同窓会が正式発足へ

OSIPPの同窓会が正式に発足することになり、7月11日、阪大・待兼山会館などで設立総会が開かれる。

これまで1期生を中心に同窓会活動はあったが、修了生が100人を超え、OSIPP創設 5周年という区切りも控えることから、これを機会にOSIPPの卒業生と、教官、在校生相互の親睦、ネットワーク作りを促進し、OSIPPの発展に資するため、正式な組織として発足させることになった。

今後、発起人会が開かれた後、設立総会で、規約や役員人事などが議決される運び。

当日は“OSIPP生みの親”である川島慶雄・初代研究科長、蝋山昌一・ 前OSIPP教授らの設立記念講演や、記念パーティなども開かれる予定。


事務関係の体制一新

大学院係長に森本氏

OSIPPの事務を担当する国際公共政策研究科等事務部大学院掛の体制が4月1日から変わり、掛長には森本幸男氏(前法学部教務掛長)が就き、掛員として高岡木綿子氏が採用された。大学院掛長だった長島幸治氏は学生部学生課専門職員へ、同掛員の林典子氏は国際公共政策研究科等事務部教務厚生掛へ、それぞれ異動した。

奨学金、授業料減免申請などを扱う教務厚生掛主任には山西敏樹氏に代わり、井上芳郎氏が就いた。

また資料室などを担当する事務助手として田中里実氏、木下真由美氏が、データ室の事務補佐員として米谷博恵氏がそれぞれ採用された。


書評

  辻 正次 『エコノミックス・イン・アクション−経済・社会の動きを読む』

        日本評論社 1997年 

 英国の高級紙『ガーデイアン』が橋本首相滞在中の4月3日付紙面の一面トップで、「日本経済は崩壊寸前」と報道するなど、日本の今後の経済運営に対する関心が急速に高まっている。このように、バブル崩壊後、かっては外国からも称賛の対象であった「日本型システム」の問題点が各分野で噴出している。北海道拓殖銀行の倒産、山一証券の 自主廃業、金融機関を中心とする総会屋への利益供与事件、 銀行等の「貸し渋り」による企業倒産、大蔵省の官僚および日本銀行職員の汚職事件などは、良好なパーフォーマンスを誇ってきたと云われている「日本型システム」とは一体何であったか、という根本的な疑問を国民に抱かせざるを得ないだろう。

 このような今日的な関心から、本書『エコノミックス・イ ン・アクション』を繙いてみると、トップ・クラスの理論 経済学者である著者が、現代経済を鋭く分析する視点が各所に見いだせる。たとえば、第2章バブル・金融不安の経済学では、バブル発生の原因を、「プラザ合意時の経済の状況は、(中略)いわゆるマインド不況である。(中略)日本史上初の円高に対処するため、(中略)、自律的な景気が上昇するまさにその時に、超大型の財政政策が実施された(後略)」とし、またその後の不況の原因が、「過度の景気引き締め政策」および財政政策の運営の誤りと、その結果政府が「市場の信頼」を失ったことという鋭い指摘がなされている。以前に書かれた文章であるにもかかわらず、つい最近書かれたもののような錯覚を覚えてしまうほどである。 その理由は、著者が伝統的な経済理論をベースとしながらも、冷静な眼で現実経済を観察し、その理解のために新しい概念を付け加える作業を丹念に行っているからである。

 このように、本書はさまざまな観点から、日本経済の基本的な問題点の指摘と改革の方向性を示唆し、また他方では日本経済の新しい動向を取り上げ、既存の体系の拡張およびその見直しを図っている。前者の範疇に属するものは、第2章バブル・金融不安の経済学、第3章日本社会の深層を探る、第4章日米の経済システムを比較する、である。一方後者に属するものは、第1章いま大学がおもしろい、第5章草の根の国際交流、第6章東アジアの経済発展と日本、第7章新しい地方の時代、第8章インターネットの経済学、である。各章のテーマはそれぞれ今日的なものであり、興味深い内容であるが、ここでは、「パソコンおたく」を自認する著者の真骨頂が示されている第8章を取り上げてみよう。1970年代後半にインターネットと出逢った著者は、個人としてその有用性と楽しさを存分に享受しながらも、他方で経済システムの一部としてのバーチャル・ショッピングモールなど の実用化に伴う問題点も冷徹に指摘している。インターネットが経済を大きく変えるには、ユーザー・インターフェ イスの改善、アドレス帳の整備、消費の慣性を変えるきっ かけ、日本企業内での意思決定方法の変化などが必要との結論を得ている。つまり、インターネットに代表されるような新たな革新的な手法を受け入れるためには、日本人の意識および日本型システムが大きく変わる必要があることを、経済学の視点から指摘している。

 経済は「いきもの」であるとよく言われるが、激動の今日ほどその言葉がよく当てはまる時代はないであろう。基礎的な経済学を学んだ次のステップのテキストとして、また活きた経済をはじめて学ぼうとする人々に、必須の文献として本書を推薦したい。

齊藤 愼 (公共経済学、大阪大学大学院経済学研究科教授)


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