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5月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の5月の研究業績をご紹介します。 ・前川和歌子 先生・二杉健斗 先生 Wakako Maekawa(論文) “Effects of the Deployment and Departure of UN Peacekeeping Operations on Foreign Direct Investment”, Journal of International Development, First published: 29 April 2025(査読あり)DOI:https://doi.org/10.1002/jid.4006 Abstract: Do United Nations peacekeeping operations (UNPKOs) foster foreign direct investment (FDI) in host countries over time? I argue that the deployment of UNPKOs increases FDI by signaling credibility in peace and the rule of law. However, once peacekeepers depart, uncertainty regarding political stability, due to premature withdrawal and unemployment shocks deters investment in the short term. Over time, however, FDI increases as investors recognize the country’s growing resilience, shaped by the legacy of UNPKOs. Empirical analyses test these hypotheses, demonstrating that while the departure of peacekeepers initially slows investment, it ultimately accelerates FDI inflows in the long run. Wakako Maekawa (論文) Barış Arı, Theodora-Ismene Gizelis, and Wakako Maekawa “How United Nations peace operations can help overcome perils to post-conflict elections”, Journal of Peace Research, First published online May 9, 2025(査読あり)https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/00223433251322287 Abstract: Agreeing to elections is generally seen as a key way to settle armed conflict and prevent recurrent violence. However, the transition from violent conflict to nonviolent electoral competition can be fraught with many challenges. Stable electoral competition requires trust in institutions, but trust often takes a long time to develop and is often lacking in post-conflict elections. We argue that UN peacebuilding operations can play an indispensable role in the development of stable electoral institutions through three interrelated ways: reducing political and electoral violence, supporting democratic attitudes and norms of peaceful coexistence, and reinforcing institutional capacity and the rule of law. Using a new measure of the expected quality of elections in post-conflict countries between 1946 and 2012, we show that UN peace missions are associated with better elections and a greater likelihood of successful transitions to electoral competition compared to post-conflict countries without UN involvement. We also find larger differences when the UN is involved in establishing electoral institutions, especially when there is no or limited prior electoral competition, indicating that the UN is effective at assisting the democratization processes in difficult contexts. 二杉健斗(論文) 「メガコンステレーション衛星の光害問題をめぐる国際法の意義と課題 」空法65号(2025年)35-56頁 概要:本稿は、メガコンステレーション衛星による光害問題への対処における国際法の意義と課題を考察する。衛星光害は、天文学的利益のみならず、地上における文化多様性や先住民族の権利とも関係し、宇宙活動国の利益を中心に形成されてきたとされる従来の国際宇宙法理解を問い直す契機となり得る。本稿は、宇宙条約の諸原則を分析した上で、国際海洋法、国際環境法および国際人権法との連関を論じ、規範の補完可能性を検討する。また併せて、天文学界の国際的な働きかけと米国における規制動向を取り上げ、持続可能な宇宙利用実現に向けた国際法形成の萌芽的動態を描写する。今後、国連宇宙平和利用委員会での議論の進展を見守る必要があるが、その際には、国際法規範の特定と適用方法の検討、異なる権利利益間の調整、先住民族や市民社会の意見反映のあり方など、広範な課題に対して多分野的な連携による対応が求められることを指摘した。 二杉健斗(解説) 「ロシア凍結資産をウクライナ支援に使うことはできるのか」国際法学会エキスパートコメントNo. 2025-2(2025年)https://jsil.jp/wp-content/uploads/2025/04/expert2025_2.pdf 概要:ロシアのウクライナ侵攻の長期化を受けて、各国で凍結されたロシア資産をウクライナ支援に充てる構想が進んでいる。本エキスパートコメントは、この方策を実施する上で障害となり得る国際法上の問題を分析し解説している。一方で、資産没収には国家免除や外国人財産の保護など国際法上の制約があり、対抗措置や集団的自衛権による違法性阻却の可否も争いがある。他方、凍結資産の運用益の活用は合法に行い得る余地があり、EUやG7を中心に制度構築が進められている。もっとも、ロシア側はこれに反発しており、報復や訴訟に発展する可能性もあり、今後の動きを注視する必要がある。
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第15代研究科長就任 大槻恒裕教授インタビュー

2025年4月よりOSIPP第15代研究科長に就任した大槻恒裕先生にインタビューを行いました。 先生が考えられているOSIPPの特徴や強みを教えてください。 OSIPPの特徴は、活気あふれる学びの環境です。まず、若手教員を積極的に採用しており、研究科に新しい風を吹き込んでいます。次に、留学生の入学も支援してきており、日本人学生と留学生が交流することで双方の国際性を伸ばすことができる場になっています。また、OSIPPの強みは、理論と実践を結びつけ、実際の政策に役立つ人材を育てていることです。最新の研究を通じて現実の問題に取り組み、みんなで必要な解決策を見つけることで、未来を切り拓く力を育んでいます。 2025(R7)年度以降に入学した博士後期課程の学生は、経済学または法学の学位も取得できるようになると伺いました。この制度変更について詳しく教えてください。  OSIPPでは、本年度から博士後期課程の学生が「博士(法学)」や「博士(経済学)」の学位を取得できるようになります。この制度変更は、公共政策を学ぶ学生にとって大きなメリットがあります。まず、専門性が明確になることが重要です。新しい学位が加わることで、法学や経済学を専門とする学生は、就職の際や将来のキャリアにおいて専門を明確に示すことができるようになります。OSIPPの教員には法学や経済学の学位を授与することができる教員がそろっており、この制度変更が実現しました。次に、学生にとっての選択肢が広がる点も魅力です。今までの国際公共政策の学位に加えて、自分の関心やキャリアに合った専門分野を選べるため、学びの幅が広がります。異なるバックグラウンドを持つ学生が自分の専門を深めるチャンスが増え、多様な視点で政策に取り組むことができるようになります。多数の複雑な問題が存在する現在、横断的・学際的な学びを持つ人が求められる一方で、その問題を分析して答えを導き出すには高い専門性が必要です。OSIPPはその両方を兼ね備えた人材を育てられる環境を提供しています。専門性を客観的に示せる学位を取得できるようになることで、OSIPPで育った学生が客観的な指標とともにより社会で活躍できるようになることを期待します。 研究科長としてどのようなことに取り組まれる予定なのかを教えてください。 国際的な視野を育むため、海外インターンシップや海外でのフィールドワークへの支援を強化し、後期課程の学生にはさらに国内学での学会発表や国際会議への参加を支援します。また、人文社会科学系オナー大学院プログラムにおいて、2026年に社会科学系のリーダー育成プログラムが新設されますので、プログラムを通じて政策の分野で社会のリーダーとなり得る人材を育てていきたいと思います。さらに、国連機関との連携を強化し、学生がグローバルな課題に取り組む機会を増やすことにより、学生が国際的な舞台で活躍できる人材として成長することを目指します。昨年、OSIPP創設30周年を記念して未来基金を設立しました。現役教員、退職した教員および卒業生の方々を中心に支援をいただく機会を増やし、現役学生への支援を拡充できるように努めていきます。 OSIPPに関心を持っている方や在校生に対してメッセージをお願いします。 OSIPPでの学びは、皆さんの未来を切り拓く貴重な経験です。若手教員の熱意と、多様な文化を持つ留学生との交流が、活気あふれる学びの場を作り出しています。講義の約半数が英語で行われる中で、世界的な視点を養い、実践的な政策立案に挑む力を身につけてください。 OSIPPは法学・政治学・経済学の専任教員を有し、それぞれの専門性を強めることが可能である国内では数少ない学びの場です。その一方で、専門が異なる人との交流の場でもあることから学際性を養うことができます。共に新しい知を紡ぎ、より良い未来を創り上げていきましょう。皆さんの成長を心から楽しみにしています。 (OSIPP博士前期課程 奥野愛理)
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教員紹介:久保田雅則 助教

