活かせられると思います。実際に、私が博士前期課程で就職活動をした際は、その部分を評価して頂いたと思います。一方で、博士後期課程まで進みたい方は、しっかり計画した方が良いと思います。例えば、博士号取得後にどこで働くのか。そこから逆算して何の研究をして、何年で博士号を取得することが望ましいのか、所属研究室の研究テーマと自身の関心が一致しているのかといったところです。 また、向こうから来るのを待つのではなくて、自分から動くことがとても大事です。良い研究アイデアがあるのであれば「先生、これ一緒にやりませんか?」と声をかけることです。あるいは、オフィスアワーを積極的に活用するとか。これは、今後も研究を続ける場合だけでなく、会社で働く場合にも当てはまると思いますので、積極的に自分から行動するということは大事にしてください。 (インタビュー時期2023年秋・OSIPP博士前期課程 久保知生) 〈推薦図書〉■ 候補者の外見と有権者の行動に関心がある方向け『第一印象の科学―なぜヒトは顔に惑わされてしまうのか』(みすず書房)アレクサンダー・トドロフ(著)、作田 由来衣子(監修)、中里 京子(翻訳)■ ジェンダーと政治に関心がある方向け『女性のいない民主主義』(岩波新書)前田 健太郎(著)■ 博士前期課程に進学したい方向け『DEMOCRACY FOR REALISTS』(Princeton University Press)Christopher H. Achen and Larry M. Bartels(著)未邦訳。先生曰く、「英語だけど、そんなに難しくないよ!」とのことです。 〈参考文献〉■ Busby, E. C., Druckman, J. N., & Fredendall, A. 2017. The Political Relevance of Irrelevant Events. The Journal of Politics, 79(1), 346-350.■ Ono, Y., & Yamada, M. 2020. Do voters prefer gender stereotypic candidates? Evidence from a conjoint survey experiment in Japan. Political Science Research and Methods, 8(3), 477-492.■ 加藤秀一.『はじめてのジェンダー論』.有斐閣ストゥディア, 2017 ****助教 遠藤勇哉研究テーマ:ジェンダーと政治、政治行動、政治心理専門分野:政治行動論学位:博士(情報科学)
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韓国 慶煕(キョンヒ)大学超短期プログラム(2023年度)

2023 OSIPP Special Winter Program on Society and International Relations of Contemporary Japan, January 15 – 19, 2024 (写真:慶煕大学学生、中央左:中嶋研究科長、中央右:河村准教授) 2024年1月15日~19日の5日間、韓国の慶煕(キョンヒ)大学から16人の学生を受け入れ、短期学生交流プログラムが開催された。慶煕大学はOSIPPが部局間交流協定を結んでいるパートナー校の1つである。 初日は、中嶋啓雄OSIPP研究科長によるプログラム開講の挨拶の後、前川和歌子准教授による講義: Japan’s Approach to Peacebuildingが行われた。 2日目は、片桐梓准教授による講義: The Rise of China and East Asian Securityに続き、南和志准教授・中嶋教授のゼミ生25人が参加して学生たちのディスカッションが行われた。まずはゼミ生 から議題のプレゼンテーションが行われ、続いて日韓の学生たちによる議論があった。最初に「台湾問題に対する日韓の取りうる対応」について議論が交わされた。次に、日韓の深刻な社会問題である少子化と人口減少について意見が交わされた。このテーマでは、「社会規範が女性の役割を無意識レベルから規定している」「日本は総合職というポストがメジャーだが、韓国はもっと専門性をもったポストが多いことによって、女性が専門性を身につけて社会進出しやすい」といった、両国の社会規範や労働参加意識の相違、その結果としての労働市場の差などについての言及があった。学生たちが、アジアの政治情勢から、身近なキャリア選択の話題に至るまで、様々なトピックについて興味を持って交流を深めている様子が印象的だった。 3日目には、二杉健斗准教授による講義: Contemporary International Law Issues in East Asia、続いて高田陽奈子准教授によるHuman Rights Protection in Asia: Do European and Inter-American Models Work?をテーマにした講義とディスカッションが開催された。 4日目は、石瀬寛和准教授による講義: Exchange Rate and Sovereign Crisis、続いて生藤昌子教授による講義: Environmental Policies in Japan が開催された。 最終日の5日目は、河村倫哉准教授による講義: Are Multicultural Policies Possible in Japan? で締めくくられた。最後に、中嶋研究科長からプログラムの修了証が一人一人に手渡され、学生たちは達成感のある表情だった。 (OSIPP 博士前期課程 花山愛歩)
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2024年1月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の1月の研究業績をご紹介します。 ・山下拓朗 先生・前川和歌子 先生・髙田陽奈子 先生 山下拓朗(受賞)第20回(令和5(2023)年度)日本学士院学術奨励賞を受賞https://www.japan-acad.go.jp/japanese/news/2024/011201.html Wakako Maekawa(論文)“United Nations peacekeeping operations and multilateral foreign aid: Credibility of good governance” World Development Issue: Online first (査読あり) DOI: https://doi.org/10.1016/j.worlddev.2024.106531 Abstract:Does hosting UN Peacekeeping Operations (UN PKOs) increase multilateral foreign aid inflows into civil war affected countries? Under what conditions do UN PKOs make multilateral foreign aid effective, enhancing governance quality? Multilateral foreign aid agencies increasingly focus on good governance as an allocation criterion. However, multilateral aid assistance faces dilemmas when allocating aid since it undermines the credibility of government commitments to good governance. This study argues that UN PKOs mitigate such uncertainty by initiating democratization, capacity-building, and political participation while mitigating political violence, thereby increasing the multilateral aid inflows. In missions involving these initiations, multilateral aid effectively enhances governance quality. These arguments are tested using a sample of countries that have experienced civil wars between 1991 and 2009. The findings suggest that UN PKOs increase the multilateral aid inflows. Moreover, increasing multilateral aid is more effective in improving the governance quality when missions have capacity-building or electoral tasks. 