OSIPP授業百選

NPO研究の最先端走る

プロジェクト演習(NPO/NGOと公共政策)

山内直人助教授

本間正明 経済学研究科教授

出口正之 総合研究大学院大学教授

 

阪神・淡路大震災やNPO法の成立などを機に、NPO活動への関心が高まっているが、OSIPPでは94年からフィランソロピー、NPO・NGOに関する授業を開講、現在はプロジェクト演習をはじめ、3種の授業が提供されている。一般向けのボランティア講座は多いが、「大学院レベルで質・量ともにこれほどのNPO関係の授業が組まれているところはなく、 日本におけるこの分野の研究の最先端を走っている」(山内助教授)。
 プロジェクト演習はOSIPPの授業の特徴であり、OJT(On the Job Training)を通して実践的、現実的な見識、能力をつけることを目的にしている。NPOのプロジェクト演習では、民間非営利セクターの現状分析、経済理論的な位置づけ、税制など関連制度・政策などをテーマに、授業に参加する学生とともに研究プロジェクトを組み、その成果を公刊している。
 これまでに5冊が刊行された(=写真)。『ボランティア革命』(東洋経済新報社)は本間、出口教授と学生4人の共著によるもので、阪神・淡路の震災で活躍したボランティア団体の実態調査と、草の根NPO支援の政策提言をまとめたもの。3刷まで出ており、NPO法成立にも影響を与えたという。
 今年5月に出た『NPOデータブック』(有斐閣)は授業の受講生と若手の実務家ら15人が分担して執筆、山内助教授がとりまとめたもの。NPOに関する多様なデータ・資料をもとにNPOの全体像をわかりやすく解説、文献リスト、関係機関アドレス帳なども付記している。この他『NPO最前線:岐路に立つアメリカ市民社会』(岩波書店)もある。
 通年の授業で土曜日に開講されるため社会人学生も参加しやすい。今年度も10数人が受講し、日本の巨大NPO・NGOのケーススタディなどを計画している。
 この他、「演習(非営利組織研究)」は、学外のNPO研究団体の一つ「NPO研究フォーラム」の定例セミナーを学生にも開放したもの、「演習(非営利組織論)」では最新の文献を題材にして経済学的アプローチを学ぶ。
 今年3月には日本NPO学会が発足、その初の全国大会で山内助教授、跡田直澄教授はじめOSIPPの院生4人が研究報告をした。学会誌などの編集・発行も事務局を務める山内研究室を中心に行われ、来年3月に阪大で全国大会が開かれる。
 山内助教授は「本の発行は、学生の名前が載ることでインセンティブになるし、業績の一つになるという教育効果もある。阪大をNPO研究のCOE(Center of Excellence)にするべく、さらに充実した授業を作っていきたい」と話している。


同窓会コーナー

動心会第2回総会が開催

台湾やミャンマーからの卒業生も交えパーティにぎやかに

←新棟のライブラリーを見学する卒業生ら

OSIPP同窓会「動心会(会長=神田延祐・元三和銀行副会長)」の99年度総会が7月10日、OSIPP棟・会議室で開かれた。同会は昨年7月に正式発足し、今回が2度目の年次総会。神田会長のあいさつのあと、昨年度の事業報告と収支決算、今年度の事業計画と収支予算、さらに学生会員代表の改選(笠原久美子(M2)、吉田康寿(M1)の両氏を選出)などが審議され、いずれも承認された。
 続いて黒澤満研究科長が「核軍縮と国際平和」のテーマで記念講演(内容は3ページに掲載)。新校舎の内部見学も行われ、卒業生からは「すごいですね。こんないい校舎で勉強したかった」とうらやむ声も漏れていた。
 その後、待兼山会館で懇親パーティが開かれ、台湾やミャンマー在住の卒業生をはじめ、教官、学生ら約60人が参加。一時帰国中の津守滋・駐クウエイト大使(前OSIPP教授)のあいさつや、参加できない卒業生らのメッセージ紹介などもあり、久しぶりの再会を喜び合った。

初の懇談会、星野、小林両氏が報告

 同窓会「動心会」の懇談会が6月11日、大阪ガスエネルギー・文化研究所で開かれた。同会では年次総会以外に会員の情報交換・親睦の目的で不定期の催しを企画しており、今回は報告を中心にした懇談会を開催、夕食を取りながら活発に意見交換をした。
 まず小林義彦副会長(関西経済連合会事業推進第1部課長)が企業倫理の問題について報告、同連合会で実施した企業倫理や商道徳に関する調査、アンケート、提言などを説明した(調査結果などは「企業倫理の現状と社会制度の再検討」『日本経営倫理学会誌』第6号などに掲載)。
 続いて、星野俊也助教授がコソボ危機を解説。国連安保理による授権決議の不在、空爆後にむしろ人道的危機が深刻化した矛盾、地上軍を派遣できない政治的困難などの問題点を指摘し、空爆停止・和平にいたる外交フォーラムにおける対応の経緯を説明した。


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