2025年4月1日付で国際公共政策研究科に助教として着任した久保田雅則先生にインタビューを行いました。 ・これまでのご経歴を教えていただけますか?私は、修士、博士ともにOSIPPで取得し、2019年3月の博士後期課程修了後も特任教員としてOSIPPで研究教育活動に従事してまいりました。また、その間、関西学院大学、立命館大学、大阪経済法科大学で非常勤講師に従事してまいりました。 ・研究者を目指したきっかけのようなものはありますか? 核兵器の問題に取り組みたいという思いから、学問の力でこの課題を解決したいと考え、研究者を志すようになりました。長崎出身であることに加え、核廃絶市民集会に参加したことを通じて、核の問題が長崎だけにとどまらず、世界全体に関わる深刻な課題であることを認識し、より深い関心を抱くようになりました。 ・これまでの研究について紹介していただけますか? 博士前期課程では非核兵器地帯について研究していました。非核兵器地帯とは、特定の地域において、域内国による核兵器の生産、取得、保有及び管理を禁止することによって作り出される「核兵器のない地帯」 で、軍縮の取り組みの一つです。 博士後期課程では核不拡散条約について研究しました。世界全体の問題として国際規範と国際制度の観点から研究を進め、「国際規範としての核不拡散という規範がどのように条約に変化するのか」を理論構築し、実証していました。核兵器、大量破壊兵器問題に関する研究は今も継続しています。それに加えて、指導教員だった先生と研究室の先輩とともに、政治変動の共同研究を進めています。 ・現在の研究に取り組むことになったきっかけを教えてください 共同研究でこれまで自分にはなかった研究手法を学んだことがきっかけです。それまで私は国際政治という枠組みで研究をしていましたが、博士後期課程修了後に、比較政治学の手法を学びました。私が扱うテーマには事例数が少なく、その定性的な研究に限界を感じていました。しかし、国際、国家レベルの分析だけでなく、国家の指導者の個人レベルでの分析方法があることを、共同研究を通じて知ることで、比較政治と国際政治を絡めた量的研究に興味を惹かれ、現在の研究に取り組むようになりました。 ・この研究の魅力や面白いところはどんなところですか(最新の動向など) 核兵器や大量破壊兵器の拡散問題について個人レベル(政治家や指導者)と国際レベル(条約などの各種取り決め)をつなげるところが面白いと思います。ある問いに対して当時の指導者のバックグラウンドや思想が結びついているのかどうか、というところにアプローチすることができます。 例えば、ある国で過去の政治指導者がその座を退いた後の末路が悲惨なものだった場合、そのあとの指導者は自身の末路が同様のものにならないように政治運営を行うかもしれません。このように指導者の個人的な理由によって、戦争をはじめとした国や世界に対して大きな影響を及ぼす出来事が決定されているという指摘があります。歴史研究の観点からは、政治指導者の個人的な経歴が国家間関係に影響を与えることを示す研究はよく行われていますが、一般化して計量的に研究されているものは、軍縮・不拡散研究ではあまりありません。このように比較政治と国際政治を架橋するような研究は新しく、面白いと考えています。 ・推薦する図書があれば教えて下さい ①日本軍縮学会編『軍縮問題入門[第5版]』東信堂、2025年。 私の講義の教科書としている本で、軍縮や核問題に関心を持ち始めた方への入門書になります。 ②Sagan, Scott Douglas, and Kenneth Neal Waltz. The spread of nuclear weapons: an enduring debate: with new chapters on Iran, Iraq, and North Korea, and on the prospects for global nuclear disarmament. WW Norton, 2013 .  核問題について2人の研究者が意見を議論している本です。核やその保有について、反対する視点からだけではなく、様々な観点から考えられます。物事について考えるとき、自分が持つ意見と同じような意見だけではなく、対立する意見にも耳を傾けることが重要です。その議論を経ることで、自分の意見の正当性を改めて考えることができます。 (OSIPP博士前期課程 奥野愛理) ****助教 久保田 雅則 研究テーマ:軍縮・不拡散専門分野:国際関係論、比較政治学位:博士(国際公共政策)〈代表的な業績〉「核不拡散規範の制度化―制度形成と変容の要因としての逸脱行為に着目して」『国際政治』第205号、2022年。『外交・安全保障政策から読む欧州統合』大阪大学出版会、2023年(共著)。Life after exile: Introducing a new dataset on post-exile fate. Conflict Management and Peace Science, 2024. (共著)
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4月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の4月の研究業績をご紹介します。 ・前川和歌子 先生 ・髙田陽奈子 先生・赤井伸郎 先生  ・中嶋啓雄 先生・山下拓朗 先生 Wakako Maekawa(論文) “Introducing new data on UN Special Political Mission Mandated Tasks (UNSPMMT)”, Journal of Peace Research, First published online March 28, 2025(査読あり)https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/00223433251317816 Abstract: Whereas United Nations Special Political Missions are established following UN Peacekeeping Operations or as substitute measures to enhance peace and security, studies have paid little attention to what United Nations Special Political Missions do and whether they are effective. The UN Special Political Mission Mandated Tasks Dataset provides new data on United Nations Special Political Mission-mandated tasks between 1993 and 2021. The dataset covers traditional and relatively new mandated tasks, such as those concerned with the enhancement of the rule of law and addressing climate change mitigation and counter-terrorism, respectively. To illustrate the usefulness of the data, this study investigates the effectiveness of the election-mandated task of United Nations Special Political Missions as an exit strategy of UN Peacekeeping Operations on democratisation. The results show that election-mandated tasks improve the quality of democracy. It helps unpack the mixed results of the UN’s effectiveness in enhancing democratisation in post-conflict countries, implying that its intervention matters through both peacekeeping and political mission mandates. This dataset helps researchers investigate the interactive effects of mandates and provides insights into the sequence of peacebuilding strategies. Wakako Maekawa (論文) Kana Inata &Wakako Maekawa “Do aid punishments work forever? Recipients’ incentives for partial democratization and timing of aid punishments after coups”, Democratization, Published online: 24 Apr 2025(査読有)DOI: https://doi.org/10.1080/13510347.2025.2493917 Abstract: Does the impact of aid punishments on recipient states’ democratization depend on their timing after a coup? In this study, we argue that to prompt donors to lift aid punishments, recipient governments improve multipartyism in elections to signal democratization without endangering their survival. However, prolonged punishment can weaken their motivation for such democratic reforms as these efforts need to be backed by the prospect of aid rewards. We test these arguments using the Organisation for Economic Co-operation and Development data from 1967 to 2016. We find that the effect of aid punishments on multipartyism diminishes as the time since the last coup increases. The results suggest that donor states can effectively promote partial democratization in coup-affected recipient states by strategically transitioning from aid punishments to rewards at an opportune moment after the coup. 髙田陽奈子(判例評釈) 「刑訴法を自由権規約に適合的に解釈し、通訳費用を被告人に負担させてはならないとした判決 [大阪高等裁判所令和6年9月3日判決] 」新・判例解説Watch36号(2025年)285-288頁(査読なし:招待)https://www.lawlibrary.jp/pdf/z18817009-00-090602557_tkc.pdf 概要:本判決は、原審が有罪となった中国人の被告人に対して通訳費用を負担させたことについて職権判断で検討し、刑訴法181条1号を、自由権規約14条3項(f)に適合的に解釈して、被告人に通訳費用を負担させてはならないと判示したものである。本評釈においては、刑事訴訟における通訳費用負担をめぐるこれまでの国内裁判例の展開について整理し、自由権規約14条3号(f)について国際法上の解釈手法を用いて解釈するとどうなるかについて詳説したうえで、自由権規約14条3項(f)の実施における本判決の意義について分析を加えた。 Nobuo Akai(著書) “Evidence-based policy making in Japan’s public expenditure: compatibility of fiscal health and investing for the future” Chapter 6, Reforming Capitalism, Going Digital and Green-Japan’s Approach, Edited By D. Hugh Whittaker, Yoshifumi Nakata Published March 27, 2025 by Routledge (2025年3月刊行)https://www.routledge.com/Reforming-Capitalism-Going-Digital-and-Green-Japans-Approach/WhittakerNakata/p/book/9781032986159?srsltid=AfmBOoqHShQmdrLu1zCYav3c86BQZbM9mkajMI3rqFG5rqIxFy4oGma7 概要:本稿では、日本におけるエビデンスに基づく政策立案(EBPM)の導入、特に岸田政権の「新しい資本主義のためのグランドデザイン」と「行動計画」の文脈に焦点を当てる。まず、日本におけるEBPMの導入と現状を概説する。EBPMは、主要業績指標(KPI)、政策評価、行政事業レビューの3つの柱から構成される。これらを評価し、米国および英国のEBPMと簡潔に比較する。次に、グランドデザインで提案されているグリーン変革のための投資と支出をEBPMの観点から評価し、潜在的な落とし穴を指摘するとともに、将来の日本における経済成長と持続可能性のための公共資源の賢明な活用を確保するために何をすべきかを考察する。これは、他国にとって参考となるであろう。 中嶋啓雄 (翻訳書) A・G・ホプキンズ(菅英輝、森丈夫、中嶋啓雄、上英明訳)『アメリカ帝国―――グローバル・ヒストリー』上・下、ミネルヴァ書房、2025年(原著:A. G. Hopkins, American Empire : A Global History, Princeton, N.J.: Princeton University Press, 2018)https://www.minervashobo.co.jp/book/b657466.htmlhttps://www.minervashobo.co.jp/book/b657467.html 概要:グローバリゼーションの進展とともに展開してきた合衆国の歴史、すなわち植民地から出発し、従属的独立国、国民国家、帝国を経て、脱帝国するまでの過程を描く。上巻は、イギリスへの従属から出発し、南北戦争を経て独立を達成、「島嶼帝国」を獲得し、やがて他国と同様に「帝国」として振舞うに至る過程。 合衆国が独立後もイギリスの「非公式帝国」の一部にとどまっていた時代、そして南北戦争を経て、近代国民国家として「真の独立」を達成する中、「島嶼帝国」を獲得し、西欧の他の帝国主義と同じように振舞う時期を扱う。下巻は近代帝国が絶頂期を経て、解体に向かう時期、存続の危機に直面しつつもいまだ帝国への野望を抱き続ける、その姿に迫る。近代帝国が絶頂期に達するとともに、解体に向かう時期を扱う。二つの世界大戦を経て、世界経済の構造変化、人権の重視、脱植民地化運動の拡大など、帝国存続の危機に直面しつつも帝国への野望を抱き続けるヘゲモニー国家として振舞うその姿に迫る。 赤井伸郎(その他の記事) 「EBPMに基づく法人税改革の検証と税制設計に向けて」 特集『 「わが国税制の現状と課題―令和時代の構造変化と税制のあり方―」の評価と検討』機関誌「税研」 240号  Vol.40 No.6 (2025年3月刊行)https://www.jtri.or.jp/books/detail.php?id=600 概要:法人税改革と税制の設計に関して、EBPMの視点から、試行分析を紹介するとともに、EBPMをより適切な法人税制の設計に活かすために必要なポイントをまとめている。 赤井伸郎(その他の記事) 「「臨時」の地方債、正常化を生かせ」『十字路』日本経済新聞(2025年4月10日付夕刊)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF257EQ0V20C25A3000000/?msockid=07cc35830fa26d800f6f21fb0e296c6d 概要:2025 年度予算では地方債の一つである臨時財政対策債(臨財債)の発行がゼロになる見込みだ。その名称からもわかるように、最初に発行された01年度には「臨時」の地方債と位置づけられたが、それ以来、およそ四半世紀にわたり発行が続いた。税収の伸びを背景に、ようやく役目を終えるかたちだ。臨財債は地方の財源不足をまかなうために発行されてきた。地方全体の借金と位置づけられているが、各地方自治体は将来の地方交付税を返済の原資と考えており、負担の認識は希薄だ。地方自治体は住民と行政サービスや街づくりの将来像を共有して、前例にとらわれずに、人口減少に合わせた歳出の効率化を進めないといけない。臨財債の発行がゼロになるという「正常化」が実現した今こそ、地方財政の持続可能性を高めることを考えないといけない。 山下拓朗(お知らせ) 2023年にTheoretical Economicsに発表した論文が同誌において、2023年のTop Viewed Articleの一つに選ばれました。 3月の研究業績でお知らせしたTop Cited Articleに引き続き、Top Viewed Articleにも認定されました。Theoretical Economicsは経済理論の分野において最も重要とされる学術雑誌のひとつであり、そこに掲載されることはその論文が非常に重要な研究業績であることを示しています。 “Optimal persuasion via bi-pooling”, Itai Arieli, Yakov Babichenko, Rann Smorodinsky, Takuro Yamashita, Theoretical Economics, Volume18, Issue1, First published: 21 January 2023https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.3982/TE4663?utm_source=sfmc&utm_medium=email&utm_campaign=807786_AT_Top_Viewed_Authors_Mar25
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山下教授の論文がTop Cited Article の一つに選ばれる