髙田陽奈子(論文)「人権条約における、条約当事国の統治理念・体制の多様性という難題--人権条約機関による「手続的アプローチ」は適切な解決策か」憲法研究13号(2023年)https://www.shinzansha.co.jp/book/b10045232.html 概要:憲法と人権条約との間の決定的な差異の1つとして、憲法が1つの国のみを対象とするのに対し、人権条約は多数の国を対象とするという点がある。国内裁判所やその他国家機関が、特定の1つの国の現実とそこで共有された統治理念を前提として憲法を解釈適用するのに対し、人権条約機関は、人権条約の運用において、国内統治理念・体制において極めて多様な条約当事国を同時に規律しなければならない。そのような中で人権条約機関は、いかにして、条約当事国の多様な現実やニーズに応えることができるだろうか。そしてその際、人権条約機関は、伝統的国際法の重要原則である、政治体制間の対等性とはどのように折り合いを付けるのだろうか。本稿では、このような国際人権法全体を通底する根本的な問いに答えるための第1歩として、まず、人権条約機関が民主的国家を非民主的国家よりも規律の厳格さにおいて優遇すべきかという議論を整理し、次に、近年人権条約機関の実践において司法審査基準の1つとして発展している「手続的アプローチ」が事実上そのような機能を果たしていることを示したうえで、最後に、そのことが、伝統的な国際法における政治体制間の対等性原則との関係でどのように評価されるべきなのかについて論じている。 髙田陽奈子(判例評釈)「ヨーロッパ人権条約と国際スポーツ法の交錯――性分化疾患をもつ女性アスリートの権利とスポーツにおける公平な競争(Semenya v. Switzerland, 11 July 2023 [小法廷])」人権判例報7号(2023年)(査読あり) https://www.shinzansha.co.jp/book/b10045085.html#  概要:キャスター・セメンヤ氏は、南アフリカ国籍の女性陸上競技アスリートであり、2009年以来、複数の世界陸上競技選手権やオリンピックの女性800メートル種目において金メダルを獲得するなど輝かしい成績を収めてきた。しかし、セメンヤ氏には、生まれつき、性染色体や性器、性線などの発達が非典型的な状態(「性分化疾患」 )のため、男性ホルモンであるテストステロンの分泌量が平均的な女性よりも相当程度高いという生物学的特徴がある。このため、セメンヤ氏の活躍は、スポーツにおける公平な競争と性のあり方に関する国際的な議論を巻き起こした。そうした議論を背景に、世界陸連は、女性競技における公平な競争の確保を目的として、性分化疾患をもつ女性アスリートが女性区分で国際競技大会に出場するためには、ホルモン治療によりテストステロンの値を一定値以下に抑えなければならないとの規則を制定した。この判例評釈が対象とするセメンヤ事件判決は、スイスを形式的な被申立国としつつ、実質的には、非国家主体たる世界陸連が制定したそうした規則の、ヨーロッパ人権条約との整合性を審査したものである。この判例評釈では、セメンヤ事件判決を要約したうえで、この判決がもたらす示唆について、とくに、国際スポーツ法におけるヨーロッパ人権裁判所の位置づけ、スポーツ法に固有の諸価値と人権との調和のあり方、そして国際スポーツ法を私法的秩序として性格づけることの限界、という点から論じている。 髙田陽奈子(裁判意見書)「意見書:自由権規約の解釈方法について―ー条約法条約31条および32条上の解釈規則の具体的な適用方法と、自由権規約委員会の一般的意見の法的意義を中心に」東京地方裁判所民事第26部、令和4年(ワ)第528号自由権規約に基づく損害賠償請求事件(2023年12月5日提出) 概要:本件訴訟では、難民申請者である原告らに対して、被告である日本国が行った長期的かつ反復的な入管収容が、自由権規約9条1項の「何人も、恣意的に逮捕され又は抑留されない」という権利の侵害を構成するか否かが中心的な論点になっている。このような背景のもと、この意見書は、原告らの依頼に基づき、①そもそも国際法上、条約はどのような解釈方法により解釈されるのか、②自由権規約の解釈において、自由権規約委員会の一般的意見35号はいかなる法的意義を有するのか、そして、③自由権規約の解釈における、国内裁判所の役割・位置づけはいかなるものであるのか、の3点について、国際法・国際人権法の専門家という立場から意見を詳述したものである。 ※本件訴訟の詳細や、髙田の意見書を含む訴訟関連資料はすべて、CALL4というウェブサイトの「『日本の入管収容は国際人権法違反』訴訟」のページ(https://www.call4.jp/info.php?type=items&id=I0000096)から閲覧することができます。
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【新刊:大久保邦彦教授】島村健, 大久保邦彦, 原島良成, 筑紫圭一, 清水晶紀 編『環境法の開拓線』

OSIPPライブラリーでは、教員の研究業績を収集した「スタッフコーナー」を設置しています。このたび、スタッフコーナーへ受入した大久保先生の新刊をご紹介いたします。 大久保邦彦先生(松本充郎先生追悼論文集)島村健, 大久保邦彦, 原島良成, 筑紫圭一, 清水晶紀 編『環境法の開拓線』(第一法規、2023年) ⇒ 大阪大学所蔵検索 書誌詳細画面はこちら (OSIPPライブラリー)
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2023年度口頭報告審査会および博士論文進捗状況報告会

2023年12月7~9日、博士前期課程(修士)・博士後期課程(博士)論文の「2023年度口頭報告審査会および博士論文進捗状況報告会」がオンライン形式で開催された。(写真:河畑波恵さんの発表の様子) 口頭報告審査会では、修士号申請者35人と博士号申請者4人が自身の学位論文の内容を発表し、博士論文進捗状況報告会では、13人の学生がそれぞれの博士論文について、これまでに仕上がっている部分の内容と今後の研究計画を報告した。 博士前期課程2年次である久保知生さんは「女性候補者の勝利がその次の選挙での候補者の性別に影響があるのか」という、日本の政治において多様性を確保するうえで非常に重要な問いに挑んでいる。分析の上では「最後の1議席にぎりぎりで女性が当選した場合と男性が当選した場合において、次回の選挙での候補者を比べる」という着眼点で、特定の関数形を仮定しないノンパラメトリック回帰不連続デザインと呼ばれる統計手法を用いて「女性候補が勝利した選挙区では、次回の選挙で非現職の女性候補者が擁立されやすい」という統計的因果効果に迫った。久保さんは、発表終了後に13人という大勢のギャラリーが見守る中、主査や副査からの内容や統計手法に対する質問に一つ一つ丁寧に回答していた。 博士前期課程2年次の河畑波恵さんは、米国でアジア系女性として育ち、性別や民族的所属による偏見を持たれたという自身の経験から、“マイノリティ”にあたる、非白人で女性であるカマラ・ハリス氏が副大統領に選出された際の選挙を、社会の鏡となるメディアはどう報道しているのかに関心を持った。そこでCBSとCNNの膨大な選挙報道のデータを収集し、丁寧に比較分析をした。その結果、2020年アメリカ大統領選挙において、性別および民族的所属に関する報道はハリス候補の報道の5分の1を占めたのに対し、“マジョリティ”に当たるジョー・バイデン候補(2008年)やアル・ゴア候補(1992年)に関する報道ではゼロだったことを示した。また、いずれの候補者についても、候補者の政治思想や政策に関する報道は15%以下にとどまっていたことから、河畑さんは修士論文を通して選挙報道のあり方を問い直している。報告会を終え、河畑さんは「先生方に良いアドバイスを頂けたので、それを元に修正していきたいと思います!」と清々しい笑顔で語った。 博士後期課程2年次のElizaveta Kugaevskaiaさんは “Time Zones and Voting Behavior: Evidence from Russia” というタイトルで現在進めている研究の進捗を報告した。タイムゾーンの境界線を挟んだ地域では、日の出と日の入りは同じタイミングであるにも拘らず、線の東西もしくは南北の地域でその時刻は異なる。Elizavetaさんはこのことが起床時間、睡眠の質、気分などに影響して投票率や右派・左派など党派ごとの得票率にまでも影響があるのではないかと考えた。そこで、世界で最も多くのタイムゾーンを持つ国であるロシアを舞台に、地理的データを使った空間回帰不連続デザインという近年経済学で利用され始めたばかりの方法を用いて取り組んでいる。Elizavetaさんの発表後、主査と副査からは結果の解釈やそのメカニズム・先行文献に至るまであらゆる角度からのコメントが寄せられ、予定時間を20分超過するほど白熱した議論が行われた。そして最後に、今後の博士論文執筆や研究会での発表に向けて行うべき分析の方針を確認した。 今年3月に修了予定の学生は、今回の審査委員からのアドバイスを踏まえて加筆修正した学位論文を1月上旬に提出する。その後、学位論文の審査と教授会の決定を経て学位が授与されることになる。 (OSIPP博士前期課程 辻本篤輝)
