座談会
就職活動を振り返って

就職協定がなくなった今年、OSIPPの院生(修士課程2年)はどのような就職活動を行ったのか。院生としての有利、不利、企業の採用形態、後輩への助言などについて、就職の決まった4人の院生に語ってもらった。司会は松繁寿和助教授(労働経済学)。参加者は橋本佳苗(プロクター アンド ギャンブル ファー・イースト・インク)、坂根徹(JETRO)、戸田啓太(JPモルガン)、成瀬太郎(日立製作所)(敬称略)。
- 就職活動の時期
坂根「学部生は出足が早かったが、私は3月初めからスタートして4、5月がメイン、5月末ぐらいで絞り込んで、6月に面接、7月初めに決まりました。去年より一月は早くなっていた感じです」
成瀬「就職協定がなくなって、やはり間延びした感じはありました」
戸田「いつ始まるのか、最初はプレッシャーがありましたが、流れに乗ってしまえば、協定のあるなしはあまり意識しませんでした。でも、アメリカの友人に話したら、来年4月の採用なのに、なぜこんなに早くやるのか理解できないと言ってました」
- 院生は情報が得にくい
橋本「学部生に比べ、院生は情報量で大きく劣っていました。私が学部4年の時は山ほど資料がきましたが、今回は全くなし。女性はさらに不利で、男子学生と同じように資料請求しても、私のところには来ないこともあった」
坂根「院生はあまり企業のリクルーター制の対象になってないみたいですね。私も学部生とお茶を飲みに行って情報を集めました」
松繁「OSIPPでは同窓会名簿などがなく、企業側も接触しようがないのでしょうね。OSIPP側から積極的に就職希望者の名簿を出すのも手かもしれません。情報不足は結局解消されましたか」
成瀬「学部4年生の弟も就職活動したのですが、量としては挽回できませんでした。でも彼はかえってそれに振り回されていました。院生でも努力すれば必要な情報は手に入ります。接触が早いから受かるというものでもないし」
- 院生の評価のされかた
橋本「私は労働経済を勉強してて、人事の仕事をしたいと思ったんですが、そういう専門性が会社のニーズと合えば、院生は高く評価されると思います。」
坂根「私も院で勉強した、経済摩擦やアメリカ経済の知識、関心を会社で生かしたいと言ってアピールできました」
成瀬「国際政治学を専攻していた私は、その点はアピールしにくかった。ただ、なぜ院に進んで、なぜ博士後期課程に行かないのかを明快に答えられるなら、院生であることはメリットになると思います。たとえば分析能力があるとか、目的意識が高いとか」
松繁「そういう分析能力とか論理的思考、専門知識とかは企業においても、絶対、大事ですよね。ところが、今の時点ではそこが逆にデメリットになることもある。つまり、真っ白な状態の人材を欲しいので、院生より学部生を採る…」
戸田「私は外資系ばかり回ったんですが、どこでも院生であることは歓迎され、特に不利は感じませんでした」
松繁「採用してから教育、投資を施すか、教育、投資をされた人材を採用するかの違いなのでしょう。日系企業は前者が多いですよね」
成瀬「文系の院生を門前払いしていたのは一社だけでしたが、そもそも企業の書類に○○学部という欄しかないところが多く、まだまだ院生を受け入れる体制はできていないんだと感じました。業種によって違いはありますが」
橋本「私も『文系の院生は法務しかとってないから』『雇用体制ができてないから』と言われることが多かった」
坂根「院生は使いにくいという、マイナスの先入観が根強いのではないでしょうか。頭でっかちで、コミュニケーション能力がないとか」
成瀬「ちゃんと面接していただければ、そうじゃないとわかってもらえるんでしょうけど」
戸田「まずその最初の壁を突破すれば、院生であることのメリットは大きいと思います。少なくとも2年は余計に物事を考えてきたんですから」
松繁「最近は院生が増えているが、その受け皿としての企業側では、まだ認識、体制ともそれに追いつけてなく、模索しているという段階なんでしょう」
- OSIPP院生としての強み、弱み
成瀬「実践的な教育を行う点で企業側に好感もたれてると思います。このためOSIPPは、伝統的な研究科に付きまとう『頭が固い』といったイメージからは遠く、これも大きな強みです」
橋本「ネゴシエーション、ディベートなどの授業も関心を集めてました」
戸田「社会人も交えて、幅広い勉強ができる点も評価されてました」
橋本「一方で、OSIPPとしての知名度はほとんどゼロでした」
坂根「電話で名乗る時『大阪大学大学院の国際公共…』とか言っても一回ではわかってもらえず、理系ですか、文系ですかって聞かれたり」
戸田「OSIPPといってもまず評価されるのは、IPP(国際公共政策)の方ではなく、OS(大阪大学)の方なんですよね」
松繁「新しい研究科だからしようがないのでしょうが、今後、名前を売っていく努力は一層必要ですよね。それとOSIPPとしての就職活動支援の体制作りも必要でしょう」
橋本「そうですね。体験談を毎年ストックするとか、先輩の名簿作成とか」
- 就職活動する人へのアドバイス
橋本「友達と連絡を密にして情報を交換すること。英語力も買われるのでTOEICなど何か証明できるものを」
戸田「外資系は一般にスプリングジョブ(インターンシップ)をやっているのでそれに申し込む。アプリケーションの際は自分の論文とかもつける」
橋本「何を勉強したか問われるので、レジュメを作り面接の際に配りました」
坂根「遠慮しないで先生に相談することも大事。また、業種によってはかなり不透明なことやってるので要注意」
戸田「自分の専門分野の知識も大事だが、企業が求めるのは会社での業務をやりこなせるポテンシャルだと思う。それを磨く勉強をすべきだと思う」
松繁「皆さん、今日はご苦労様でした」