山下拓朗教授が、2023年にTheoretical Economicsに発表した論文“Optimal persuasion via bi-pooling”が、2023年中に同誌に発表された論文のなかで引用された回数がTOP10の一つだったと発表がありました。 “Optimal persuasion via bi-pooling“Itai Arieli, Yakov Babichenko, Rann Smorodinsky, Takuro YamashitaTheoretical Economics, Volume18, Issue1 First published: 21 January 2023 さらに、この論文はTop Viewed Articleにも選ばれています。 Theoretical Economicsは経済理論の分野において最も重要とされる学術雑誌のひとつであり、そこに掲載されることはその論文が非常に重要な研究業績であることを示しています。
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2025年3月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の3月の研究業績をご紹介します。 ・赤井伸郎 先生 ・二杉健斗 先生・石瀬寛和 先生 ・山下拓朗 先生 赤井伸郎(著書)赤井伸郎、上村敏之、亀田啓悟 編著『財政学・公共経済学の発展と展望』関西学院大学出版会(2025年2月刊行)http://www.kgup.jp/book/b658798.html 概要:関西で公共経済学・財政学を研究する研究者が集まって開催されている関西公共経済学研究会の20周年を記念して行われた記念講演会の講演録を編集した書籍である。講演では、日本を代表する研究者に、これまでの公共経済学・財政学の発展と、今後の展望について、各トピックごとに講演していただいた。この講演録は、若手研究者にとっても、今後の研究を考える上で役立つものであり、必読の書である。 二杉健斗(判例評釈)「投資協定仲裁判断例研究(174)ICSID条約廃棄後の仲裁申立てに関して仲裁管轄権が肯定された事例 」『JCAジャーナル』72巻3号(2025年3月)30-36頁 概要:Smurfit Holdings B.V. v. Bolivarian Republic of Venezuela(ICSID Case No. ARB/18/49)Final Award(2024年8月28日)の判例評釈である。本件は、ベネズエラが2012年にICSID条約を廃棄(脱退)してから6年が経過した後にオランダ・ベネズエラBITに基づき仲裁が申し立てられた事案である。仲裁廷(多数意見)は、ICSID条約72条により、BITのもとでベネズエラが行った仲裁申込みの効力がICSID条約の廃棄後も存続するとして、仲裁管轄を肯定した。本評釈は、多数意見の72条の解釈にはICSID条約とBITとの混同が見られ、必ずしも適切に根拠づけられていない点を批判的に指摘している。 石瀬寛和(その他の記事)「『ひのえうま』の出産 迷信気にかけぬ空気が大切」中國新聞(2025年3月12日)中國新聞デジタル版:https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/609893 石瀬寛和(その他の記事)「丙午うまれ、男女比の歪み抑制 堕胎と間引き戒めた浄土真宗」中外日報(2025年2月21日) 山下拓朗(お知らせ)山下教授の論文がWiley Top Cited Articleの一つに選ばれました。 山下拓朗教授が、2023年にTheoretical Economicsに発表した論文“Optimal persuasion via bi-pooling” (Theoretical Economics, January 2023, Volume18, Issue1)が、2023年中に同誌に発表された論文のなかで引用された回数がTOP10の一つだったと発表がありました。 Theoretical Economicsは経済理論の分野において最も重要とされる学術雑誌のひとつであり、そこに掲載されることはその論文が非常に重要な研究業績であることを示しています。 “Optimal persuasion via bi-pooling”, Itai Arieli, Yakov Babichenko, Rann Smorodinsky, Takuro Yamashita, Theoretical Economics, Volume18, Issue1, First published: 21 January 2023https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.3982/TE4663?utm_campaign=807449_AT_Top_Cited_Authors_Mar25&utm_medium=email&utm_source=sfmc
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退任挨拶- 中嶋啓雄 第14代OSIPP研究科長