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2023年12月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の12月の研究業績をご紹介します。 ・山下拓朗 先生・小原美紀 先生・二羽秀和 先生 山下拓朗(受賞)第20回(令和5(2023)年度)日本学術振興会賞を受賞https://www.jsps.go.jp/j-jsps-prize/kettei.html 小原美紀(著書)「日本における女性の「家計内交渉力」の変遷」阪本諒との共著『日本女性のライフコース 平成・令和期の「変化」と「不変」』慶應義塾大学出版会(2023年10月)https://www.keio-up.co.jp/np/detail_contents.do?goods_id=6574 概要:日本において、家計内の女性の地位はどのように変化しているのか。本稿では、経済学分野で家計行動を分析するときに重要となる「家計内交渉力」について、統計データに基づいた実態把握を行う。まず、先行研究に倣って妻の家計内交渉力を定義する。つぎに、『消費生活に関するパネル調査』を用いて、夫と比較した妻の相対的地位を計測する。具体的には、夫と比較して妻の収入が高い家計や、教育年数が長い家計を妻の交渉力が高い家計として、そのような家計割合を示す。ほかにも、家計全体で何を買うかや、妻が働くかどうかを決断するときに誰の意見が反映されたか、あるいは、誰が収入を管理しているかといった情報から、家計内交渉力の指標を作成する。分析の結果、日本における妻の家計内交渉力は高くないが、2000年以降、高まってきたことがわかる。また、妻の交渉力が高くなると、妻自身の支出は増えるものの、彼女の余暇時間は減ることがわかる。これらの結果を説明するものとして、妻の交渉力が高い家計は妻の労働時間が長い場合が多いが、妻の労働時間が長くなっても、彼女の家事労働時間は減らず、それによって余暇時間(一日のうち労働時間と家事時間を除いた時間)が短くなってしまうことが考えられる。日本の既婚女性に課されるこのような家事制約の存在により、たとえ既婚女性の家計内交渉力が高くなっても、彼女らの健康状態や満足度が高まらない可能性が指摘される。 小原美紀(著書)「日本の家計は本当に貯蓄しなくなったのか」チャールズ・ユウジ・ホリオカとの共著『日本女性のライフコース 平成・令和期の「変化」と「不変」』慶應義塾大学出版会(2023年10月)https://www.keio-up.co.jp/np/detail_contents.do?goods_id=6574 概要:本論文では、『消費生活に関するパネル調査』を用いて、2000年以降の日本の既婚世帯の家計貯蓄率の実態と動向を整理する。貯蓄意欲を捉えるために、月間の世帯収入に対する月間の貯蓄の比率に着目した分析の結果、日本の既婚世帯の月間家計貯蓄率は一貫して低下しているのではなく、2000年以降で見れば家計貯蓄率は下げ止まっていることがわかる。また、同一個人のライフサイクルでの貯蓄率を見ると、40歳代後半にかけて家計貯蓄率は下がっていき、それ以降は少なくとも50代にかけて増加に転じる。さらに、1960年代生まれの世代と比べて、それより遅く生まれた世代で貯蓄率は低い傾向にある。そして、これらの家計貯蓄率は、所得階層が低い家計、妻の教育年数が短い家計、子供のいる家計、家計管理をしていない家計で低いことがわかるが、これら家計の特徴の差だけでは家計貯蓄率を説明することはできず、経済状況や社会環境も大きな影響を与える。たとえば、所得が増えた時にどれぐらい貯蓄率を増やすかという「貯蓄性向」は、税制の変化の影響を受ける。 Miki Kohara coauthored with Taisei Noda(論文)“The causal effects of working time on mental health: The effectiveness of the law reform raising the overtime wage penalty”, Pacific Economic Review 2023; pp.1–27.(査読有)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/1468-0106.12441 Abstract:The present paper reexamines the causal effect of working hours on workers’ mental health. We utilize Japan’s 2010 reform of the Labor Standards Act as a social experiment to examine how the increased wage penalty for long overtime work affects working hours and workers’ mental health. Utilizing a unique panel dataset containing health behaviours as well as individual, house-hold and workplace characteristics of male workers, we find that the wage penalty reform indeed succeeded in reducing overtime hours and total working hours and that the reductions contributed to better mental health of workers. Further empirical investigation suggests that the reduction effect of the reform on working time is homo-geneous among age groups; however, the harmful effect of working time on mental health is large and statistically significant among young workers. Our results suggest that setting a high wage penalty for long overtime work effectively reduces overtime work and improves workers’ health outcomes, particularly for young people. Hidekazu Niwa(論文)“Exiting from Quantitative Easing in an Era of Large Government Debt: Inflation or Default?,” (2023) Economics Letters,111471. (査読有)https://doi.org/10.1016/j.econlet.2023.111471 Abstract:Japanese government bonds have accumulated during the last decades, while the Bank of Japan has purchased government bonds under the Quantitative and Qualitative Monetary Easing. This note reconsiders a relationship between inflation stability and a government bond default by using a simple model in which the fiscal authority: (ⅰ) commits not to making fiscal adjustments needed to stabilize government debt, (ⅱ) commits not to providing financial support for the central bank that incurs losses on its balance sheet, and (ⅲ) can partially default on government bonds. We show that the central bank that engages in large-scale purchases of long-term government bonds when the zero lower bound (ZLB) binds cannot achieve its inflation target after the ZLB is no longer binding.
