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教員紹介:細井友裕 助教
2026年4月に着任した細井友裕先生にインタビューを行いました。細井友裕先生は国際関係論・比較政治学のなかでも現代アフリカ政治を専門としています。
これまでのご経歴を教えていただけますか。
学部は中央大学の法学部でしたが、たまたまアフリカに関心を持ったんです。当時の中央大学にはアフリカ研究の先生がいなかったので、「勉強したいなら大学院へ」と進学しました。東京では数少ないアフリカ政治研究者である東京大学総合文化研究科の遠藤貢先生のもとで、比較政治学・国際関係論とアフリカを関連付けながら研究してきました。また大学院在学中には、外務省の国際情報統括官組織でアフリカの分析にも携わりました。博士課程の修了後は、東京大学社会科学研究所でのポスドク、群馬大学での専任講師を経て、縁あってOSIPPに移ってきました。
研究者を目指したきっかけを教えてください。
「知らないことを調べるのが好き」というのが出発点です。大学1年生のときに白戸圭一先生の『日本人のためのアフリカ入門』[i]を偶然手に取り、自分がアフリカについて何も知らなかったと気づかされたことが大きな転機でした。ちょうどその1年次に、私が入っていた国際関係のゼミで、自分でテーマを調べて発表やレポートにまとめる演習がありました。「世界や外国に関わることなら何でも調べてよい」という課題でした。知っている国は面白くないなと思い、地図を眺めて、全く情報のなかったチャドを選びました。アフリカ研究者になった今だから分かるんですが、チャドは世界的にみても研究者がいない国で、資料がほとんどなく苦労しました。でも何も知らないから逆にできた。そこで「誰も知らないことを知るのは楽しい」と味を占め、まさに沼にはまるようにアフリカ研究の道へと進んでいきました。
大学院在学中には外務省での勤務経験があるとのことですが、その後の研究に影響を与えていますか。
大きく影響しています。大学院在学中には、外務省の国際情報統括官組織でアフリカの分析に携わりました。外交官という実務家の方々と接し、その専門性の高さや現場感覚に強く刺激を受けました。研究はテーマを突き詰めて尖らせていくものですが、同時に「社会の役に立っているか」という視点も大切にしたいと考えるようになりました。以来、「研究者だけが面白がる研究ではなく、実務に携わる方が聞いても面白いと感じてくれるか」を一つの基準にするようになりました。
これまでの研究と、現在の研究について教えてください。
博士課程では南アフリカの行政・財政を研究していました。アフリカには行政の運営に課題を抱える国もありますが、南アフリカは制度づくりが比較的うまくいっていると考えています。例えば、新型コロナ流行時の現金給付は、日本より早いくらいでした。オンライン決済や日本のマイナンバーのような仕組みが広く普及しているので、いざ実施が決まると支給がとても早いんです。アフリカの中でも、こうした違いがどこから生まれるのかを、法制度の導入と実施という両面から分析しました。

最近の研究の中心は政軍関係(文民政府と軍隊の関係)です。軍を「武装した官僚」と捉えると、これまでの行政研究と地続きで考えられるんです。軍も本来は、治安の維持や防衛という公共サービスを担う組織です。ただ、武力を持つ点が決定的に特殊で、ときに統治そのものを揺るがしかねません。税務の役所が反乱を起こして国が傾くことはまずありませんが、軍が動いて政権が倒れた例はいくつもあります。言い換えれば、軍は統治を支える柱であると同時に、それを崩しかねない弱点にもなります。だからこそ、官僚と同じ理屈で考えつつ、軍を「武力を独占した特別な行政組織」として捉え直す必要があると考えています。重要なわりに研究が手薄で、軍事は公開情報が限られるぶん難しさもありますが、だからこそ挑みがいがあります。あわせて、なぜ日本がアフリカとの関係を強めてきたのかを、公開された外交文書から読み解く研究も進めています。
研究の魅力や面白いところは何ですか。
一番は、知らないことがどんどん分かっていく面白さです。問いが生まれ、それが少しずつ解けていく。この楽しさは、研究を始めた頃からずっと変わりません。 それに加えて、いま起きていることをタイムリーに扱える面白さもあります。近年アフリカ各地で政変が相次ぎ、先ほどの政軍関係への実務的な理解が求められるようになりました。理論的な正確さを保ちながら、現実の動きをすぐに分析して発表できるのは、この分野ならではの魅力です。
日本とアフリカの関係も興味深いテーマです。外交文書は作成から原則30年で公開されるため、1993年に始まったアフリカ開発会議(TICAD)の初期の記録をたどれるようになりました。文書を読むと、日本が手探りで会議を立ち上げ、アフリカ側の声に耳を傾けながら形にしていった様子が見えてきます。2025年8月には横浜でTICAD9が開かれ、関心はいっそう高まりました。最近は韓国の研究者と協力し、日本・中国・韓国のアフリカ外交を比較する研究にも取り組んでいます。
学生へおすすめの本を教えてください。
峯陽一先生の『2100年の世界地図:アフラシアの時代』(岩波新書)です。アフリカとアジアを合わせた「アフラシア」という造語をもとに、これからの世界の経済的・人口的な中心がこの地域へ移っていくと論じた一冊です。今後、グローバルサウス(アジア・アフリカ・中南米などの新興国・途上国の総称)への理解が欠かせないと気づかせてくれます。先入観にとらわれず相手をあるがままに見ることの大切さを教えてくれる、よい入り口になる本だと思います。
先生のお話を聞いて
印象に残ったのは、「誰も知らないことを知る楽しさ」を学部時代から持ち続けつつ、外務省での経験から実務家の視点も大切にされている姿勢でした。遠いと感じていたアフリカが、自分たちの足元を見つめ直す入り口になると気づかせてくれるインタビューでした。
<先生のご紹介>
- 研究テーマ:現代アフリカ政治
- 専門分野:国際関係論・比較政治学
- 学位:博士(学術)(東京大学)
- 代表的な業績:
- Hosoi, Tomohiro, and Tomoko Takahashi. (2026) African Agency in the Formation of Summit Diplomacy: An Analysis of Diplomatic Documents on TICAD I. Global Studies Quarterly, https://doi.org/10.1093/isagsq/ksag079.
- Hosoi, T. (2025). METI and Japanese scramble: re-definition of Japan’s African policy under the second Abe administration and future of African summit diplomacy. The Pacific Review, 38(3), 422–442, https://doi.org/10.1177/00219096251369523.
- Hosoi, T. (2025). Patterns of African Union Sanctions on Coups d’État: Civilian Control as a Political Message. Journal of Asian and African Studies, 61(4), 3208-3224, https://doi.org/10.1177/0021909625136952.
- Hosoi, T. (2025). Can Minor Powers Swing between Major Powers under a Competitive International System?: The Case of the Central African Republic since 2016. Africa Review, 17(2), 151-170, https://doi.org/10.1163/09744061-bja10217.
- 参画している研究プロジェクト:
- 体制変動期における文民統制の比較研究(科研基盤B分担者)
- 権威主義国における指導者交代と政軍関係の変容の動態的分析(科研若手研究)
- 女性ディアスポラの出身国政治参入への試行錯誤(科研基盤C分担者)
[i] 白戸圭一『日本人のためのアフリカ入門』ちくま新書、2011年