院生群像

アジア経済研究所に就職

内田 陽子さん(D1)

失業率が過去最悪を記録する中、D1でありながら一流の研究機関に採用が決まったとあって、連夜、OSIPP内外の友人らから祝杯が向けられている。ただ当人は、やっていけるかという不安と、初めて大阪を出て東京で暮らす寂しさが交錯して、明眸皓歯(めいぼうこうし)に憂いも、のぞく。
一貫して東アジアの経済をテーマにしてきた。きっかけは、同志社大の経済学部時代に「安く行けるから」と東アジア諸国を旅行、その際、旧日本軍による戦禍を目の当たりにしたこと。「今の日本の繁栄している立場から、何かアジアの国にしなければ」との思いがわいて、以後、視点がアジアの経済発展に定まった。
96年にOSIPPの修士課程に入学、辻正次教授のもとで学び、修士論文では「クルーグマン仮説」に反論する立場から、アジア経済の発展性に関して分析を試みた。博士後期課程に進学したが、「自分の食い扶持(ぶち)を早く欲しかったし、3年もOSIPPにいるので新しい空気が吸いたい」という思いがあって、アジ研を受験してみたそうだ。
趣味、好奇心が多方面にわたり、「もったいないから」と夜もあまり寝ないたち。中でも絵は小学校から習いはじめ、佐伯祐三、マチスあたりが好みと言う。
アジ研は7月に日本貿易振興会と統合され、職員は約250人。研究員としては所内で最年少クラスなので"雑巾がけ"は覚悟の上、「東アジアにおける直接投資と技術移転の関係を分析したい」と才媛、意欲に満ちている。


Next| Back