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【新刊:小原美紀教授】樋口美雄, 田中慶子, 中山真緒 編『日本女性のライフコース : 平成・令和期の「変化」と「不変」』

OSIPPライブラリーでは、教員の研究業績を収集した「スタッフコーナー」を設置しています。このたび、スタッフコーナーへ受入した小原先生の新刊をご紹介いたします。 小原美紀先生樋口美雄, 田中慶子, 中山真緒 編『日本女性のライフコース : 平成・令和期の「変化」と「不変」』(慶應義塾大学出版会、2023年) ⇒ 大阪大学所蔵検索 書誌詳細画面はこちら (OSIPPライブラリー)
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2023年11月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の11月の研究業績をご紹介します。 ・大久保邦彦 先生・二杉健斗 先生 大久保邦彦(著書)「共同不法行為論の開拓線」島村健・大久保邦彦・原島良成・筑紫圭一・清水晶紀 編『環境法の開拓線』第一法規株式会社(2023年11月)https://www.daiichihoki.co.jp/store/products/detail/104778.html 概要:共同不法行為論は、公害・じん肺・アスベスト等に関する紛争に対処するために実務上、展開を重ねてきたが、理論的には混迷状態にある。本稿は、「ドグマーティッシュな基礎づけ」を重視するオーストリア法を参照して、共同不法行為論・因果関係論の基礎にある法原理を探求することを通して、日本法に対する示唆を得ることを目的とする。「不法行為の一般原則」によると、人は、自己の行為と因果関係が証明された結果についてのみ責任を負うと言われるが、制定法の評価によると、因果関係が不確実・不十分な場合にも責任が肯定されうる。この場合、オーストリアでは、動的体系論という方法論に依拠して、因果関係の薄弱さを重い責任非難(故意)や高度の相当性・具体的危険性によって補完することが説かれている。かかる構想は、法原理的基礎づけに関する議論が低調な日本の学説にとって、参照価値が高いと思われる。 二杉健斗(その他の記事)「学界回顧―国際法」越智萌・岡田陽平との共著『法律時報』95巻13号(2023年)197-206頁https://www.nippyo.co.jp/shop/magazine/9163.html 概要:『法律時報』の「学界回顧」は、法学分野の1年間の研究動向をレビューする記事であり、著者らの担当は2年目である。昨年度に引き続き、国際法(学)の有用性に対する疑問への応答が求められているとの問題意識から「実学としての国際法学」の動向を記述するべく、当該研究によりいかなる規範的・実践的問題が解決されたのかに特に注目して、日本の国際法学の研究を体系的にマッピングすることを試みている。特に露宇戦争に関しては、項目を別立てしてまとめている。
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2023年度秋季OSIPP説明会

2023年11月10日、OSIPP棟2階講義シアターにて秋季OSIPP説明会が行われた。当日は対面とオンラインを合わせて約60人が参加し、入学試験及び在学中のカリキュラム、修了後の進路等についての説明、および質疑応答が行われた。(写真:OSIPP修了生の進路を説明する小原美紀教務委員長) 説明会は、中嶋啓雄研究科長の挨拶から始まった。中嶋研究科長は、OSIPPでは社会の諸問題について学際的にアプローチし、最終的に政策という形につながるよう研究・教育が行われていること、インターンシップ教育などで社会とのコミュニケーションを重要視していること、さらに専任の教員が多いために充実した研究・教育が実施できることを挙げ、OSIPPには国際的な視野を持って公共政策課題の解決に取り組むリーダーを養成するための知見や能力を身につける環境が整っているという紹介があった。 その後、小原美紀教務委員長より、例えば学部レベルの数学のような基礎から入学後に学べるカリキュラムの特徴、入試に関する情報、早期修了制度を含めた修了要件、学生支援等についての詳細な説明があった。 入試情報に関しては、OSIPPの出願において英語民間試験のスコアは過去5年以内のものが有効なので、早めに高いスコア取得に向けて動いてほしいという激励があった。また、学生支援については様々な奨学金情報を在学生向けのインターネット掲示板等で得られることに加え、海外の奨学金採用の支援にも推薦状執筆などを通してOSIPPの教員が支援を惜しまないこと、2024年から大阪大学で始まる特待留学生授業料免除についても言及があった。 続いて、経済系と法政(法学・政治学)系の教員からそれぞれの分野に関する説明があった。経済系からはOSIPP教授である小原美紀先生が、初めて経済学を学ぶ学生でも専門性を身につけられるように設計されているOSIPP経済系のカリキュラムの魅力を伝えた。法政系は河村倫哉准教授が、法学・政治学分野でそれぞれどのような授業が開講されているかを説明したうえでOSIPPでは特に国際法・国際政治学・国際関係論の教員が多く在籍していること、UNESCOなどの国際機関で実務経験を積んだ教員による授業が豊富であることを説明した。 次に、OSIPP教員からの日本語と英語でのメッセージ動画が放映され、教員が具体的にどのような研究を行っているか、どのような学生とともに研究を行いたいかについて熱い思いが伝えられた。 その後は在学生が3人登壇し、自らが感じるOSIPPの魅力を語った。国際性・学際性を兼ね備えたOSIPPであるからこそ得られる視点や学びがあることを紹介したうえ、教員と学生の距離が近いこともOSIPPの魅力である、と語っていた。 教員からの一連の説明が終了したあとは、法学系の教員である大久保邦彦教授も加わって質疑応答の時間が設けられた。得られる学位や卒業後の国際機関への就職についてなど、様々な質問が会場やオンラインのチャット機能を通じて寄せられた。また、対面会場では説明会終了後も在学生や教員に個別の質問をしている様子も見られた。 教員からの丁寧な説明や在学生も対応した質疑応答によって、参加者一人ひとりがOSIPPでの充実した学びと未来への一歩を体感できたのではないだろうか。 (OSIPP博士前期課程 辻本篤輝)
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2023年10月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の10月の研究業績をご紹介します。 ・赤井伸郎 先生・二杉健斗 先生 赤井伸郎(その他の記事)「地域社会の「スポンジ化」防げ」『十字路』日本経済新聞(2023年10月26日付夕刊)http://akainobuo.starfree.jp/jyu-ji-ro.html 概要:全国で日本人の人口が減少している。スポンジ化しているため、実感がわきにくいが、ひとつの県が毎年なくなるほどのペースである。地域の社会課題に対応していくためには、地域コミュニティーの維持が欠かせない。地域を圧縮して人口密度、交流密度を挙げていくことが望ましい。 Kento NISUGI(Discussion Paper)“Piercing the ‘National’ Veil of State-Backed Investors in ICSID Arbitration: Beyond Broches Test and ARSIWA” DP-2023-E-003(24 October, 2023)https://www.osipp.osaka-u.ac.jp/archives/DP/2023/DP2023E003.pdf Abstract:Amidst the rising influence of State-owned enterprises and sovereign wealth funds, the eligibility of State-backed investors to claim standing as a claimant before an ICSID tribunal emerges as a significant point of contention. The established ‘Broches test’ suggests that State-ownership per se does not disqualify an entity from being a ‘national’ under Article 25 of the ICSID Convention. However, the ambiguities inherent in its content and legal authority have yielded varied interpretations. A newer perspective suggests relying on attribution standards reflected in the Articles on Responsibility of States for Internationally Wrongful Act (ARSIWA) for guidance. This article examines critically these prevalent approaches and obstacles to the transplantation of ARSIWA’s attribution rules to this specific context. Instead, it proposes a method for piercing the ‘national’ veil of State-backed investors in accordance with the general principle of law of abuse of legal personality and process. This proposed framework strikes a proper balance between safeguarding the integrity of the ICSID system and ensuring State-backed investors’ access to ICSID. Moreover, this article paves the way for future tribunals by drawing inspiration from the parallel practice of the European Court of Human Rights.