2023年4月より2年間にわたり、国際公共政策研究科長を務めた 中嶋啓雄先生(OSIPP教授) からの研究科長退任のご挨拶です。 謹啓 春陽の候、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。さて 私儀 この度、3月31日をもちまして国際公共政策研究科長を退任いたします。2年間の在任中(2023年4月~2025年3月)、公私にわたり、一方ならぬご懇情を賜り篤く御礼申し上げます。 私が研究科長に着任した2023年4月は、新型コロナ感染症の分類が5類に移行する直前で、コロナ禍が収束に向かい、ようやく通常の生活が戻りつつありました。その後、国内のみならず海外での調査やインターンシップ、さらには交換留学等、学術交流が尻上がりにコロナ禍前のような活況を呈するようになった2年間であったように思います。その一方、戦争や紛争の継続、国内外の政治状況の流動化、過度な円安や物価高、法の支配の動揺等、解決が必ずしも容易ではない様々な問題も浮上して参りました。こうしたなかで、OSIPPの研究・教育がそれらの難題の解決に少しでも繋がることを祈念いたしまして、退任の挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。                          謹白 中嶋啓雄(2025年3月27日)
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【My Favorite】山下拓朗 教授「アガサ・クリスティーの小説」

【My Favorite】このシリーズでは、OSIPP教員の“推し”をご紹介します。 山下拓朗 教授「アガサ・クリスティーの小説」 私の推しは「アガサ・クリスティーの小説」です。記憶の端にクリスティーが登場するのは私自身のアメリカ留学時代、それは空港の入国審査の列に並んでいた時のことです。まったく進まない列、飛行機の中で思うように眠れず疲れ切った頭と体。この苦行を淡々とこなすための秘策が、クリスティーの小説でした。夏冬の長期休暇のたびに新しく買った文庫本は、私のパスポート・スタンプとともに増えていきました。 なぜ、クリスティーなのか。推理小説とはいえ、本格派のミステリーが好きな人には眉を顰められそうな要素もあります。現代の推理小説作品に比べれば、ディテールやコンテクストがすっきりとし過ぎているかもしれません。私も、かつては本格派や現代の作品たちにも手を出したことがありました。しかし、これらの作品は私には重すぎるのです!もちろん物理的な重さではなく、心理的な重さ、読者に要求されるコミットメントの大きさです。例えば、本格派と呼ばれる作品は、推理小説のパズル的な側面を重視しますので、それを楽しむには神経を研ぎ澄ましながら読み、かつ思考するという作業を求められます。また、現代の作品のディテールは、私をその世界にどっぷりと引き込み、読み終えるまで、ときに読み終えても、そこから離してくれません。ともに「読み応えのある本」のよい条件ですが、その分、重い。10時間超のフライトを終え、ほとんど眠れず、いままた入国審査を待つ長蛇の列の最後尾に立ったのです。こんなときに、読み応えのある重い本を…いやいや読みたくない!読みたくないでしょう! そうなのです。クリスティーはそこが、とてもほどよい加減なのです。心和やかに読める、そこに私は惹かれるのでしょう。私はクリスティーの小説たちを「牧歌的推理小説」と呼ぶことを提唱したいところです。魅力的なキャラクター、軽妙なセリフの応酬、トリックの絶妙な混み入り具合、こういう要素があってこそ、牧歌的推理小説は成立します。半分ぼけーっとしながら、でも面白く話の筋を追える。なるほど、そういうことだったのかと読み終えているのですが、少し時間が経つと、その内容についての記憶がなくなってるのです。そしてまたそのうちに読み返す。作品の数も多いので、次に同じ作品に戻ってくるのは早くても数年後。そのときにはすっかりその話の犯人とトリックを忘れて、また楽しく読めるのです。そうです、クリスティー作品の無限ループの完成です。 私自身、クリスティーの作品は何度も読み返しています。クリスティーのメインキャラクターを紹介すると、代表的なのはエルキュール・ポアロ、そしてジェーン・マープル。あとはトミーとタペンスという夫婦の作品と、一話限りのメインキャラクターたちです。ポアロ作品群の中での私のおすすめは「ポアロのクリスマス」、マープルでは「バートラム・ホテルにて」、いずれも牧歌度に応じた選出です。でも、読み返したくなる度合いで言うと「五匹の子豚」でしょうか。犯人もトリックもわかっていながら、ラストの犯人の表情を想像したいがために、何度も初めから読んでしまう作品です。妻のおすすめは「ナイルに死す」、長女のおすすめは「招かれざる客」だそうです。逆に初めての読者にはあまりおすすめしないものとしては、(どれも面白くて好きなのですが)「カーテン」「ねじれた家」「アクロイド殺し」あたりでしょうか。いずれも、ある程度牧歌的世界に慣れた後でのスパイスとして読んでいただくのがよいかと思います。 ある夕暮れ、雨音を微かに聞きながら、暖かい部屋で一人掛けソファに身を沈め、すでに何度となく読んだ作品のページをめくる。私は「ああそういえば、こういう展開だった…ところで今日は雨の中外出しなくてほんとに良かった」と心の中でつぶやきながら、カフェオレを啜る…なんていう贅沢な時間を過ごしてみたいですネ。でも、次にポアロを読むのは、結局また入国審査の列だったりして…。
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【新刊:赤井伸郎教授】赤井伸郎, 上村敏之, 亀田啓悟 編著『財政学・公共経済学の発展と展望』

OSIPPライブラリーでは、教員の研究業績を収集した「スタッフコーナー」を設置しています。このたび、スタッフコーナーへ受入した赤井先生の新刊をご紹介いたします。 赤井伸郎先生 赤井伸郎, 上村敏之, 亀田啓悟 編著『財政学・公共経済学の発展と展望』(関西学院大学出版会、2025年) ⇒ 大阪大学所蔵検索 書誌詳細画面はこちら (OSIPPライブラリー
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2025年2月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の2月の研究業績をご紹介します。 ・小原美紀 先生  ・山下拓朗 先生・大久保邦彦 先生 ・赤井伸郎 先生・二杉健斗 先生  ・中嶋啓雄 先生 Miki Kohara(論文)Miki Kohara and Mao Nakayama, “The impact of childcare on maternal employment,” Pacific Economic Review, December 2024, Vol.29, Issue 5, pp.542-566.(査読あり)https://doi.org/10.1111/1468-0106.12459 Abstract: This paper re‐examines the impact of childcare availability on maternal employment in Japan, focusing on the period when childcare centre availability increased dramatically due to government policies in the 2010s aimed at boosting women’s labour participation. We use data tracking mothers’ employment status after childbirth, merging administrative data on the availability of both standard and nonstandard childcare centres. This is linked to each respondent via location identifiers based on their residential city and the nearest train station. The findings first show that an increase in unlicensed/nonstandard daycare availability significantly raised the proportion of mothers who return to work by the time the child reaches the age of three, particularly in areas with limited access to licensed/standard centres. Secondly, the effects may vary depending on the services offered by the centres. The results suggest that nonstandard centres, often more conveniently located and offering varied services, better meet the needs of working mothers, leading to higher employment rates. This research emphasizes that government efforts to expand childcare options in the 2010s may play a crucial role in promoting maternal labour‐force participation in Japan. Takuro Yamashita (論文)Daniil Larionov, Hien Pham, Takuro Yamashita, Shuguang Zhu, “First Best Implementation With Costly Information Acquisition”, Journal of Economics & Management Strategy,First published: 29 January 2025(査読あり)https://doi.org/10.1111/jems.12628 Abstract: We study mechanism design with flexible but costly information acquisition. There is one principal and four or more agents, who share a common prior belief over a set of payoff-relevant states. The principal proposes a mechanism to the agents, each of whom can then acquire information about the state by privately designing a signal device. As long as it is costless for each agent to acquire a signal that is independent of the state, there exists a mechanism that allows the principal to implement any social choice rule at zero information acquisition cost for the agents. 大久保邦彦(論文)「相続の根拠」『阪大法学』第74巻第5号(2025年1月)https://doi.org/10.18910/100307 概要:本稿では、「相続の根拠」「相続制度の必要性」という項目の下で論じられる諸問題に検討を加え、相続制度の背後に控えている法原理を明らかにしようと試みた。最初に、相続制度否定論として、ソビエトにおける相続廃止の社会実験(相続廃止布告)、法哲学者・森村進の見解、哲学者・ハズレットの見解に検討を加え、次に、「相続の根拠」に関する従前の学説(意思説・清算説・扶養説・取引安全説・公益説)を概観した。以上の考察を踏まえ、相続制度を否定した場合にどうなるかについて、積極財産と消極財産に分けて思考実験を行った。その結果、相続制度の廃止は弊害が大きく、現実的な選択肢としては採りえないという結論に達した。結論的には、本稿は、相続法の主目的を、取引安全のために遺産管理機構を設置することに求めているが、従前の学説の中では、取引安全説に最も近い。 赤井伸郎(著書)赤井伸郎、沓澤隆司、竹本亨『都市における空間経営の財政学 — コンパクトシティがもたらす持続可能な自治体運営』(2025年02月刊行)https://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641166400 概要:都市のコンパクト化が財政や住民の行動・健康に対してもつ効果,そして地域の政策がコンパクト化に及ぼす影響について,実証的に解明する書物。新型コロナウイルス感染症や人口減少の影響など多様な論点も解説する,コンパクトシティを考えるための基本書。 Kento Nisugi (書評)“Book Review: Corporate Environmental Responsibility in Investor-State Dispute Settlement: The Unexhausted Potential of Current Mechanisms, by Tomoko Ishikawa. Cambridge and New York: Cambridge University Press, 2023. Pp. xxxix, 302.,” Japanese Yearbook of International Law, Vol. 67 (2025) 489-492. Abstract: This book review critically examines Tomoko Ishikawa’s Corporate Environmental Responsibility in Investor-State Dispute Settlement, highlighting its analysis of the untapped potential of counterclaims in holding investors accountable for environmental misconduct. The review commends Ishikawa’s thorough legal and empirical research, including her quantitative study of 1,000 investment agreements, which challenges the assumption that counterclaims are largely unfeasible. While recognizing the book’s valuable insights into jurisdictional hurdles and investor obligations, the review also discusses its limitations, particularly the structural constraints of the investment law regime. It concludes that Ishikawa’s work is a significant contribution to legal scholarship, offering both theoretical depth and practical reform proposals. 中嶋啓雄(書評)書評:「森口(土屋)由香・川島真・小林聡明編『文化冷戦と知の展開――アメリカの戦略・東アジアの論理――』(京都大学学術出版会、2022年)」『西洋史学』第278号(2024年12月)、89~91頁 概要:国際共同研究の成果である上掲書の学術的意義を論じ、若干の課題を指摘している。
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【新刊:赤井伸郎教授】赤井伸郎, 沓澤隆司, 竹本亨 著『都市における空間経営の財政学 : コンパクトシティがもたらす持続可能な自治体運営』

