学生が授業を評価

率直な意見、教官の励みにも

 学生が自分の受けた授業について評価を行う「OSIPPの授業に関するアンケート調査」の結果がこのほどまとまった。COEタスクフォースが98年度の開講科目のうち46の授業を対象に実施したもので、授業中に学生に無記名で回答してもらった。結果は冊子にまとめられ、コピーはできないが学生は事務室で自由に閲覧できる。教官名は載らないが授業名は明記され、結果に対する教官からのコメントも併記されている。
 質問は「わかりやすい説明」「自分は授業の事前準備を行った」など25項目で、これに5段階評価で回答。概して好意的な評価が多いが授業によっては否定的な答えも。学生のコメントでは「時事評論もすばらしい。この先生の授業を増やして」「専門外の学生でもわかるように教えてもらい温かい人柄も伝わる」といったものから、「学外の講師といっても学部の授業と変わらない」「場当たり的で休講が多い。補講は社会人が出席しにくい」といった批判もあった。教官は「よくない評価にはいい気がしないが、よい意味で励みにしたい」「理解が浅いとわかったので平易化を図る」などとコメントしている。


OSIPP学会が総会

中本大阪大使が中東情勢を講演

 大阪大学国際公共政策学会(OSIPP学会)の総会が5月6日、講義シアターで開かれた。同学会は昨年5月に発足、主にOSIPPの教官、学生、卒業生らが会員になり、紀要の発行や講演会を主催している。総会では黒澤満会長のあいさつの後、村上正直助教授が昨年度の活動について報告。昨年度は2回の紀要発行、5回の講演会などがあり、その決算、今年度予算などと合わせて承認された。
 引き続いて、OSIPP学会講演会として中本孝・大阪担当特命全権大使による講演があった。同大使は在イスラエル日本大使館参事官、駐モロッコ大使を務めるなど中東関係が長く、湾岸戦争での実体験なども交えてイスラエル問題について解説。和平プロセスの経緯、エルサレムの最終地位問題、パレスチナの経済的基盤の弱さなどを指摘し、周辺国で作る中東版ベネルクス3国のような考え方も示唆した。


紀要『国際公共政策研究』を発行

3巻2号 

松重論文・欧米製薬企業R&D部門の人事処遇など16編

 OSIPPが編集・発行する紀要『国際公共政策研究』第3巻第2号(1999年3月)がこのほど発行された。通巻4号目の今号はOSIPP教官、修了生、博士後期課程学生による論文16編を掲載している。
 松繁寿和助教授の「欧米製薬企業R&D部門における採用、賃金、昇進」は米、英、独の製薬会社6社を対象にその研究・開発部門の人事処遇制度を実態調査したもの。先行研究が手薄で、日本の同種企業に対しても示唆に富む。研究体制、学歴、昇進、賃金などを比較分析、その結果、研究体制ではプロジェクトごとに再編され大学の研究室のような形はまれ、アメリカではPh.D.とそれ以外の線引きが明確、才能ある者の昇進が特に早いわけではない、昇進、賃金、査定においても特段日本と違う制度ではない、報償制度としてはドイツの特許制度とアメリカのストックオプション制度が注目される――といった点が指摘されている。
 加納正二助手(現・摂南大助教授)の「中小企業貸出と不動産担保」は都市銀行・上場企業間のメインバンク・システムと比較しながら、地域金融機関と中小企業の継続的関係を分析。後者をRシステムと呼び、不動産担保と密接な関係がある点などその問題点を考察、産業構造の変化に対応した新しい審査制度、リスク管理体制の構築を示唆している。
 阪口規純助手(現・講師)「国連の集団安全保障と日本−国連軍参加に関する政府解釈の変遷−」の中で、日本の長期的課題として、国連の軍事的強制行動への参加問題について論及。国連加盟後、今日に至る国連軍参加に関する政府の憲法9条解釈の推移を詳細に分析することによって、国連指揮下の「国際公共価値」実現のための武力行使は憲法上、可能な余地があることを明らかにした。
 この他、OSIPP修了生(博士取得)で(株)モリテックス名古屋支店長の岡田広司氏の論文、学生の論文12編所収。

『国際公共政策研究』3巻2号所収論文

▼松繁寿和「欧米製薬企業R&D部門における採用、賃金、昇進」

▼加納正二「中小企業貸出と不動産担保」

▼阪口規純「国連の集団安全保障と日本―国連軍参加に関する政府解釈の変遷―」

▼岡田広司「通信ネットワーク販売の特徴と市場均衡価格」

▼饗場和彦「国際関係の理論的枠組みからみた人道的介入の一考察:ホッブズ的、グロティウス的、カント的、マルクス的視角から」▼岡田康志「フィリピンにおける電気通信政策の変遷と今後の課題 ―競争政策を中心に―」

▼藤川純子「フランス法における著作者人格権と権利濫用論」

▼三好博昭「移民受入による我が国人口構造の変化」

▼Hooi Lai Wan,"A Comparative Analysis of Human Resource Management Between Japan and Malaysia in the Auto manufacturing Companies"

▼井上市郎「情報モデルと流通システム―流通システムの情報構造分析―」

▼大笹みどり「1989年東独革命についての一考察―党員革命と民主的社会主義党の成立―」

▼OKAICHI Shina,"The Promotion of Participatory Development: From the Perspective of Japan's ODA"

▼後藤宇生「時限保護期間と企業行動―日本の石油産業のケ−ス―」

▼井戸充茂「欧州連合におけるSpatial Policyの形成と影響―都市政府研究序論―」

▼岡田仁志「サイバ−社会のプライバシ−― EU型と米国型の調和はありうるか―」

▼服部あさ子「ILO強制労働条約と『従軍慰安婦』問題―ILO条約勧告適用専門家委員会による条約違反認定の法的妥当性―」


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