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【書評】松林哲也著『何が投票率を高めるのか』

有斐閣、2023年8月発行https://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641149472   淺野良成(関西大学法学部助教) 気がつけば、投票率の低下が問題視されてから久しい。選挙の直前に、「まずは自分なりに考えて一票を投じよう」「一人ひとりが主権者としての自覚を持とう」といった啓発メッセージを目にすることも当たり前になっている。しかし、そうしたメッセージにどれほど意味があるのだろうか?投票率が上がらないのは、主権者としての自覚が人々に足りないといった気持ちの問題なのだろうか? 本書は、投票率を向上させるために何が出来るのかについて、具体的なエビデンスに基づいて論じた本である。以下ではまず、本書の特徴を紹介しつつ、評者が思うおすすめの読み方をいくつか提案したい。その上で、本書から私たちが何を学べるのか、もとい評者が何を学んだのかを述べていく。 本書をどのように読むか? 本書は、投票率が低下した現状や本全体の概要を説明した第1章、投票率を左右する要因を検証した第2章から第7章、投票率に関するデータの取り方を解説した第8章、投票率の向上/低下がもたらす政策的帰結を述べた第9章で構成されている。このうち第2章から第7章は、投票率を左右しそうな条件(筆者の表現では環境要因)を膨大なデータを駆使して一つずつ検証している。 第2章から第7章の分析はそれぞれ独立しているため、関心のある箇所から読み進めても問題ない。本書に興味を持つ人の中には、実際に選挙の現場に携わっている実務家も多くおられるだろう。実務に携わる人は、第1章に目を通した上で、ご自身の経験と照らして読み進められそうな章に飛んでみて欲しい。期日前投票所の増設に関わった経験があれば第2章、選挙啓発運動を担当していれば第4章といった具合だ。また、政治参加に関心のある学生は、目次のタイトルから面白そうだと思った章をまずは読んでみよう。 本書の分析結果はいずれも、データに基づいて「〇〇という条件の下では投票率が何%ほど上がる」といった数字で表されている。このように聞くと、数学が苦手な自分について行けるだろうかと不安に思う人もいるかもしれない。しかし筆者は、最先端の高度な統計手法を用いながらも、その高度さを良い意味で読者に感じさせない工夫を随所に凝らしている。 例えば、統計モデルの詳細はコラムで補足し、本文を読み進める上では、数式が分からなくても支障がないように配慮されている。また、グラフに付けられたタイトルが秀逸である。「図5-8 選挙制度改革後に地方と都市の投票格差が縮小した」といったように、そのグラフから何を読み取れるかがタイトルに要約されている。統計学の知識に不安を持つ人や学術書に読み慣れていない人は、グラフを先に見て筆者の主張をイメージしてから、本文に戻っても良いかもしれない。 本書から何を学べるか? それでは、本書の知見から私たちはどのような示唆を得られるだろうか。本書の面白い点として、投票率を向上させる効果が見られなかった分析結果も載せていることを挙げられる。第4章で筆者は、大阪府豊中市で行ったフィールド実験に基づき、投票を呼び掛けるメッセージを工夫しても投票率が変化しなかったことを示している。実施された政策の効果を知りたい実務家にせよ、卒業論文や学位論文を書いている学生にせよ、「有意な効果は見られませんでした」といった報告を避けたがる人が多い。しかし、客観的な根拠に基づいて政策を設計するためには、その政策に効果があったかどうかを把握することが不可欠である。本書に示された筆者の誠実な姿勢をぜひ多くの方に見習っていただきたい。 また、私たちが今後さらに取り組むべき課題のヒントも筆者は数多く提示している。例えば、女性議員の増加が投票率の向上に繋がることを示した第7章は、東京都23区という特殊な地域を分析対象にしており、他の地域でも検証が必要なことを筆者自身が認めている。政治参加に興味はあるが研究の進め方に悩んでいるという人は、本書がやり残した課題にチャレンジしてみると道が開けるかもしれない。 ちなみに評者は、選挙制度改革によって衆院選における地方部と都市部の投票格差が縮小したという第5章の分析を見て、選挙制度改革の効果が波及して参院選や地方議会選でも地方部の投票意欲が下がっていないかが気になった。本書の主張を踏まえて、評者も新しい研究に取り組んでみたいと思う。 本書を読み終えると、「環境を変えてもたった数%しか投票率が変わらないのか」と感じる人もいれば、「環境を少し変えるだけでも投票率は変わるのか」と感じる人もいるだろう。しかし、効果量に対する評価に違いがあっても、エビデンスを踏まえて議論を交わせれば、低投票率の現状をただ嘆くよりはずっと前進している。そうした議論の土台となるエビデンスを実直に積み上げてこられた筆者には、改めて心からの敬意を表したい。
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小原美紀教授「研究の楽しさを共感したい」

シリーズ「研究紹介」では、OSIPPに在籍する先生方の最新の研究を紹介しています。今回は、労働経済学および応用計量経済学が専門の小原美紀教授にインタビューしました。(写真右:小原先生・左:筆者、小原先生の研究室にて) 最近はどのようなテーマに関心を持たれていますか? 企業と求職者のジョブマッチングにおいて、企業内の多様性が高まると、どういった良い効果があるのかということに関心があります。企業が多様性を重視しているとアピールすることで、その企業に関心を持つ求職者が増え、結果的に良いマッチングを実現できると考えられるからです。 多様性の例として、例えば社内の女性比率がありますよね。社内の女性比率が高いことをアピールすれば、より多くの女性の求職者に興味を持ってもらうことができます。さらに、そうした先進的な取り組みを行える企業である、というメッセージにもなります。結果的に、男性の求職者からの応募も増えるかも知れません。 あるいは、社内の障がい者比率や外国人比率はどうでしょうか。社内で共に仕事をするという観点から言えば、障がい者・外国人ともに何らかの配慮が必要であるという点で共通しています。健常な社員、日本人の社員が彼ら・彼女らに配慮することが、社員全員にとって望ましい職場環境の実現につながるということは考えられないでしょうか。 実際にジョブマッチングの現場では、多様性が見られる企業ほど、求職者が関心を持っていそうだと感じています。毎年2月に、シンガポールでASEAN諸国の外国籍人材と日本のグローバル企業をつなぐキャリアフェアが開催されています。会場には企業ごとにブースが設けてあって、各企業の担当者が4,5人のグループでリクルーターとして並んで対応します。各企業とも、どんなリクルーターが並んでいるのかは全く違います。年配の男性が多数を占める企業があれば、全員若い女性が並んでいる企業もあります。各企業とも、リクルーターは時間交代制です。実際に確認をとりましたが、交代するとき、次にどのリクルーターが立つかは何らかの意図なく決められていました。 そこで、私たちは求職者が一番多く並ぶのは、どんな性別・年齢のリクルーターがブースに並んでいるときなのかを確認してみました(全部チェックしたんだよ!)。そうすると、ばらばらの組み合わせ、つまり男性もいれば女性もいて、年齢層もばらばらな企業が一番人気でした。だから、やっぱり多様性は求職者側から見ると大事なんじゃないかな、と感じました。 それは面白いですね。先生にとって、研究の魅力は何でしょうか?  時間や労力を費やして分析しても、有意な研究結果がでることは、ほとんどありません。あるいは、結果が出ても予想と真逆の結果だったりする。でも、そういう時こそ考えるチャンスです。それが楽しい。なぜこういう結果が出たのかという説明はいくらでも考えられます。 例えば、なぜこういう研究結果が出たのかを考えたときに、個人の規範(社会的に望ましいとされる、人々の態度や行動のこと。)が時代とともに変化したからと考えられるときがあります。ただ、「規範が変わったから」と説明するだけでは研究になりません。本当に変わったのか?規範や価値観のようなものが変化していなくても起こる結果ではないのか?と吟味する必要があります。そのために、まずは規範のようなものは時間が経っても大きく変わらないと仮定し、瞬時的に起きる環境変化のようなものが個人の行動を変えた可能性を探ってみる。規範のようなものはデータでは観測できないことが多いので、これらは時間がたっても変化しないと仮定した方が統計分析上扱いやすいという利点もあります。 