OSIPPライブラリーでは、教員の研究業績を収集した「スタッフコーナー」を設置しています。このたび、スタッフコーナーへ受入した赤井先生の新刊をご紹介いたします。 赤井伸郎先生 赤井伸郎, 沓澤隆司, 竹本亨 著『都市における空間経営の財政学 : コンパクトシティがもたらす持続可能な自治体運営』(有斐閣、2025年) ⇒ 大阪大学所蔵検索 書誌詳細画面はこちら
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教員紹介:川窪悦章 講師

2024年8月1日付で講師として着任した川窪悦章先生にインタビューを行いました。川窪先生は国際経済学、環境経済学、公共経済学、開発経済学を専門としています。東京大学で経済学の修士号を取得したのち、イギリスのLondon School of Economicsで経済学の博士号を取得しました。 川窪先生が研究者を目指したきっかけを教えてください。 学部3年次から開発経済学とゲーム理論のゼミに所属しました。開発経済学のゼミでは、フィリピンやタイへフィールドワークに行き、教科書的な理解にとどまらず、経済学を現地の経済活動に当てはめて考えることを学びました。 先輩や同期を含めて、学部生の頃から大学院のコアコースと呼ばれる科目の講義を受講する学生が周りにいたこともあり、大学院に進学してもう少し専門的に経済学を学びたいと考えるようになりました。また、修士課程まで国内で過ごして、博士課程からは欧米に留学する先輩が多かったことに感化され、修士2年次に海外のPh.D.プログラムに出願して、博士1年次の夏からイギリスに留学しました。 これまでに研究されてきた内容を教えてください。 サプライチェーンに関する研究で、2011年の東日本大震災に注目して、被災地に取引先がいた企業とそうでない企業を比較して、企業がどのようにサプライチェーンを再構築したのか、またそれにより負の影響をどこまで免れることができたのかを分析しました。その結果、特殊な部品の仕入れなどを被災地の取引先に頼っており、被災地に結びつきの強いサプライヤーを有していたような企業は、ほかの企業からの仕入れに移行することが難しく、生産活動が阻害されてしまったということがわかりました。この分析結果からは、サプライチェーンのレジリエンス(強靭性)には、状況に応じた迅速な取引ネットワークの組み替えが肝要であることが示唆されています。 その研究の魅力を教えてください。 1990年代以降、日本企業は生産拠点をコストの低い地域に配置し、部品や原材料の安価な調達による生産性向上に努めてきましたが、2020年ごろからは気候変動や地政学的な理由によるサプライチェーンのリスクと不確実性が顕在化しています。このリスクは今後一層高まることが予想されており、いざという時に取るべき対策や政策を検討するには各種のデータの詳細な分析が急務です。そのために、私の研究のようなサプライチェーンのレジリエンス(強靭性)に関するエビデンスの提供が重要であり、魅力を持っていると考えています。 どういう経緯でこの研究分野を選ばれたのでしょうか。 元々は開発経済学に興味があり、Ph.D.留学時にもそのテーマで研究をしようとしていました。色々な研究テーマを考える中で、特に発展途上国の税務データを利用して研究を行いたいと考えて対象国の政府高官と交渉を行い、2020年1月からプロジェクトを始める予定でした。 しかし、その頃全世界的にコロナのパンデミックとなり、人の移動も停滞して、当初のプランは立ち行かなくなりました。そこで大きくテーマを変える必要が生じ、運良くアクセスできた日本のデータを用いて研究を行うことにしました。当然、予定していた研究環境のセッティングや使用するデータは大きく異なりましたが、そもそもサプライチェーンにも興味があったので、この研究を進めることにしました。 その後、奇しくもパンデミックやその後の世界情勢により、サプライチェーンへの関心が高まってきたので、この研究テーマを選んだことは間違っていなかったと思っています。 研究テーマを変えるという非常に困難なPh.D.留学生活だったと思うのですが、他に思い出はありますか。 2016年からイギリスに留学したのですが、その年にはイギリスのEU離脱が国民投票で可決され、またアメリカではトランプ大統領が誕生しました。今から考えると、社会的に不安定な要素が多い時期だったと思います。さらに、2020年にコロナのパンデミックがあり、規制が厳しかったイギリスでは家の中ばかりで過ごしていた時期もありました。パンデミックが落ち着くと、次はロシアとウクライナの間での戦争が起こり、ヨーロッパでは政情不安に陥りました。こうした激動の時代を過ごした点で、なかなか珍しい経験をした留学生活だったと思います。 学生へのメッセージをお願いします! 特に最近は、研究職だけでなく、社会的にも大学院を修了した人材が求められていると思います。学問の世界に進むとしても政府・民間企業に就職するとしても、様々な機会が広がっているので、限界を決めずに色々なことに挑戦しながら、充実した大学院生活を送ってもらいたいと思います。勉強や修士論文の執筆など、大変なこともあると思うのですが、同期の学生らと協力し切磋琢磨しながら、楽しく過ごせるといいと思います。研究について悩んだときは、アドバイザーの先生に相談することで突破口を開けることもあります。研究分野の選択で説明したように、完全に自分ではコントロールできない要因で計画の変更を求められることもありますが、そういった時にもくじけずに、代替案を考えて、トライを続けていってもらえればと思います。挑戦を続けていると、意外なところで上手くいくこともあります。 先生のお話を聞いて 川窪先生へのインタビューを通じて、壁にぶつかっても諦めずに挑戦し続けることや、失敗を補うための第二の選択肢を事前に用意しておくことの重要性を学びました。また、筆者は先生に対して常に落ち着いた印象を持っていますが、それは激動の博士課程生活を経験されたからこそ培われたものなのかもしれないと感じました。不測の事態が起こり得る現代において、冷静さを保ちながら自分のやりたいことを見据えて生きることの大切さを改めて実感しました。 (OSIPP博士前期課程 奥野愛理) ****講師 川窪 悦章研究テーマ:サプライチェーンの脆弱性とレジリエンス・企業の生産性専門分野:国際経済学・組織の経済学・公共経済学学位:博士(経済学)(LSE, UK) <代表的な業績>1. “Do Supply Chain Disruptions Harm Firm Performance? Evidence from Japan,” with Takafumi Suzuki. 2024. Working paper.2. “Do Well Managed Firms Make Better Forecasts?” with Nick Bloom, Charlotte Meng, Paul Mizen, Rebecca Riley, Tatsuro Senga, and John Van Reenen. 2021. NBER Working Paper 29591. <研究内容に関する記事:東洋経済オンライン>「海外事例にみる消費税、租税回避行動を抑制か 政策立案にデータ分析の活用を」(2019/9/6配信)「データから見る、サプライチェーンの「強靭化」 震災後の「取引ネットワーク組み替え」を分析」(2024/5/29配信)
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教員紹介:宮野紗由美 准教授

