米原、床谷助教授教授に昇進

OSIPP助教授の米原謙(よねはら・けん)氏と床谷文雄(とこたに・ふみお)氏の教授への昇任が、6月18日に開かれたOSIPP研究科委員会(教授会)で承認された。7月1日付けで発令された。
米原教授は1948年生まれ。阪大法学部卒、法学修士(阪大)。阪大法学研究科博士課程単位修得退学後、下関市立大学講師、同助教授、阪大教養部助教授などを経て94年からOSIPP。専門分野は日本政治思想史、日本政治論。主著は『日本近代思想と中江兆民』(新評論)、『植木枝盛』(中公新書)、『日本的「近代」への問い』(新評論)など。

床谷教授は1953年生まれ。阪大法学部卒、法学修士(阪大)。阪大法学研究科博士課程単位修得退学後、神戸女学院大学助教授、阪大教養部助教授などを経て94年からOSIPP。専門分野は民法、家族法。主な著書、論文は「夫婦別氏制と戸籍制度の再検討」『民商法雑誌』(101巻2・3号)、『講座現代債権と現代契約の展開 第6巻』(共著、日本評論社)、『サイエンス・オブ・ロー事始め』(共著、有斐閣)など。


橋本(日)教授経済学部長に

橋本日出男・大阪大学大学院経済学研究科教授(OSIPP協力講座教授)は5月14日に開かれた経済学研究科教授会で、経済学研究科長および経済学部長に選任され、6月24日に就任した。任期は2年。前任の本間正明教授(前OSIPP教授)は同日付けで副学長に就任した。
橋本教授は1937年生まれ。東京大学経済学部卒、イリノイ大学でPh.D.取得、世界銀行にエコノミストとして約16年勤務し、93年から阪大経済学部の教授。94年からOSIPP教授も併任し、比較経済発展講座を担当している。専門分野は経済発展論、途上国経済論。


助手に白井、小原氏

OSIPPの助手に白井剛(しらい・たけし)氏が7月1日付けで、小原美紀(こはら・みき)氏が7月16日付けで、それぞれ採用された。
白井助手は1972年生まれ。大阪大学基礎工学部情報工学科卒、同大学院基礎工学研究科情報数理系専攻修士課程修了、98年4月から同博士後期課程に在学、6月に同課程退学。専門分野はマルチメディアとネットワーク関係。OSIPPではデータ室をはじめネットワークの管理、運営などにあたる。
小原助手は1972年生まれ。横浜国立大学経済学部国際経済学科卒、大阪大学大学院経済学研究科修士課程修了、97年4月から同博士後期課程に在学、98年7月に同課程を修了し博士(経済学)の学位を取得。専門は理論経済学、特に家計の労働・消費行動などの実証分析。


阪大評議員に辻教授

辻正次教授はOSIPP研究科委員会(教授会)で、大阪大学評議員会の評議員に選任され、6月24日付けで就任した。評議員会は阪大の最高意思決定機関で、OSIPPからは研究科長を含め2名が評議員を務める。辻教授は伊藤公一教授の後任として選任され、任期は2年間。


東アジア経済セミナー

米のシンクタンクNBERとOSIPP、阪大経済学部などが共催した国際会議「第9回東アジア経済セミナー」が6月25−27日、大阪・コスモスクェア国際交流センターで開かれた。
「経済発展における対外直接投資の役割」がテーマで、林敏彦教授、辻正次教授、高阪章教授、コリン・マッケンジー助教授らが参加した。