しかし、このような仮定で検討してもどうしても説明できないことがある。その場合、次に考えるのは、この仮定で正しいか、規範や価値観の変化を取り入れないと説明できないのではないか、です。例えば、夫婦の価値観を考えてみましょう。結婚した頃は同じような価値観を共有していた。でもそれぞれが長い期間仕事をしていれば、職場で見聞きしたことや体験したことから、価値観が変わってくるかもしれません。あるいは近所づきあいを通して価値観を揺さぶられるとか。こうして見てみると、規範は時間がたっても変化しないと考えるのは無理があるのではないでしょうか。 このような仮定への違和感は、学部生時代に初めて経済学を習ったときから感じていました。「まずこれを仮定して…」という授業での説明に疑問があった。私がなぜみかんより、りんごを好んで消費するのか。その判断基準には私の“りんご愛”とか、価値観とかが入っているかもしれない。でも、そういうものはテキストで紹介されるモデルから捨象されています。 一方で、実際に論文を読んでみると、研究者たちは教科書通りのモデルを作っているわけではありませんでした。価値観が大事だと思う研究者は、それをモデルに組み込んで分析しています。そこが面白いと思った。ちなみに、私の大学院生時代の指導教官は、私がオフィスアワーで質問する“モデルへの違和感”を面白いと言ってくれました。そして「だったらその仮定を緩めて考えてみたらいい、そうしたら研究になるよ」と教えてくれました。 研究はもっと自由だということが伝わると良いですね。小原先生は学生に強く留学や大学院進学を勧める印象がありますが、その背景にある思いを教えてください。 本当のことを言えば、(私が指導する学生だけでなく)全ての学生に留学して欲しいし、全ての学生に大学院に進学して欲しい。特に大阪大学の学生はそうだけど、みんな計画的に生きすぎていると思います。4年間で学部を終えて次は就職、という風に。きっと、これまで小さなステップを自分で設けてクリアするという事を何度も繰り返してきたからだと思います。でも、大学以降の勉強は、横のつながりが大事です。同じ分野の中で繰り返す(例えば、高校の勉強は数学なら数学、英語なら英語というように一つの分野の中で繰り返し練習する)というより、分野を横断して広い視野で見ていかないといけない。だから、もっと寄り道していいと思います。  小原先生、ありがとうございました。 先生からは、もっと大人になりなさい、もっと柔軟に生きなさい、ということを学部生の時から聞かされていました。今回のインタビューでも、試験が難しいならその年はできるところまでやってみて、その代わり来年もっと理解を深めて習得してやろうというくらいの度胸があっていい、というお話を聞きました。私にも型にはまった「良い子」たろうとする一面があります。学生生活はそれを崩し、柔軟性を身につける良い時間なんだなと感じました。 (OSIPP博士前期課程 久保知生)
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2023年8月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の8月の研究業績をご紹介します。 ・松林哲也 先生 ・髙田陽奈子 先生・片桐梓 先生  ・二羽秀和 先生・室岡健志 先生 松林哲也(著書)『何が投票率を高めるのか』有斐閣(2023年8月)https://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641149472 概要:期日前投票期間や投票所の数、選挙啓発活動や議員定数の不均衡などの投票環境条件に注目し、それらがどのように投票率に影響を与えているのかを実証的に論じており、日本の有権者を対象とした投票率についての最新の研究成果をわかりやすく解説した。 Hinako Takata(論文)“Separation of Powers in a Globalized Democratic Society: Theorizing the Human Rights Treaty Organs’ Interactions with Various State Organs,” Global Constitutionalism (2023) 1–30. (査読有)  https://doi.org/10.1017/S2045381723000114※この論文は、大阪大学の助成により、オープンアクセスとして公開されています。 Abstract:As part of their continuous effort to enhance the effectiveness and democratic legitimacy of human rights treaties, human rights treaty organs have increasingly fostered a direct relationship with various state organs, thereby penetrating the ‘states’ that traditionally have been treated as monolithic legal entities. Treaty organs review the decision-making process of each type of state organ – courts, parliaments and administrative organs – and make remedial orders that are substantially addressed to specific state organs. Such phenomena go hand in hand with the relativization of the distinction between the legal spheres in which human rights treaty organs and state organs operate. This is the first study to address such phenomena as a totality. It constructs the ‘separation of powers in a globalized democratic society’ theory, thereby proposing how each type of state organ and the treaty organs should interact under human rights treaties. Its findings contribute, first, to the harmonious achievement of the effectiveness and democratic legitimacy of human rights treaties; second, to the reform of the classical paradigm of international law, in which monolithic states are the only relevant legal entities; and third, to the long-standing debates on the relationship between international and national laws from a new angle. Azusa Katagiri(論文)”Revisiting the puzzle of endogenous nuclear proliferation” Journal of Peace Research(査読有) https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/00223433231177727 Abstract:Nuclear proliferation literature typically differentiates supply-side and demand-side factors influencing the spread of nuclear weapons. These distinct approaches to the proliferation puzzle raise the following empirical questions: