論文博士、飯田氏、櫻田氏に

 「寡占化での共有資源問題」「カナダ外交政策論の研究」

 IPP研究会を兼ねた博士論文公開審査会が11月4日、OSIPP棟で開かれ 京都産業大学経済学部専任講師の飯田善郎氏が、「寡占下での共有資源問題」と題して発表した。
 知的所有権の問題やCO2排出許容量についての問題等、共有資源問題が重要性を増していることをふまえ、寡占状況下で資源を共有する経済主体の行動を分析することが研究の目的。微分ゲーム及び多段階ゲームというゲーム論の手法を分析に用いた。論文の主要部分は3部からなり、それぞれ主体の戦略に所有権の有無、不完備情報、非対称の不完備情報が与える影響を分析している。結論としてパテント保護制度は主体間の技術取引市場なしには経済成長に望ましい効果を与え得ないことや、両主体の利得において情報の完備性が望ましい場合と望ましくない場合の両方があり得ることなどを示した。
 審査委員の橋本日出男教授(主査)、林敏彦教授、下村研一助教授、二神孝一助教授らが審査し、11月18日のOSIPP研究科委員会(教授会)で博士(国際公共政策=論文博士)の学位授与が議決された。
 飯田氏は早稲田大学商学部卒、大阪大学大学院経済学研究科修士課程を経て94年、OSIPP博士後期課程に入学、95年に退学して同助手となり、98年から現職。
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 また同様に1月12日、関西学院大学法学部助教授の櫻田大造氏が「カナダ外交政策論の研究―トルドー期を中心に」と題した論文について発表。
 同氏は1968年から84年までのトルドー、クラーク時代を対象に、パワー・イメージ・アプローチによって外交政策、行動、結果を三類型することにより、国際関係理論とカナダ地域研究を統合できると指摘。従来のカナダ研究ではカナダ外交をミドルパワーとして見るが、37の外交事例の実証分析から、外交過程ではカナダはプリンシプルパワーとしても振舞っていることなど、カナダ外交の本質を再構築する視点を提示した。
 審査委員の黒澤満教授(主査)、米原謙教授、星野俊也助教授らが審査し、1月20日の研究科委員会で博士(国際公共政策=論文博士)の学位授与が議決された。
 櫻田氏は上智大学外国語学部などを卒業、トロント大学大学院政治学科修士課程などを経て徳島大学総合科学部助教授、99年から現職。同名の著書が彩流社から出版されている。


OSIPP共催で3月にNPO学会

 

 日本NPO学会(林雄二郎・会長、本間正明・大会運営委員長)はOSIPPとの共催で、第2回日本NPO学会年次研究大会を3月18−20日の3日間、大阪大学コンベンションセンター(吹田キャンパス)と豊中キャンパスで開催する。初日に内外のNPO研究者や実務家を招いて公開国際シンポジウムが開かれ、19、20日の全体会・分科会においては50を超える報告やパネル討論が行われる。問い合わせ先は、日本NPO学会事務局、OSIPP(山内研究室)、tel/fax:06‐6850‐5643、e-mail:JANPORA@majordomo.osipp.osaka-u.ac.jp、HP:http://www.osipp.osaka-u.ac.jp/janpora/index.html


外国人の外部評価委員来校

ベンチマーク方式、インセンティブ制度などを提案

 OSIPPではCOE(Center of Excellence、中核研究機関)化を進めているが、その一環としてOSIPPの現状、将来計画などについて学外の有識者から評価、アドバイスをもらう外部評価を実施しており、 西オーストラリア大学教授、マイケル・マカリア氏が11月25日から、外部評価委員として来校した。
 同氏は計量経済学が専門で、客員教授として98年からOSIPPでも研究。黒澤満研究科長、辻正次教授らからの説明、施設見学の中で、同氏からは「 OSIPP内での共同研究がほとんどない。法政・経済両者の協力に基づいた研究を行うべき」「修士課程で必修科目をつくり、『OSIPPで学んだ事は何か?』と聞かれて皆が答えられる『共通の知識』を学生に持たせるようにする。例えば「国際公共政策の原理」といった科目を数人の教官で受け持つ」「指導教官を法政系・経済系の両者から一人ずつ選ぶ複数指導教官制にしてはどうか」といったアドバイスがあった。
 また、フロリダ大学教授のサンフォード・バーグ氏も1月28日、同委員として来校。同氏は産業組織論、公企業論などが専門で、同大学公益事業研究センターの所長も務める。同氏は「ハーバード大学でやっているようなケーススタディーをしてはどうか。震災関連や情報・電気通信などはすでに蓄積はあるのでは」「ベンチマーク方式を取り入れ、競争相手となる大学院を特定し、論文数、入試倍率などのものさしで競争する」「論文数の多い教官に研究費を多く出すなどインセンティブ制度を作る」といった提案があった。


