私は現在、法学研究科で国際民事訴訟法を専攻しています。毎日研究室で机に向かって
一体何をしているのかと言えば、日本語のみならず、英独仏といった外国語の文献を精読しながら、日本と外国の法制度を比較して、「外国法から日本法に取り入れられる考え方はないだろうか」「外国法と日本法の考え方を組み合わせたらどうなるだろうか」…といったようなことを考えています。大学院での生活は、学部生時代よりもはるかに忙しいですが、教職員や院生の方々に恵まれ、充実した研究生活を送っています。
そもそも、私が大学院に進学しようと思ったきっかけは、3、4年生の時の民法ゼミでした。そのゼミでは、1つの判例を割り当てられ、その基礎理論から発展的な論点までを調査して報告したのですが、その報告の準備に際して、ある1つの法律問題について文献調査をしたうえで自分の意見を構築するということの楽しさに目覚め、法学研究科への進学を決意しました。
学部生時代にはゼミの準備に充てられる時間も限られていましたが、現在は、自分の関心があるテーマの探究にほとんどの時間を費やしており、学部生時代とは比較にならないほど広く深い調査・思考ができます。このような経験は、大学院でなければなかなかできるものではありません。そして、一度このような経験を積んでおけば、その後社会に出ても、この院生時代に身に着けた調査・思考の方法をいかすことができると思います。
文系では、大学院に進学する人は多くはありませんし、何をしているのかもあまり知られていないかもしれません。しかし、だからこそ、その世界は一度覗いてみる価値があると思います。自分の進路に悩んだり、もっと勉強を続けたいと思ったりしたとき、ぜひ一度、
大学院への進学も視野に入れてみて下さい。
みなさんは今どのような将来像をもっていますか。私は学部入学当初はマスコミ業界への就職を目指していました。しかし、法・政治・経済に関する基礎知識・理論から現実への実践を含む、さまざまな授業を受ける中で、「もっとじっくり腰を据えて学問に向き合いたい」と考え、大学院進学を決意しました。
進学した国際公共政策研究科は、留学生が非常に多く、英語での授業も充実しています。
働きながら在学している方もおり、多様な学生が高い志をもって研究に取り組んでいます。1年次は、研究の土台となる基礎科目を多く履修しました。総合大学の利点を生かし、他研究科の授業や連携する他大学の講義に参加することもできます。
現在は学部の4年間で最も興味を惹かれた国際政治理論を研究しています。政治理論と
いうと、とっつきにくい印象を受けるかもしれません。しかし、現実の国際情勢を理解するには、理論というツールが欠かせません。私は「なぜ国家は人権条約に入るのか」という問いに取り組んでいます。規範的には正しそうな行動をなぜ選択するのかをあらためて問い直すことで、国家の行動をよりよく理解することにつながります。
学問に限らず、学生のうちに何か打ち込む価値のある「問い」を見つけることは重要です。
「何が児童虐待を引き起こすのか」「EUはさらなる統合を目指すべきか」「ワーク・ライフ・バランスの実現は労働生産性を高めるのか」など、答えのない問いが社会にはあふれています。このような問題意識を持ちつつ、政治家や国際公務員になることを目指している同級生もいます。みなさんが大学で素晴らしい仲間と出会い、全力を注ぐ価値のある「問い」を見つけられることを願っています。