Does nuclear supply stimulate states’ demand for nuclear weapons? Conversely, does the demand for nuclear weapons really facilitate the acquisition of nuclear supply? If such endogeneity exists between the demand-side and supply-side determinants, how would it cause empirical bias in the estimation of their effects on nuclear proliferation? This article aims to unpack endogenous mechanisms of nuclear demand and nuclear supply over the course of nuclear proliferation. In particular, it examines two potential sources of endogeneity: (1) simultaneous interactions between states’ nuclear development decisions and nuclear technological capability and (2) selection bias in nuclear development. To address each source of endogeneity, simultaneous equation models and the duration models with selection are estimated, respectively. Contrary to what recent supply-side literature suggests, the empirical analyses reveal that states’ nuclear demand is primarily driven by external security threats instead of their existing nuclear technology, and that their successful acquisition of nuclear technology mainly follows as the result of nuclear development efforts but does not necessarily depend on individual supply-side factors. This article addresses the typical inference issues in nuclear proliferation research and contributes to our synthetic understanding of proliferation mechanisms. 二羽秀和(その他の記事)「長期国債買い入れにはどのような効果があるのか」『週刊東洋経済』東洋経済新報社2023年8/26第7131号 概要:日本銀行は、2013年4月から、2%インフレ目標を達成するために量的・質的金融緩和政策を実施している。この間、日本銀行は、日銀当座預金と引き換えに大量の長期国債を購入してきた。本稿では、中央銀行の長期国債買入れの効果について、マクロ経済理論の観点から検討する。とくに、物価水準の財政理論に基づいて議論する。同理論は、貨幣経済理論の1つであり、政府債務の持続可能性の問題がインフレ率の決定に及ぼす影響について考察するものである。 Takeshi Murooka coauthored with Yuichi Yamamoto(Discussion Paper)“Higher-Order Misspecification and Equilibrium Stability” DP-2023-E-002 (August 2, 2023) https://www.osipp.osaka-u.ac.jp/archives/DP/2023/DP2023E002.pdf Abstract:This paper considers a Bayesian learning problem where strategic players jointly learn an unknown economic state, and show that one’s higher-order misspecification (i.e., one’s misspecification about the opponent’s misspecification) can have a significant impact on the equilibrium outcome. We consider a simple environmental problem where players’ production, as well as an unknown state, affects the quality of the environment. Crucially, we assume that one of the players is unrealistically optimistic about the quality of the environment. When this optimism is common knowledge, the equilibrium outcome is continuous in the amount of optimism, and hence small optimism leads to approximately correct learning of the state. In contrast, when the optimism is not common knowledge and each player is unaware of the opponent having a different view about the world, the equilibrium outcome is discontinuous, and even vanishingly small optimism leads to completely incorrect learning. We then analyze a general Bayesian learning model and discuss when such discontinuity arises.
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【新刊:松林哲也教授】松林哲也 著『何が投票率を高めるのか = What, if anything, can be done to increase voter turnout?』

OSIPPライブラリーでは、教員の研究業績を収集した「スタッフコーナー」を設置しています。このたび、スタッフコーナーへ受入した松林先生の新刊をご紹介いたします。 松林哲也先生松林哲也 著『何が投票率を高めるのか = What, if anything, can be done to increase voter turnout?』(有斐閣、2023年) ⇒ 大阪大学所蔵検索 書誌詳細画面はこちら (OSIPPライブラリー)
