院生群像

   環境問題に取り組む社会人学生

      佐藤 徹 さん (M2)

環境問題は、学際的で多面的なアプローチを要する一つの典型だが、果たして八面六臂は、容易でない。佐藤さんはしかし、“3足のわらじ”を履いて環境問題に当たろうとする。

環境すごろくゲームを説明する佐藤さん

大阪府立大工学部で化学工学を専攻したが、関心はしだいに環境問題に移行。就職では、同じアプローチはしたくないからと事務職として豊中市役所を受験し、採用後は希望どおり生活環境部環境課に。これまで 5年間、環境基本条例の制定や環境基本計画の策定などに携わってきた。

理工系のバックグラウンドを持ちながら、法政策の分野で仕事をしているわけだが、OSIPPでは“3足目”のディシプリンとして、経済学を専攻している。「たとえばゴミ処理の有料化にしても経済的なシミュレーションは不可欠なのですが、地方自治体には法律系のノウハウはあっても、経済分析などはやれないのが実状。では、一つ私が」と思いたち、97年、OSIPPに入学。伴金美教授のもとで「自治体における地球温暖化防止政策の経済分析」をテーマに研究を進めるが、仕事で授業に出られないこともあり、粒粒辛苦の日々と見受けられる。

学際的という意味だけでなく、社会的立場としてもまた、“3足のわらじ”を履く。地方公務員、大学院生という身分のほか、NGOで活動する市民運動家としての顔もある。3年ほど前、同じ関心を持つ自治体の職 員らと「エコファクトリー」というNGOを作り、昨年のCOP3にも参画。 特に、子供向けに創った「環境すごろくゲーム」が人気を集め、新聞などにも紹介されたほど。具体的な問題とその対応策が対になってわかる よう、アタックカードとディフェンスカードを使う点など趣向が凝らされている。今後、小・中学校などに無料配布することを計画している。

OSIPPの今年度の入学者は、60人中21人が社会人。両立に苦労する人も少なくない。佐藤さんも「かなりきついなあ」と苦笑するが、 「環境問題をライフワークにしているので」という強固な意力がそれを支えている。


活動報告:前編 (1998年1月- 3月)

● 論文・エッセーなど ●

「核軍縮の流れを停滞させるな」『朝日新聞』論壇、1 月

"Basic Obligation of the Comprehensive Nuclear Test Ban Treaty",Osaka University Law Review,No.45,February

「北東アジアにおける核兵器と原子力――将来の展望 とジレンマ」『国際公共政策研究』第2巻1号 3月

「核不拡散政策の国際情勢」『第18回核物質管理学会 日本支部年次大会論文集』 3月

以上 黒澤満教授

"Macroeconomic Management under the Increasing Interdependence in the Asia-Pacific Region:Beyond the Tom-Yam Effect",a paper presented at the annual meeting of the American Economic Association,Chicago, U.S.A.January

以上 高阪章教授

「高齢化と国民生活」(やさしい経済学)『日本経済新 聞(朝刊)』 3月16日−27日

「日本人の目的別貯蓄額」 『日米家計の貯蓄行動』チャールズ・ユウジ・ホリオカ、浜田浩児編著 日本評論社 3月

「貯蓄動機・遺産動機の日米比較」『日米家計の貯蓄 行動』チャールズ・ユウジ・ホリオカ、浜田浩児編著 日本評論社 3月

以上 Charles Yuji Horioka教授

"Microfit 4.0", Journal of Applied Econometrics, (1998),Vol.13, No.1.

"The Winter of My Content: The Econometric Society Australasian Meeting, 1997, Melbourne, Australia", Journal of Economic Surveys,(1998), Vol.12, No.1.

"L'invasion des smurf: Econometric Society European Meeting ESEM97 - Toulouse", Journal of Economic Surveys, (1998), Vol.12, No.2.

以上 Colin Mckenzie助教授

「グローバル時代の地域経済」『情報通信学会誌』第 56巻 第3号 1月

「米国における遠隔教育・医療−ノースカロライナ州とアイオワ州の実地調査から−」『平成9年度情 報通信学会年報』 3月

以上 辻正次教授

"The nonprofit sector in the Japanese economy", SCOPE Working Paper 7,

"Why do nonprofit organizations exist in market economies",SCOPE Working Paper 8,

"The size and structure of the Japanese nonprofit economy",SCOPE Working Paper 9,

"The theory of charitable donations", SCOPE Working Paper 10, "The economics of giving:time versus money",SCOPE Working Paper 11,

"Corporate philanthropy in Japan",SCOPE Working Paper 12,"Microeconomic behavior of nonprofit organizations",SCOPE Working Paper 14,"The roles of foundations in the Japanese nonprofit sector",SCOPE Working Paper 15,"Nonprofit hospitals and the Japanese health care market",SCOPE Working Paper 16,"Private schools as nonprofit organizations", SCOPE Working Paper 17,

以上 山内直人助教授

「電子貨幣の非定量的分析 −決済手段としての電子貨幣−」『瀬戸内短期大学紀要』第27号, (同短大の渡辺良夫講師との共著)

「高度情報通信社会における電子決済の法政策学的分析−決済手段の電子化と決済方法の電子化−」『テレコム社会科学学生賞入賞論文』

以上 岡田仁志(M2)

<次ページに続く>


OSIPPのSIPPO

★OSIPP院生先輩の結婚披露宴にデータ室管理チームで祝電を送ることにしました。 NTT「…それでは送り主様のお名前を」、Kさん「OSIPPデータ室管理チーム一同でお願 いします。OSIPPはアルファベット大文字で、おー、えす、あい、 …」、NTT「承りました。OSIPPとは株式会社のお名前ですか。でし たら、「株」を付けたほうが…」、Kさん「えっとー(かなり戸惑い)、 うちは会社じゃなくって大阪大学なんです…」、NTT「あっ、すみま せん!では、あのー、OSIPPよりも大阪大学としたほうが会場内 で通じるのでは…」、Kさん「いいえ、OSIPPでちゃんと通じますっ」−−やっぱり、「OSIPP」で世間に通じるようにならなく ちゃあねえ、と感じた瞬間でした

★就職活動って難しいですよ ね、特に女子の院生ですと。自分をさらけ出すのも疲れますし。院で自分が勉強したことに自信持って、やりたい仕事を求めればいいんでしょうけど、そんな悠長なこと言っててはだめなのかなあ。 やあ、自分を信じるのって難しい(Oさん)。


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