寄付講座主催シンポジウム、研究集会

21世紀の個人投資行動を探る


蝋山高岡短大学長が基調講演、200人が参加

 

 

 「個人金融サービス寄付講座」の主催による研究集会が2月29日にOSIPP棟で、公開シンポジウムが3月1日にメルパルク大阪で、それぞれ開かれた。
 「金融大変革と個人投資家−21世紀の個人投資行動を探る−」と題されたシンポジウムではまず、高岡短期大学学長(前OSIPP教授)の蝋山昌一氏が「これからの日本の金融システム:ビジョンと現実」のテーマで基調講演を行った。同氏は日本金融の問題を列挙した上で、改善の方向性を指摘、「広い意味での証券市場を活用して再生していくべきで、従来のように銀行・生保に資金を任せ失敗したら税金で面倒を見るというやり方は不適。自発的に自己責任で投資家が対応すべき。そのためには法整備や投資家教育も必要。国際的にはこの考えが主流だが、政策当局はむしろ従来の枠組み維持の方を向きがち」と説明した。
 引き続いてパネルディスカッションには、OSIPP教授・辻正次氏の司会により、蝋山氏のほか慶應義塾大学経済学部教授・池尾和人氏、名古屋大学大学院法学研究科教授・千葉恵美子氏、OSIPP教授・林敏彦氏が参加(=写真)。「政府が支えているから現状は小康状態。ペイオフは苦いが良薬」(池尾氏)、「個人が賢い投資家になれと言われても忙しい中いちいち判断するのも大変。アラカルトメニューもいいが、お任せのコース料理があってもいい。多様化がビジネスチャンスになる」(林氏)、「JR、NTTなどは学生の就職希望がトップ。郵便局もネットワークを生かして民営化すればそうなるかもしれない。役所も大学も企業も、変革に臆してリスクを避ければマイナスになる時代」(辻氏)といった意見も出て、約200人の聴衆が活発な討論を聞き入った。
 研究集会では、加納正二氏(摂南大学経営情報学部助教授)、岡田仁志氏(OSIPP助手)、晝間文彦氏(早稲田大学商学部教授)、松浦克己氏(横浜市立大学商学部教授)、吉野直之(慶應義塾大学経済学部教授)、池尾和人(慶應義塾大学経済学部教授)がそれぞれ報告をし、討論者と議論した。


NPO学会阪大で


OSIPP共催800人参加

 

 日本NPO学会の第2回年次大会(OSIPP共催)が3月18日から20日まで阪大で開催され、研究者・学生をはじめ、行政関係者や企業人、NPOスタッフなどのべ800人が参加した。
1日目は、吹田キャンパスのコンベンションセンターで「NPOの温故知新:新世紀へむけて」と題した公開国際シンポジウムが開かれ(=写真)、アメリカにおけるフィラソロピー研究の権威であるキャサリン・マッカーシー教授(ニューヨーク市立大学フィランソロピー研究所長)が基調講演を行った。続いて内外のNPO専門家によるパネル討論が行われた。
2日目、3日目は会場を豊中キャンパスに移し、「行政とNPO」「ボランティアの経済分析」「NPOマネジメント」など30近いセッションに分かれて50を超える報告が行われた。
学会理事で、大会運営委員も務めた山内直人助教授は「学会は実務家と研究者が腹を割って話せるいい機会。これまで日本のNPOは主にアメリカをお手本にしてきたが、これからはアジアにも目を向けて、国際的なネットワークづくりを強化していきたい」と話し、盛況だった学会の成果を今後に生かす意向だ。
OSIPPからは、林敏彦教授、辻正次教授、松繁寿和助教授、山内直人助教授が報告者、座長、パネリストなどとして参加。また、初谷勇、藤岡巧、前川聡子(いずれもOSIPP修了生)、中谷常二(D2)、上杉志朗(D1)、末村祐子(M2)、浅野桐子(M1)がそれぞれ研究中のテーマについて報告した他、多数の院生が運営スタッフとして参画した(一部敬称略、学年は大会当時)。


 アメリカンセンターで国際関係フォーラム

 在大阪・神戸アメリカ総領事館の関西アメリカン・センターで2月29日、アーミテージ・アソーシエイツのロビン・サコダ氏を招いて「アジア太平洋地域の平和と安全保障を考える〜アメリカのプレゼンス」と題した国際関係フォーラム(OSIPP共催)が開催された。OSIPPからは黒澤満研究科長がコメンテーターを務め、院生も多数参加した。
 サコダ氏は「日米防衛協力のた→→めの指針」(いわゆるガイドライン)見直し作業の際、米国防総省チームの日本部長として活躍。講演では、日本政府によるホスト・ネーション・サポート(思いやり予算)の重要性などを解説した。黒澤教授は最近のアメリカ外交は、CTBT(包括的核実験禁止条約)の批准拒否など新孤立主義の道をたどっているのではないか、といった問題を提起、フロアーからもTMD(戦略ミサイル防衛)の実現性を問うなど活発な質問が出された。


ウルサン大学の一行OSIPPを訪問

 韓国・蔚山(ウルサン)大学地域開発大学院の教官、学生ら24人が2月8日、来日しOSIPPを訪問した。引率した金宇城教授は以前、招聘されOSIPPで研究したことから交流が深く、今回は日本の法律、政治、経済などを学ぶスタディツアーの一環として来校した。9日は星野俊也助教授が北東アジアの現状について特別講義を行い、前進と後退の両面について解説。「日本は南北朝鮮の再統一に本当に賛成か。半島に大国ができることを危惧する向きはないか」といった質問も出て、率直な質疑応答が行われた。


専門調査員の橋本氏、ボスニア問題で報告

 OSIPP博士後期課程の院生で、在オーストリア日本国大使館の専門調査員を3月まで務めた橋本敬市氏がこのほど一時帰国、4月13日にOSIPP棟で「ボスニアの民主化および経済復興に対するわが国の貢献」と題する報告会を行なった。
 橋本氏はバルカンの民族問題が研究テーマで、大使館でも主にボスニア・ヘルツェゴビナ関係の政務を担当。ボスニアでは95年に内戦が終結したが、依然ムスリム(イスラム教徒)、セルビア人、クロアチア人の民族対立が深く、問題が山積している。同氏は3年間の勤務体験を元に、ボスニア支援に携わる欧米諸国、OSCEにおける成果と矛盾、欧米の独特の民主主義観など、国際協力の裏話も交えて明快に解説した。会場には20人を超える院生が集まり、在外公館の専門調査員の仕事についても質問が出された。
 なお、同氏は4月より、ボスニアの首都サラエボに駐在し、ボスニアに対する民生面の国際支援を統括する上級代表事務所(OHR)で勤務している。

 待ち兼ね山サロンで李講師、日韓問題解説

 研究科や専門の枠を超えて知的対話を楽しもうという「待兼山サロン」の第2回会合が1月31日、OSIPP棟のプロジェクト研究室で開かれ、阪大法学研究科の李相薫講師が「金大中大統領の対日政策と日韓関係」について語った。李講師は「国民の間にはまだ反日感情が強いが、金大統領は従来のような独善的な民族主義を排している。制度上、再選ができないので人気取りではない、思い切った政策が取れる」と解説した。


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