2024年9月に准教授として着任した宮野紗由美先生にインタビューを行いました。宮野先生は、東京大学法学政治学研究科修士課程を卒業後、アメリカのプリンストン大学で博士号を取得しました。国際政治経済学を専門としています。 国際政治経済学とはどんな出会いだったのでしょうか? 学部時代に、授業やトロント大学への交換留学を通して「政治と経済が交錯する」領域に強い関心を持ったことが、私が専門としている国際政治経済学との出会いです。国際政治経済学とは、政治と経済の相互作用を意識しながら、国際関係の事象を分析する政治学分野の学問です。扱う対象は貿易や投資から開発援助、移民、環境問題など多岐にわたります。オンラインインタビューの様子(上:宮野先生・下:筆者) 研究者を目指したきっかけのようなものはありますか? もともと政治学と国際関係論に興味があったことと、それに加えて学部時代のゼミで経験した、自分で問いを立て、仮説を導き、それを検証するにふさわしいデータを探して分析することで、この世の誰も知らなかったことを明らかにする、というプロセスが大変面白く、もっと続けたいと思うようになりました。周りには優秀な人が多かったので「こんな自分が研究の道を志していいのか」と大学院への進学はとても迷いましたが「研究したいことがあるのならば(大学院に)来ればいい」と言ってくださった教員の言葉に感化され、あれこれと思い悩まずに先のことは後から考えればいいや、との思いで進みました。 これまでの研究について教えてください。 私の研究テーマは国際政治経済学で、大きく二つの柱に分かれます。第一のテーマは、国際機関がどのように情報や基準、政策提言を公表しているのか、そしてその過程に対して各アクターがどのように政治的影響を与えているのか、という点です。例えば、エネルギー政策分野においては、将来のエネルギー予測や政策提言などが国際エネルギー機関(IEA)をはじめとして様々な機関から発行されています。このような場合に国際機関の間でどのような相互作用があるのか、その結果これらの機関が提供した情報は各国でどのように政治的に利用されているのか、という分析をしています。また、ISO(国際標準化機構)の標準策定における多国籍企業の影響についても研究しています。例えば、多国籍企業が国をまたぐ子会社ネットワークを通じてどのように標準化過程への影響力を行使しているのかを明らかにすることで、標準化の政治的側面に迫っています。 第二のテーマは、多国籍企業と国家の関係についてです。具体的には、広範なグローバル・バリュー・チェーン(GVC: 製品やサービスが複数の国にまたがって生産される過程で生まれる、国境を越えた付加価値の連鎖のこと)の下で企業がどのように政治的影響力を行使して国家や国際政治・経済活動に影響を与えているのかについて考察しています。特に、貿易協定への関与や地政学的リスクに対する企業の行動、さらには新興国の政策形成における企業の役割に注目しています。例えば、最近出版した論文では、ウクライナ危機が発生した際に、日本企業が企業としてとるべき行動(ロシアから撤退するか否か等)についてどう考えていたのか、またその過程で他国企業の行動はどう影響するのか、オンラインサーベイ実験を用いて明らかにしました。 研究の魅力や面白いところは何ですか? 国際政治経済学の魅力は、政治学的な視点から、国際協力・グローバル経済活動の裏にある政治構造や力学を解き明かそうとする点です。例えば、一見技術的に見える国際標準化が、実は非常に政治的なプロセスであることがあります。どの国やどの企業が影響力を持っていて、誰が利益を得ているのか。その背後にある構造や力学を解明することで、現代の国際社会における「政治と経済の交錯」を浮かび上がらせることができます。また、この学問の面白さは、扱うテーマの幅広さにもあります。国際貿易、エネルギー政策、グローバル企業など、現代社会の様々な側面に関連しており、日々変化する国際情勢と密接に関わっています。そのため、新しい問題について考え続けられるところも大きな魅力です。 これから学びを始める皆さんへオススメの入門書はありますか? 国際政治経済学に興味を持った方に、まずは以下の書籍をおすすめします。 “International Political Economy” by Thomas Oatley国際政治経済学の基礎が分かりやすく解説された標準書です。初心者でも読みやすく、専門的な理解への第一歩となる内容が詰まっています。 『国際政治経済』 飯田敬輔 著日本語で読める入門書として最適です。国際政治経済学の基本的な概念や歴史、現代の課題について学ぶことができます。 これらの教科書を手に取り、関心のあるトピックがあったら引用されている論文を手始めに、少しずつ専門的な論文に触れてみてください。先ほどお話ししたとおり、扱う事象が多岐にわたるので、きっと関心のあるテーマが見つかると思います。 研究者を目指す方へメッセージをお願いします 特に研究者を目指す女性へのメッセージになりますが、たとえ周りの人に反対されようとも、最初はあまり身構えずに研究活動や研究者のコミュニティを覗いてみてほしいと思います。文系の研究というと孤独なイメージがあるかもしれませんが、共同研究をしたり、執筆した論文を交換して議論したりするのが醍醐味でもあります。とはいえ日本の研究者の世界はまだまだ男性の方が多く、私自身、時には疎外感を感じることもありました。しかし、信頼できるメンターからのサポートを得たり、同僚とのコミュニティができたりすると、研究活動も楽しくなると思います。私自身はこの点で運が良かったです。OSIPPは日本の研究科にしては女性研究者が多く在籍しているので、学生さんも研究者を目指しやすい環境かと思います。「自分に研究ができるだろうか」と迷うことがあっても、興味や情熱があれば、ぜひ飛び込んでみてほしいです。 (OSIPP博士前期課程 金アンジェラ) ****准教授 宮野 紗由美研究テーマ:国際機構、貿易と海外直接投資の政治学専門分野:国際関係論(国際政治経済論)学位:Ph.D. in Politics(プリンストン大学) <代表的な業績>Davis, Christina L., Jialu Li, and Sayumi Miyano. 2024. “Peer Conformity and Competition Shape How Business Managers Evaluate Withdrawals from Russia amid the Ukraine War.” Proceedings of the National Academy of Sciences 121(37): e2406471121. doi:10.1073/pnas.2406471121. <個人サイト> https://smiyano.com/
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【新刊:赤井伸郎教授】赤井伸郎, 宮錦三樹 著『教育の財政構造 : 経済学からみた費用と財源』

OSIPPライブラリーでは、教員の研究業績を収集した「スタッフコーナー」を設置しています。このたび、スタッフコーナーへ受入した赤井先生の新刊をご紹介いたします。 赤井伸郎先生 赤井伸郎, 宮錦三樹 著『教育の財政構造 : 経済学からみた費用と財源』(慶應義塾大学出版会、2025年) ⇒ 大阪大学所蔵検索 書誌詳細画面はこちら
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2025年1月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の1月の研究業績をご紹介します。 ・赤井伸郎 先生 赤井伸郎(著書)赤井伸郎、宮錦三樹著『教育の財政構造──経済学からみた費用と財源』慶應義塾大学出版会(2025年1月刊行)https://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766430066/ 概要:将来の人口減少下で日本の成長には人材育成としての教育の政策効果を最大化することが欠かせない。限られた資金をどのような制度の下で配分すれば、教育・研究の費用対効果を高められるのか。財政的・経済学的視点から国・地方自治体の責任主体別費用と財源の構造を明らかにし、効率的で公平な教育財政・資金配分制度を提案する。国および地方自治体の主体別支出と財源構造を明らかにした上で、どこに無駄があるのかを洗い出し、よりよい投資支出を考える上での土台を提供する。現在本書のような財政的(経済学的)視点を伴った教育投資分析を試みた書物は少ない。本書は、財政学の視点から、エビデンスおよび綿密なデータ分析を駆使しながらわが国の教育財政構造の実態を把握することを試みる。 赤井伸郎(その他の記事)「学生「年収103万円の壁」、議論は尽くしたか」『十字路』日本経済新聞(2024年12月26日付夕刊)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF2031M0Q4A221C2000000/?msockid=07cc35830fa26d800f6f21fb0e296c6d 概要:19から22歳の子の親の税負担を軽くする特定扶養控除について、子の年収が103万円を超えると控除がいきなりゼロになる「学生の年収103万円の壁」が引き上げられることになった。学生がアルバイト収入を増やすことによるメリットは、金銭的余裕、就職やキャリア形成、労働力などある。しかし、デメリットとして、勉強時間減少、教育による人材育成の妨げを通じた、将来の日本の経済成長への負の影響もある。生活が苦しい学生むけには、給付型奨学金制度や授業料減免などの制度も存在する。個人的には学生を人手不足解消のための労働力と見なすことには違和感もある。
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【My Favorite】赤井伸郎 教授「クルーズ船による人材育成と地域活性化」

