OSIPP授業百選

国際公益システム特殊研究15 英語論文の書き方
コリン・マッケンジー助教授

国際問題学ぶなら英語で書け
実践的スキルを親身に指導

 

 「英語論文を書く学生は少ないのが現状。しかし、国際公共政策研究科に在籍し、国際的関心事項を研究し論文を書く以上、その論文は英語で書かれるべきではないか。特に、博士後期課程の学生は、学者を目指すなら英語で論文を書けなければならない」(コリン・マッケンジー助教授)。この授業ではネイティブスピーカーである同助教授が英語で論文を書く際のスキルを親身に教え込む。OSIPPではこの他、野村美明教授が「英語文献の読み方」を開講、また林敏彦教授の「現代日本経済論」は英語で講義が進められており、学生の英語力の向上も図られている。
「Publish or Perish」は研究を論文で公表しなければ職を失いかねない米国の大学教員の立場を表す表現として有名だが、「OSIPPに限らず日本の学生は、論文を書く必要性に対する認識が弱いのではないか」と感じたことも開講の理由と言う。
ほぼ毎週、英語での課題を課せられる。学生は課題を事前に電子メールで同助教授に送り、授業ではパソコンでそれをスクリーンに映して指導する。
Abstract、Introduction、Conclusionを実際に書くことによって「何を、どう書くべきなのか」を知ってもらう。そして課題を比較し「どれが、なぜ良いのか」を論じ、学生同士で批評しあう。そのうえで、同助教授が一人ひとりの論文について批判しアドバイスを与える。
最初、学生は書いたものを他人に批判されることに慣れていないが、次第に学生側からも互いに批判が出るようになった。
また、研究者になるとジャーナルから依頼されて投稿者の論文を読み、審査報告書を書くことがある。授業ではこの審査報告書を書くという形の練習もある。他人の論文、しかも、専門分野以外の論文をどのようにして批判、評価するのかを考えることで、実際に投稿した場合に自分の論文がどう評価されるのかを知ることができる。
学生に最も好評なのは「コリンの投稿体験談」。小西ふき子さん(M2)は「6回もRejectされジャーナルに載るまで14年かかった苦労話などきくと、論文を書くための技術だけでなく、心構えや厳しさを知ることができる。投稿、審査過程、Rejectされた場合の書き直し方など実践的な知識が得られ面白い」と話す。
少人数制で宿題もあり、全員に発言が求められるという厳しさがあるが、実践的知識を身につけるというOSIPPの理念に沿う授業として、教官、学生ともに意欲は高い。


院生群像

国連環境計画に勤める社会人学生
星野麻美さん(D2)


社会貢献したいと国連へ

 国際関係の仕事に就きたい、そのためには語学をと、東京外国語大学に進学、インドネシア語を学んだ。卒業後、一旦OLをしたが、すぐ「嫌気が差し」カリフォルニアのMonterey Institute of International Studies に留学、Master of Public Administrationを取得した。
 「留学中が人生で一番勉強した時期。泣きながら勉強して」1年目が終わった夏休み、国連本部でのサマー・インターンシップに参加した。午前中は国連のレクチャーを受け、午後は配属先で仕事を補助。これがきっかけで国際公務員を志望する。留学2年目はその目標にあわせて試験対策の勉強に専心。90年、国連の一般競争試験と日本のJPOの両者を受け、ともに合格を果たした。
 国連ではアフリカ・ナイロビにある国連人間居住センター(Habitat)に赴任、91年から3年近く勤め、広報、出版物の管理などを担当した。94年6月から大阪にある国連環境計画・国際環境技術センター(UNEP-IETC)に移り、人事、予算、財務など組織の内部運営にあたっている。
 「日々の仕事にただ流れていくだけにならないよう、学術的・理論的な意味付けをしたい」と思い、99年OSIPPの博士後期課程に入学。環境技術移転をテーマに、行政学アプローチから、途上国への技術移転を促進するにはどうすればいいか、研究している。しかし社会人学生に対するOSIPPの体制の不十分さもあり、苦労もあるようだ。
 "遠距離夫婦の会"を友人と作っている。夫はケニアのHabitatに国土庁から出向していた男性で、現在はパリに赴任中。国際的な仕事をする男女にとって別居はある程度宿命だが、「毎日電話するようにして距離感を埋める努力をしている」そうだ。
 「誰でも社会貢献したいと思って働いているはずで、違うのはどこに社会貢献したいか、何を人生の目的とするかということ。国連はそのひとつとしてやりがいは大きい。女性の働きやすさは保証できるので、ぜひ多くの日本人女性に来て欲しい」と話している。


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