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2023年7月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の7月の研究業績をご紹介します。 ・石瀬寛和 先生  ・大久保邦彦 先生・和仁健太郎 先生 ・二杉健斗 先生 石瀬寛和(著書)「課題と手法の限界の狭間で」大塚啓二郎・黒崎卓・澤田康幸・園部哲史 編著『次世代の実証経済学』日本評論社(2023年6月) 概要:信頼性革命を中心とした実証経済学における近年の進化を概観するとともに、その進化によってもたらされた研究の発展や課題について考察する。その上で、新しい分析手法を取り入れつつ、実証経済学をさらに稔りある学問にするにはどうしたらよいかについて、幅広く議論する。実証経済学全体に関する概観と政策応用についての章に続き、各論の章では開発、労働、貿易など諸分野における実証分析の進化と利点、問題点、その打開策について議論する。全ての章は各執筆者による本論に続いて、討論者によるコメントと、本論執筆者によるリプライという3本立てで構成される。 大久保邦彦(論文)「「法の内的体系」鳥瞰図」『阪大法学』73巻2号(2023年7月)概要:本稿は、立法や裁判などの諸決定間の整合性を追求し、法の一貫性を確保するために、「法の内的体系」、特に「私法の内的体系」を描き出すことを目的とするものです。わが国では民法学の泰斗である我妻栄や星野英一がこのテーマに取り組みましたが、「抽象的命題」と「個別事件における具体的価値判断」との架橋に失敗しました。そこで、本稿では、この問題につき蓄積のあるドイツ法圏の学説を参照して、この課題に取り組んでいます。その結論は以下のとおりです。「法の内的体系」の頂点には、正義・法的安定性・合目的性という3つの法理念があり、法理念のすぐ下の原理層には、すべての法ルール・事態に作用する基底的法原則がある。そして、これらの法理念・基底的法原則は、不法行為法・契約法・不当利得法といった一定の法領域において、より具体化された法原理として現われることがある(価値のヒエラルヒア)。しかし他方で、法原理は衝突し合うことがあり、その調整が要請される(価値のコンフリクト)。そして、法原理をどのように調整したかは、法制度レベルでは基本思想として、法ルールレベルでは立法趣旨として示される(図のようなイメージです)。 和仁健太郎(論文)「ロシア・ウクライナ戦争から考える中立法の現在―交戦国への軍事援助の国際法的評価―」有斐閣Onlineロージャーナル(2023年7月)https://yuhikaku.com/articles/-/12885 概要:X国(例:ロシア)とY国(例:ウクライナ)との間に国際的武力紛争が存在する場合において、Z国(第三国)がY国に軍事援助を与えることは、国際法の観点からどのように評価されるか。この問いは、①武力行使に当たるか、②中立法の観点からどう評価されるか、③Z国がこの国際的武力紛争の当事国になるか、という3つの問いに分割できる。本稿は、これらの問い(3つの相互関係を含む)について検討する。 二杉健斗(判例研究)「国家間申立の許容性―スロヴェニア対クロアチア決定」『人権判例報』6号(2023年)96-101頁(査読有) 概要:欧州人権裁判所(ECtHR)のスロヴェニア対クロアチア決定(2020年11月18日)に関する判例評釈。個人申立手続で非政府組織要件(欧州人権条約34条)を否定されたスロヴェニアの国有リュブリャナ銀行(Ljubljanska Banka)のためにスロヴェニアが行った国家間申立の許容性について、欧州人権条約、裁判所の先例および他の条約等との関連で分析を行った。 ※論文等に関しては、査読に関する記載のないものは査読のない論文です。
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【書評】室岡健志 著『行動経済学』

日本評論社、2023年3月発行https://www.nippyo.co.jp/shop/book/9019.html   森田公之(専修大学経済学部 専任講師) 本書は簡潔にいうと名著である.というと,褒めすぎていてうさんくさい,著者に忖度しているのか,と感じた人もいると思うので,評者と著者の関係をまず明らかにする.評者は著者と共同研究(本書7.4節で紹介されている)をしたことがあり,研究者として著者は先輩である.今でも著者に会うと緊張するが,それは坊主頭のストイックな見た目と尊敬からくる畏怖が原因であり,本書の評価には全く関係ない.むしろ真っ当な批判をすれば喜んでくれるような人だ.以下では,本書の貢献や特徴を述べていく. 本書の貢献 行動経済学の一般的な人気を反映し,関連書籍は既に多数刊行されている.しかし,その多くはウケそうな話を紹介するような一般書であり,体系的に研究を整理する意図はない.そのため,一般書を読んで行動経済学に関心を持った人が,いざ自身の研究に取り入れようとすると,一般書と学術研究の間に大きな隔たりがあることに気づくと思う. 本書の貢献は,多くのトピックに対して,代表的なモデルを解説することと,関連する実験・実証結果そして豊富な応用を紹介することで,この隔たりを埋める点にある.これは,研究に取組む予定がなくても,行動経済学を学術的に正確に知りたい人にも有用だろう.大学や大学院の講義を受講することでこの隔たりを埋められる科目もあるが,行動経済学は教えられる人(研究してる人)が少ないため,多くの大学では講義が未だ開講されていないと思う(OSIPPでは著者が開講している).このような現状を踏まえると,本書の貢献は大きいと言える. 本書の特徴 「はしがき」に書いてある通り,本書の特徴は,現代の行動経済学の全体像を体系的にまとめている点にある.目次を見てもそれを見てとれるだろう.ここでは,読み進めていくと気づく本書の特徴をもう一つ紹介したい. 人々のある行動が,行動経済学のある理論によって説明できた場合,なるほど人々の意思決定の背後にはそんなロジックがあるのかと素直に納得する人もいれば,行動経済学を持ち出さなくても合理的なモデル(伝統的なモデル)を使っても同じように説明できるでしょと思う人もいるだろう.後者の経済学の考え方が染み付いているような人が抱く疑問に答えることは重要であり,行動経済学の研究に取り組む際には,この疑問と向き合わなければならない.本書では,伝統的なモデルの紹介をした後,バイアスがある場合とない場合を比較し,結果が質的に異なることを紹介することで後者の疑問に答える構成になっている.伝統的なミクロ経済理論の拡張・発展としての行動経済学を解説することを目的とした本書の特徴の一つと言える. 例えば,第2章では,指数割引を紹介した後,近視眼性を組み入れたモデルを紹介し,コミットメントの価値が異なることを解説している.第7章の合理的期待に基づく参照点依存のモデルを応用した作業割当の話では,作業割当を受ける人が参照点依存型の効用関数を持つ場合と,リスク中立または回避型の効用関数を持つ場合とで,望ましい作業割当が異なることを説明している. 誰にオススメか? 本書は,行動経済学に関心があり,学部レベルのミクロ経済学を学んだことのある全ての学生,大学教員,そして実務家に対してオススメできる.行動経済学に関心はあるが,学部レベルのミクロ経済学を既習でない場合,本書を読み進めるのが困難かもしれない.その場合,もし行動経済学を自身の研究などに活用したいと思うならば,本書を読むためにどんな知識が欠けているかを確認し,それらの学習をした上で,本書に再度挑戦して欲しい.研究への架け橋という点において,本書はそのくらい類書にない価値がある. 著者と読者の今後の努力に期待 著者は「本書が,行動経済学と伝統的な経済学の各分野との,日本における交流・統合に少しでも寄与できることを心から願う(p.10)」と述べている.評者は,このような交流や統合を促すために,行動経済学に関する研究会を定期的に開催してくれることを著者に期待している.また,本書をきっかけに行動経済学の研究を始めた研究者や実務家(読者)たちには,その研究会で自身の研究を発表することを期待している.著者と読者たちが交流できる場を設けることで,著者が望むような日本における交流・統合は現実的に促進されるだろう.そのような研究会が開催されると,大学院生などの若手が最先端の研究にふれやすくなることで,行動経済学の研究の裾野が広がり,長期的により大きな教育効果も生むだろう.本書はOSIPPで著者が開講している講義にも基づいているが,他大学の研究者も参加できるこの講義をきっかけに行動経済学を研究し始めた研究者も出てきており,実際に交流の場を設ける効果はあると思う.この書評の冒頭で,著者に会うと緊張すると述べたが,むしろ優しくて面倒見のいい人だと感じるはずなので安心して研究会に参加して欲しい.
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【新刊:石瀬寛和准教授】大塚啓二郎 [ほか] 編著『次世代の実証経済学』

OSIPPライブラリーでは、教員の研究業績を収集した「スタッフコーナー」を設置しています。このたび、スタッフコーナーへ受入した石瀬先生の新刊をご紹介いたします。 石瀬寛和先生大塚啓二郎 [ほか] 編著『次世代の実証経済学』(日本評論社、2023年) ⇒ 大阪大学所蔵検索 書誌詳細画面はこちら (OSIPPライブラリー)
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