林教授が記念講演

設立総会に引き続いて、学会主催による初回の講演会として、林敏彦OSIPP教授(前研究科長)が「サイバー社会の法と経済」と題した記念講演を行った。同教授は「コンピュータにより電子化された情報の交換できる社会」であるサイバー社会が、今後発展していく上での課題を展望。「電子マネーなどの取り引きや都市のあり方、大学、メディア、さらに人も変化していく。法的には、ほとんど無コストで完全なコピーが安価に大量にできる点が一番問題。法の解釈学ではなく、立法論的観点が必要になる。また、市場の原理だけでは解決できない面があり、規制の余地も残る」と、多角的な分析を示した。その上で、サイバー社会と人間の身体性・肉体性との問題を指摘、「視覚と聴覚によるヴァーチャルリアリティが脳細胞に集約されていく一方、人は地面から足が離れていく不安を感じるはず。今後は皮膚感覚、ふれあいなどを大事にする、ある種のファンダメンタリズムも必要」と話し、「大学も単に知識の生産、伝達だけの機能なら学生は家でコンピュータを使い登校しなくなる。大学の衰退を避けるには、皮膚感覚の維持が大事」と結んだ。



加の川崎助教授も報告

また、第2回の同学会講演会が5月25日、共通教育管理講義棟で開かれ、サイモン・フレーザー大学(カナダ)政治学部の川崎剛助教授が、日本外交のマルチラテラリズム(多国間主義)について講演した。従来の日本外交ではマルチラテラリズムは「日米安保を弱体化するプロット」として警戒されたが、1991年中山太郎外相(当時)はASEANでアジアにおける多国間安全保障を提案。同助教授は「この180度の方向転換」について、ARF(ASEAN地域フォーラム)に対する見方の相違に着目して分析、外務省の「日米同盟は堅持するがそれだけでは不安。ARFは対日不信感を取り除き、疑心暗鬼を避けるため情報の透明性を高める上で必要」という見解を、「理想主義」の立場、「現実主義」の立場、その中間的な「合理的制度論」の立場から検討した。


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