インターネットの課題を議論

OECDとの共催国際会議

OECD(経済協力開発機構)とOSIPPが共催するワークショップ(国際会議)が6月11、12日、大阪・千里ライフサイエンスセンターで開かれた。「インターネット:融合の進展とセルフガバナンスのあり方(The Internet: Convergence and Self-Governance)」のテーマで、産・学・官それぞれの技術者、研究者、実務家らが活発な議論を展開、国外からも含め、両日で約150人が参加した(=写真)。
OECDのICCP(情報コンピュータ通信政策委員会)では隔年に国際会議を開いており、3回目となる今回のワークショップをOSIPPが誘致、日本では初の開催となった。
会議では、黒澤満OSIPP研究科長のあいさつの後、8つのセッションが組まれ、各テーマの専門家が報告。マルチメディアと呼ばれる多様な情報通信インフラが融合していく現状、その過程を検証するとともに、その結果生じる問題に対する手法としての、望ましいセルフガバナンスのあり方を議論した。
第5セッションで議長を務めたOECD科学技術産業局のディミトリ・イプシランティ氏は、インターネットの発展には外部の当局からの規制、介入を避け、セルフガバナンス(自己管理)に任せた方が適切で、そのコンセンサスができつつあると指摘。他方、第8セッションのパネリストを務めた林敏彦教授は「競争の原理だけに任せても、市場の失敗の危惧、ポルノや知的所有権の問題もあり、何らかのレギュレーション、政策的介入の余地はあるのでは」と報告した。
会場の別室ではインターネットサービスが利用できるようにノート型PCが設置され、「インターネットのない社会なんて考えられない」と言う参加者らが、多数利用していた。

日本側事務局として会議を調整した辻正次教授は「自由な議論ができて成功だった。インターネットは完成の域からみるとまだ1%ぐらいの進み具合。規制をしない方が発展の可能性が大きい」と話していた。


IPP研究会7人が報告

IPP(International Public Policy)研究会が開かれ、4月23日は東海大学教養部助教授 の堀要氏が、6月16日は世界銀行のKwang Woo Jun氏らが、6月23日はOSIPPの李利範氏(D3)が、7月2日はタイ・チュラロンコン大学助教授のKamchai Laismit氏と米・オハイオ州立大学助教授のEric Fisher氏が、それぞれ共通教育管理講義棟などで報告を行った。
堀氏は「日本政治の実証分析」と題して報告。1970年代後半から93年総選挙までの「自民党一党支配体制」という政治システムを、経済モデルを用いて分析し、そのシステムの中で取引される「財」としての公共事業・補助金が自民党体制を維持していた要因であると指摘。同党の得票と公共事業の相関関係を統計的に実証した。同氏の報告は論文博士の学位審査会として行われ、主査の林敏彦教授や副査の教官らから活発な質疑が向けられた。
世銀の経済予測グループ首席フィナンシャル・エコノミストであるJun氏は「アジア金融危機を受けての開発途上国に向けた資本流入」というテーマで話し、金融の透明性の確保など適切な政策が取られればアジアに対する資本の流入は復活するという「慎重な楽観論(cautious optimism)」を解説。経済分析局副総裁付き上席アドバイザーのSarwar Lateef氏は世銀の開発指標から見た、途上国のこれまでの開発実績と今後の見通しを分析し、経済データグループ上席情報担当官Abdolreza Farivari氏は世界の開発金融データのCD-ROMを紹介した。
「政治的アクターの合理性」について報告した李氏は、合理的選択論におけるアクターの合理性について社会認知心理学の視点から分析。経済的アクターの場合と違い、政治的アクターとしての投票者の行動を考える場合、@情報の認知にステレオタイプやバイアスが多い、A安定的な選好が乏しい、B説明変数が多様、C感情や信念の関与が深い、などの特徴が認められ、合理的選択論だけでは説明がつかない限界を示した。


タイ通貨危機の原因を分析

Laismit氏はタイの通貨危機について解説し、その原因について@民間の短期的外債務の急増、A輸出・株価・不動産の低迷による不信感、Bタイ中央銀行の誤算と政策的失敗などを指摘。アジア経済再建のためには日本の高金利政策が必要と述べた。
「Dynamic Trade Creation」のテーマで報告したFisher氏は世代重複モデルを利用した内生成長モデルによって、関税同盟や自由貿易協定が世界貿易全体に与える影響を検討。1財のみ扱う従来の内生成長モデルと違い、消費財と中間財の2財に拡張して分析を行った。


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