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薮中三十二特任教授 OPEN教室 「日本の針路を考える-トランプ大統領で大揺れの世界、米中接近の中で-」
2026年7月6日、OSIPP棟講義シアターにて、元外務省事務次官の薮中三十二特任教授によるOPENクラス「日本の針路を考える-トランプ大統領で大揺れの世界、米中接近の中で-」が開催された。講義は英語で行われ、学部生を含む多くの学生が参加した。
講義は、“Changes in the Security Environment Surrounding Japan and the Importance of ‘Comprehensive National Power’”と題した安全保障政策に関する資料[1]の分析から始まった。同資料で言及された「同志国(like-minded countries)」という概念について、薮中先生は批判的な見解を示した。
「同志国」とは、外交課題において目的を共有する国々を指す言葉である。ただし、その範囲は必ずしも明確ではない。近年、トランプ政権下のアメリカによる同盟国政策の変化および中国の台頭を背景として、日本は韓国、オーストラリア、フィリピンなどとの安全保障協力を強化しており、「同志国」との連携も安全保障政策における重要な概念の一つとなっている。こうした状況を踏まえ、薮中先生は、現在の「同志国」政策は中国への対抗という側面が前面に出ており、本来掲げられていた価値共有という理念が薄まっているとの見解を示した。
また、日本政府は中国との対話には慎重な姿勢をとっているとの認識を示した。その上で、こうした対話を停止することは戦略的な誤りであり、外交の本質にも反するとの見解を述べた。

薮中先生は、対話を継続することの重要性について、ご自身が外務省在職中に携わった「2008年東シナ海油ガス田共同開発合意(以下、2008年合意)」を例に説明した。2008年合意は、日中双方が東シナ海における資源開発で協力することを目指して取りまとめられたもので、その後は条約化に向けた交渉が予定されていた。2010年の中国漁船衝突事件を契機に日中関係が悪化し、交渉は中断したが、2017年の日中首脳会談では2008年合意が改めて確認された。薮中先生は、最終的に条約化には至らなかったものの、関係が悪化した後も対話を重ねたことで合意が再び取り上げられたことは、安倍政権下における外交上の成果の一つであり、対話を継続することの重要性を示す事例であると説明した。
最後に、高市政権の防衛政策についても言及した。安倍元首相の対外政策上の姿勢(footsteps)を継承するとするのであれば、防衛政策上の強硬な姿勢だけでなく、安倍政権後期に進められた日中間の実務的な対話の再開という外交路線についても併せて捉えるべきであるとの見解を示した。
講義では、学生から最近の国際情勢を踏まえた質問が投げかけられ、それをきっかけに先生と学生の間で活発な議論が交わされる場面も見られた。筆者も今回のOPENクラスを通じて、対話を継続することが将来の協力や問題解決につながる可能性があることを改めて認識した。変化の激しい国際社会だからこそ、対話を積み重ねる姿勢の重要性を考える機会となった。
(OSIPP博士前期課程 WANG Hsin Ni)
[1] ‘Changes in the Security Environment Surrounding Japan and the Importance of “Comprehensive National Power”’ (April 27 2026), https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/boueiryoku_kaigi/sogoteki_dai1/siryou3_e.pdf