【My Favorite】このシリーズでは、OSIPP教員の“推し”をご紹介します。 赤井伸郎教授「クルーズ船による人材育成と地域活性化」 写真の船は、アジア最大級の客船MSCベリッシマ号で、「クルーズ客船を舞台とした取り組み」が私の”推し”です。クルーズ船は、海上に浮かぶ船でありながら動く巨大ホテルとなっており、世界最大の船は約1万人が船上で生活し、船上ですべて完結できる社会空間となっています。その規模の経済性と集積の経済性を追求し費用対効果の高いレジャーを提供するという、アメリカで生まれたクルーズ事業のビジネスモデルにも関心を持っています。私としては、目が覚めるたびに、窓の風景が変わっていることにも心が躍ります。 なお、この閉ざされた洋上空間は、集中して社会問題を議論する場所にも適しており、スマートクルーズアカデミーという、学生が参加し船上で社会問題をディベートするプログラムを企画し、10年が経ちました。2025年1月に第23期が旅立ちます。この企画は、人材育成を目指すという熱意に、多数の大学、船社、自治体、官庁の皆様が賛同してくださり、継続できております。さらに、クルーズ客船が日本の津々浦々の港に寄港することで、その地域が元気になります。各港の自治体の職員の船上研修プログラムも、スマートクルーズアカデミーがサポートしています。これらのプログラムへの総参加者は800名を超え、このアカデミーで育った人材は社会で活躍しています。
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南和志先生『People’s Diplomacy: How Americans and Chinese Transformed US-China Relations during the Cold War』出版・大阪大学賞受賞インタビュー

2024年3月に著書 People’s Diplomacy: How Americans and Chinese Transformed US-China Relations during the Cold War を出版し、同年12月には大阪大学賞を受賞した南和志准教授にインタビューを行いました。 著書 People’s Diplomacy: How Americans and Chinese Transformed US-China Relations during the Cold War の内容についてお聞かせください。 冷戦期の米中関係について、特に1970年代「米中和解」のプロセスを分析したものです。従来、米中和解といえば1972年2月のニクソン訪中など、両国の政策決定者に焦点を当てるものが多かったのですが、本書は幅広い米国人・中国人に分析対象を広げ、米中関係が敵対から協調に変化した過程を包括的に描き出しています。具体的には、両国の企業家、科学者、学生、ジャーナリスト、アスリート、音楽家など政府関係者ではない人々が、どのように米中関係を再構築したのかを論じています。昨今、米中対立が激化する中、米国の対中「エンゲージメント(関与)」が失敗であったという論調が目立ちますが、本書では、そもそも「エンゲージメント」は米国政府の政策ではなく、米中国民の主導で形成された思想なのだと結論づけています。また、本書の特徴として、米国だけではなく、中国の一次史料も網羅的に使用していることが挙げられます。その中には、残念ながら現在は様々な理由からアクセスできなくなってしまった史料も多く含まれています。本書では、政府関係者ではない非国家アクターに着目していることで、伝統的な外交史では捉えられてこなかった広義な国際関係を分析しています。 歴史系の研究は長期間かかり、忍耐強く取り組む必要がある印象を持っているのですが、研究のスケジュールの組み方など、特に大事にされていることはありますか。 確かに、歴史系の研究は成果が出るまで時間を要する場合が多いので、のんびりしているといつの間にか時間ばかり経ってしまいます。研究のスケジュールに関しては、私は特に秘策があるということはなく、毎日できる限り読んで、書いて、いつの間にか終わっているという場合が多いです。強いて言うなら、研究成果に関して短期目標に固執しすぎてしまうと研究の柔軟性が失われる恐れがあるため、ある程度余裕を持ちながら、中・長期の目標を意識するようにしています。 今取り組まれている研究や今後の研究の展望についてお聞かせください。 現在は、戦後東アジア全体を対象に、石油外交に関する研究を進めています。「東アジアの奇跡」とも称される同地域の急速な経済成長は、1950年代のエネルギー革命により燃料の主役に躍り出た石油に依存していましたが、石油資源に乏しい東アジア諸国は、供給源確保のため、東西冷戦の垣根を超えた競争・協調を展開しました。石油資源をめぐる外交交渉、石油開発のための技術協力、海外プロジェクトにおける政治家・商社・銀行の相互依存関係を調査することで、石油が戦後東アジアの国際関係に絶大な影響を与えたことを明らかにしたいと考えています。 研究中の困難はどのようなものがありますか。 研究に必要な資料を集めることが困難になってきています。私の研究で使用する資料は現在の政情が不安定な地域を対象としている場合もあり、予算制約がありながらどれだけ柔軟な発想をしてクリエイティブな方法で問題を解決するか、ということが求められています。そのため、都度試行錯誤しながら研究を進めています。 政治学の研究をするうえで必要な心構えはありますか。 歴史研究の観点から考えると、最も大事な力は基本的な読み書きの能力だと思います。歴史研究は入り口は広いですが、読み書きの能力や、大量の情報を処理・分析して争点・論点を絞る能力が必要です。また量の面でいうと本を何百冊と読む必要があり、次には読む人がいることを意識しながら、伝えたいことがきちんと伝わるよう緻密に検討しつつ文章を書く能力を磨くことと、それを成し遂げる強い意思が必要です。歴史研究を志している学生さんにはぜひ上記の点を踏まえた上でがんばってほしいと思います。 この度は大阪大学賞の受賞、おめでとうございます。ご感想をお聞かせください。 非常に光栄です。(くらいしか言えません笑)  大阪大学HP:令和6年度大阪大学賞表彰式を開催 OSIPP公式HP:令和6年度大阪大学賞若手教員部門 受賞 先生のお話を聞いて 研究活動には忍耐力と実行力が不可欠であることを改めて実感しました。先生から資料収集の方法について伺い、世界情勢に左右される難しさや、時間と思考を駆使して取り組んでいる姿勢を知り、歴史研究の困難さを改めて感じました。筆者もデータ収集活動で苦労することが多いのですが、まだまだアプローチする方法やできることの可能性について考える余地があることを認識しました。また、研究アイデアは頭の中だけに留めず、他者に伝えて進めることの重要性についても教えていただきました。この姿勢は、分野を問わず研究活動において共通する重要な考え方だと思います。 (OSIPP博士前期課程 奥野愛理)
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【My Favorite】松林哲也 教授「釣り」

