黒澤研究科長

同窓会で講演

「核の先制不使用を」

 黒澤満研究科長は7月10日、OSIPP同窓会「動心会」総会で「核軍縮と国際平和」と題した記念講演を行った。
 同研究科長は、まず冷戦終結から10年経った現状にふれ、「地球上の全人口を25回殺せるのが、7、8回に減ったからといって意味があるのか」と核軍縮の停滞を慨嘆。その上で、「核兵器は政治的、軍事的価値があると思うからインド、パキスタンなど核を持とうとする国が出てくる。核軍縮を進めるためには核を持っても意味がないと思わせることが重要で、その第一歩となるのが『核の先制不使用』」と説く。核の先制不使用は核で攻撃されない限り核を使わないと宣言することで、ドイツやカナダなどが提唱している。
 日本の場合はアメリカの核の傘にあるため、外務省などはこの考えには反対。しかし同研究科長は「日本をテポドンミサイルなどからどう守るかという発想だけではなく、日本の安全にはまず世界全体が平和になることが必要という逆の発想も必要」と指摘、「『こうすればアメリカが嫌がるのでは』などと心配するバイ(2国間)の関係ばかりでなく、カナダやオーストラリアと組むようなマルチ(多国間)の枠組みでの核軍縮を進めていくべき」と結んだ。
 なお、同タイトルの著書が今秋、有斐閣から出版される。


―論文博士審査会―

企業倫理とホイッスルブローイング

城西国際大 上園氏

 IPP(International Public Policy)研究会を兼ねた博士論文公開審査会が7月1日、講義シアターで行われ、城西国際大学教授の上園忠弘氏が「企業人の情報倫理―ホイッスルブローイングを軸として−」と題した博士論文の要旨を報告した。
 上園氏は、近年、企業不正、不祥事が多発する中、問題があれば指摘できる企業風土造成の筋道を探るための1つの解決法としてホイッスルブローイングの有益性に着目。これは、公共の利益を脅かす怠慢、悪用、危険の存在を知る人が、注意を促そうと警報を発することと定義され、また、優れて倫理の問題であり、いわゆる告発とは別個のものと説明される。
 このホイッスルブローイングを企業内で機能させるためには、信頼性、権限、知識、及び独立性が必要とされ、監査役、監査役会がその受け皿の例として指摘された。
 野村美明教授から「ホイッスルブローイングを奨励する際に罰せられることのないよう基準が必要でないか」、また林敏彦教授からは「企業内でセクハラからコンピューター犯罪まですべてホイッスルブローイングを適用しようとしているのか」など活発な質問があり、議論が続いた。


新しいパンフ、ポスター出来

 

パンフレットとポスターの改訂版がこのほど出来上がった。パンフレットは新校舎の案内など含めA4版30頁。今年は新校舎の外壁にちなみ、薄いサーモンピンクの色調で統一された。入学志願者などに配布される。


国際公務員への道

OSIPP学会講演会で外務省 伊藤氏

大阪大学国際公共政策学会(OSIPP学会)主催の講演会が7月1日、OSIPP棟・講義シアターで、外務省国際機関人事センター所長の伊藤光子氏を招いて、「国際公務員への道」と題して行われた。
 伊藤氏は、まずビデオを上映し、元国連事務次長、明石康氏の「恵まれていない国に行って、汗を流すことに喜びをもてる人を国連は求めている」といったコメントなどを紹介。次いで、国連への分担金拠出が日本はアメリカについで世界二位(全体の約20%)を占め、この額に応じた望ましいとされる国際公務員の数が226〜305人とされていること(1998年度データ)に対して、現在104人の日本人しか国連事務局で働いていない現実を指摘。
 そのうえで、国際公務員に望まれる要件として、まず使命感、ビジョンのあること、本当に国際的に誰かのために何かをしたいとアピールできる人、語学力(日本人はまず英語力)、どんな分野であれ一貫した自分の専門性があること、そして3年程度の実務経験などを挙げた。若い大学院学生は、NGOなどでの活動や国連機関などでのインターンシップが実務経験の点で評価されるとアドバイスした。


ODAとJICAの役割

高島氏が講演

 OSIPP学会主催による講演会が5月13日、OSIPP棟・会議室で開かれ、JICA(国際協力事業団)企画部企画課課長代理・高島宏明氏が「我が国のODAとJICAの役割」と題して講演した。同氏は、国際協力の理念と経緯、開発教育の仕組みと予算、途上国における技術協力の現場などについて解説。OSIPPでは開発問題に取り組む学生が多く、この日も20人あまりの院生が参加、質疑の時間では、国際協力の実態について率直な意見交換があった。また、JICAの採用計画についてもアドバイスを受けた。


次へ        戻る