紀要『国際公共政策研究』を発行

伊藤前教授退官記念号

教育権、情報公開など23編 

OSIPPが編集、発行する紀要『国際公共政策研究』第4巻第1号がこのほど刊行された。
 今号は、昨年3月停年退官した伊藤公一OSIPP名誉教授の退官記念号として編集され、伊藤教授から指導、啓発を受けた学内外の研究者10人が、教育権や情報公開問題、環境権などに関して寄稿している。その他、OSIPPの教官、卒業生、博士後期課程の学生らの論文も含め、全23編を所収している。
『国際公共政策研究』大4巻第1号所収論文
▼金谷重樹「情報公開条例及び個人情報保護条例に関するメモ」▼小泉洋一「フランス憲法と宗教−フランスの諸憲法における宗教条項−」▼松井茂記「教育情報の公開と本人開示」▼松浦寛「環境権の概念構造と日本国憲法」▼森本益之「刑事人権の国際化−国際準則の動向を中心として−」▼吉川智「返還後の香港に生じる法的諸問題とその原因」▼YONEHARA Ken,"Nakae Chomin et la Modernisation Japonaise"▼ 山智彦「憲法と許可抗告制度の関係についての一考察」▼君塚正臣「私立『大学の自治』の再検討−第三者効力と制度的保障の交点?−」▼佐藤薫「商標パロディ」▼松本和彦「産廃処理施設設置手続における法律と条例」▼岩橋健定「情報公開法における開示請求対象文書の特定」▼阪口規純「湾岸戦争後の日本の安全保障論議に関する一考察−小沢一郎・自由党党首の安全保障論を巡って−」▼岡田広司「企業における戦略的商品開発−情報通信に関する研究−」▼野瀬正治「代替的紛争処理(ADR)と労使紛争−英米からの示唆−」▼井上市郎「デジタル化経済のビジネスモデル−デジタル・エコノミーにおけるデジタルプロセス・デジタル取引・デジタル顧客−」▼佐渡紀子「信頼醸成措置の新展開−デイトン合意後の取り組みを中心に−」▼古川浩司「ミドル・リーダーの外交−アジア太平洋における日本の役割−」▼安田拡「マス・メディアを成立させる『送り手』の特性」▼岡村薫「再生可能エネルギーの普及政策」▼Md.Kamal Uddin,"Effects of Foreign Direct Investment on Economic Growth :An Endogenous Model"▼神谷英礼「電子マネーによる貨幣発行自由化論の実現可能性」▼ヴァージル・ホーキンス「国連安全保障理事会の改革−透明性と開放性を重視すべき−」


同窓会コーナー


懇談会で「知的会話」楽しむ
グランキューブ大阪の視察なども企画
 

OSIPP同窓会「動心会」(会長=神田延祐・元三和銀行副会長)の第2回懇談会が12月11日、大阪ガス・エネルギー文化研究所で開かれ、豊田尚吾氏(大阪ガス)が「地域通貨制度について」、阪口規純氏(OSIPP講師)が「沖縄米軍基地問題の現状と課題」と題して報告を行った。
 懇談会は多様なテーマをざっくばらんに議論しながら親睦と情報交換を図るもので、今回も仕事帰りの卒業生が集まり「知的会話」を楽しんだ。その後は忘年会となり、約20人のOB、OGが顔を合わせた。
 動心会では2月23日にも視察ならびに第3回懇談会を開催する。夕方から、今春オープンする大阪国際会議場(グランキューブ大阪)を視察し、その後、先般発表された大阪大学の将来構想「阪大ドリームプラン」について跡田直澄教授から話しを聞く。卒業生以外でも参加可。問い合わせは事務局長の阪口規純講師(電話:06-6850-5653、e-mail:sakaguti@osipp.osaka-u.ac.jp)まで。


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