【My Favorite】このシリーズでは、OSIPP教員の“推し”をご紹介します。 松林哲也 教授「釣り」 自分の“推し”は、とりあえず「釣り」とします。 この記事の執筆を依頼された時に、ビールを飲む以外に「推す」ことは特にございませんと一旦お断りしました。ただ、よく考えたら好きかどうかわからないけれど、釣りは頻繁にやっているということを思い出しました。 息子と自分の日課の一つは、夕食後に近隣の釣り公園の釣果をチェックすることです。大阪湾沿いには、尼崎、鳴尾浜、平磯(冒頭の写真)、須磨など、豊中から車で1時間以内に訪れることのできる海釣り公園がいくつもあります。それらの公園のウェブサイトでは毎日の釣果情報が更新されるので、その日の釣果を見ては「この種類がこんなに釣れたのか」とか「どうやって釣ったのか、エサと仕掛けは何か」といったことを息子と確認します。 釣果を見るのは、上手な釣り人たちと同じように、自分たちも大きくて美味しい魚(例えばアジ、タイ、ハマチ・ブリ、ヒラメ、イカなど)を釣ってみたいと心から願っているからです。他の人が釣っているのであれば、自分たちにも可能性があるはずです。 ただ、現実は厳しいです。先日は、2018年の台風被害を経て昨秋営業を再開した須磨海づり公園を訪れましたが、風が強く寒いなかでがんばったのに、魚のアタリを感じることもなく、完全なボウズ(一匹も釣れないこと)でした。2023年のサバティカル中にはカナダのオンタリオ州にある湖でトラウトを釣ることを夢見ていましたが、それも叶いませんでした。2024年には北海道、大阪湾、徳島などで釣りをやってきましたが、その多くで何も釣れない・釣れても小さいのばかりという感じです。 過去数年間の我が家の釣果を振り返ると、釣りたい魚はほぼ釣れていません。釣りを始めた数年前はサビキ釣りで小サバやコノシロが大量に釣れて大喜びしたりしていましたが、処理の大変さと味の単調さに辟易し、釣りたい魚のみに集中することに決めました。釣りたい魚を釣るには知識と技術と装備が必要ですが、特に知識と技術が追いついていないのが現状です。下手の横好きとは自分たちのことだと認識しています。 それでもなぜ釣りに行くのかなと頻繁に自問します。暑い・寒い、早起きしないといけない、遠い、準備が大変など、とにかくハードルが高いです。それでも頑張って釣りに行こうと思うのは、何も求めず、何も考えず、でももしかしたら釣れるかもという淡い期待を抱きつつ、息子(とときには妻)と共に海や湖を見ながら釣り竿を垂らしている時間が貴重だからだと思います。 息子は成長とともに自分のことに忙しくなり、一緒に釣りに行かなくなるだろうと覚悟しています。その時には、釣りのエキスパートでもある経済学研究科のO先生にぜひご指南をいただいて、腕を磨きたいと思います。釣りに関しては、息子とも話題をずっと共有できそうなので。
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2024年12月の研究業績

OSIPP基幹講座教員の12月の研究業績をご紹介します。 ・生藤昌子 先生  ・石瀬寛和 先生・前川和歌子 先生 ・大久保邦彦 先生・赤井伸郎 先生 Masako Ikefuji(論文)Masako Ikefuji, Yoshiyasu Ono, “Environmental policies and stagnation in a two-country economy”, Economic Modelling, 141, December 2024, 106904(査読あり)https://doi.org/10.1016/j.econmod.2024.106904 Abstract: Global warming poses a serious and acute threat to our planet. However, negotiations over the allocation of permissible carbon emissions often lead to conflicts of interest between developed and developing countries. Developing countries claim that global warming results from long-term pollution emissions by developed countries, while developed countries demand that developing countries should make adequate efforts to reduce carbon emissions. Both developed and developing countries generally agree that stricter emission limits will strain their economies due to the associated extra abatement costs. Using a two-country model with wealth preferences, we find that the impacts of a country’s emission limit on real consumption and pollution emissions in both countries vary depending on the combination of their business situations. If both countries achieve full employment, one country’s stricter emission limit decreases real consumption in both, as expected. However, if one country faces aggregate demand stagnation while the other achieves full employment, a stricter emission limit imposed by the stagnant country increases real consumption in both countries. Hirokazu Ishise(論文)“Religion as an informal institution: A case of true pure land Buddhism and missing women in early modern Japan”, Journal of Economic Behavior & Organization, Vol. 229, January 2025, 106823(査読あり)https://doi.org/10.1016/j.jebo.2024.106823 Abstract: In early modern Japan, infanticide was used for birth control and sex selection. However, some historians hypothesized that people who believed in the True Pure Land (TPL) sect of Japanese Buddhism were less likely to commit infanticide. I statistically examine this hypothesis using a quasi-natural experiment of hinoeuma (fire-horse) year with a two-way fixed-effects estimation. Girls born in a hinoeuma year were reckoned to be inauspicious and subjected to sex-selective infanticide. In 1846 and 1906 hinoeuma, TPL-dominant areas experienced a smaller increase in the male-to-female ratio in the cohort than the areas with less TPL dominance. Additional regressions support the hypothesis that the TPL’s prohibition of infanticide led to this smaller effect.<大阪大学プレスリリース:ResOU>https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2024/20241205_2 Wakako Maekawa(論文)Wakako Maekawa and Kana Inata, “Consequences of civilian victimisation: does pro-victimisation sponsorship affect the survival of intervening leaders?”, Contemporary Politics, 11 Dec 2024(査読あり)https://doi.org/10.1080/13569775.2024.2440216 Abstract: Are political leaders penalised for sponsoring foreign governments inflicting violence against civilians? Foreign policy literature illustrates that involvement in international crises boosts incumbent support via rally effects, while war casualties literature demonstrates that citizens are sensitive to punishing their political leaders for negative foreign policy outcomes. We argue that sponsoring inhumane foreign governments is more likely to promote irregular penalisation, such as protests, rather than regular punishment, such as loss in elections, for security threats emphasized during election periods may induce the public to condone civilian victimisation in a third country. Using data on political leaders from 1991 to 2009, we find that as the levels of indirect civilian victimisation increase, leaders are less likely to be terminated in a regular manners. Although the corresponding effect on irregular exit is less robust, our extension analysis shows that indirect civilian victimisation increases protests, which could impose costs on incumbent leaders. 大久保邦彦(論文)「原始的不能」、鎌田薫・加藤新太郎・松本恒雄 編『債権法改正講座 3巻』 第1部 契約総論・契約の成立、日本評論社(2024年12月)https://www.nippyo.co.jp/shop/book/9402.html 概要:特定物売買の締結時に目的物がすでに滅失していた、という事例が原始的不能の契約の典型だが、2017年改正前民法典は、原始的不能の効力について特段の規定を持たなかった。伝統的通説・判例は「原始的不能の給付を目的とする契約は無効である」という考え方を支持していたが、1960年代以降、反対説が有力になり、近時の比較法的動向も同様の傾向にあった。2017年の改正法は、原始的不能というだけでは直ちに契約は無効とはならないという新ルールを採用することを前提に、民法412条の2第2項を新設した。本論文は、改正時の議論を概観し、改正法によって変わった点や決まったことを確認した後、残された課題や改正法の下で生じうる諸問題に検討を加えた。 赤井伸郎(その他の記事)「103万円の壁、上げ「理解」44% 経済学者47人に聞く」『日経エコノミクスパネル』日経新聞(2024年11月29日朝刊), 日経新聞電子版2024/11/29https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD205G40Q4A121C2000000/?msockid=07cc35830fa26d800f6f21fb0e296c6d
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【新刊:中嶋啓雄教授】ジョン・T・ダヴィダン 著、中嶋啓雄 監訳『西洋化の限界(The Limits of Westernization)』

OSIPPライブラリーでは、教員の研究業績を収集した「スタッフコーナー」を設置しています。このたび、スタッフコーナーへ受入した中嶋先生の新刊をご紹介いたします。 中嶋啓雄先生 ジョン・T・ダヴィダン著、中村信之, ミラー枝里香, 伊藤孝治, 竹澤由記子, 周游 訳、中嶋啓雄 監訳『西洋化の限界 : アメリカと東アジアの知識人が近代性を創造する : 1860-1960 = The limits of westernization : American and East Asian intellectuals create modernity, 1860-1960 』(大阪大学出版会, 2024年) ⇒ 大阪大学所蔵検索 書誌詳細画面はこちら (OSIPPライブラリー)
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令和6年度 大阪大学賞受賞! 山下拓朗教授・南和志准教授

大阪大学賞「若手教員部門」受賞! 2024年11月27日(水)、大阪大学コンベンションセンター(吹田キャンパス)で大阪大学賞の受賞式が開催された。 国際公共政策研究科からは「若手教員部門」で受賞を果たした 山下拓朗教授と南和志准教授が出席した。 大阪大学公式HP News:令和6年度大阪大学賞表彰式を開催 山下拓朗 教授 <業績名>「制度設計と情報設計の理論およびオークションや市場・組織分析への応用の研究」 <OSIPPNews記事>教員紹介:山下拓朗 教授第20回 日本学術振興会賞・日本学士院学術奨励賞受賞インタビュー 南和志 准教授 <業績名>「冷戦変容期における米中「人民外交」の研究」 <OSIPPNews記事>教員紹介:南和志 准教授
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