- 研究成果
OSIPP教員の研究業績(2026年8月)
OSIPP基幹講座教員から報告のあった研究業績をご紹介いたします。
・松島 法明 先生
・和仁 健太郎 先生
・赤井 伸郎 先生
<論文>
Noriaki Matsushima
Noriaki Matsushima, Tomomichi Mizuno, Cong Pan
“A manufacturer’s incentive to open its direct channel and its impact on welfare” Southern Economic Journal, accepted July 2026, Forthcoming. (査読あり)
概要:本論文は、家電大手ワールプールが量販店ロウズでの販売と自社の直接販売を併用する例や、ナイキがフットロッカーとの取引を続けながら直接販売を拡大する例を念頭に、メーカーが新たな販売経路を設ける理由と影響を分析する。 メーカーは小売店との交渉力が弱いほど直接販売に踏み切りやすい。しかし、消費者の購入先が増えても、効率のよい小売店から非効率な直接販売へ販売が移れば、社会全体には損失が生じ得る。本論文では、直接販売開始後に小売店の仕入条件が悪化していないかを確認することが重要であることを示唆している。
和仁健太郎
「常設国際司法裁判所Lotus号事件判決の再検討(1)」
『阪大法学』76巻2号(2026年)27-57頁
https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/106131/
概要:本稿は、常設国際司法裁判所(PCIJ)Lotus号事件判決(1927年)について再検討するものである。同判決は今から約100年も前の判決であり、国際法研究者によって散々読み尽くされてきた有名判決でもあるが、今でもなお再検討の価値がある。例えば、同判決は「国際法では禁止されていないことは許される」との原理(「主権の残余原理」)を提示した判決として有名であるが、同判決は本当にそのようなことを述べたのか。同判決は、国際法の各分野において、<一般的な許容+個別的な禁止>という仕組みも、<一般的な禁止+個別的な許容>という仕組みのどちらも成立し得ること、そして、どちらの仕組みが採用されるかはそれぞれの分野によって異なるという趣旨のことも述べており、同事件における争点の一つであった国内法の域外適用問題については、国家実行および同問題の特性を根拠に、国際法が<一般的な許容+個別的な禁止>という仕組みを採用していると判断したのであって、「主権の残余原理」のような超実定法的な原理に依拠して判断したのではない、と理解するのが正しいように思われる。旗国の排他的管轄権原則について判示した箇所を、2019年ITLOS・Norstar号事件判決と比較検討するのも面白い。本稿は、以上のような問題関心からLotus号事件判決を再検討・再評価するものである。なお、阪大法学76巻2号では、論文のおよそ半分の量に当たる判旨の紹介部分までを掲載した。残りは76巻5号に掲載予定である。
<論説>
赤井伸郎
「官民投資に役割分担の設計を、民間追随なければ失敗に(経済教室)」『日本経済新聞』(2026年7月28日朝刊)
日経電子版 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD134JN0T10C26A7000000/
概要:「骨太2026」の官民投資ロードマップ(17分野、2040年までに370兆円)について、過去の官民ファンド失敗例を踏まえ、リスク分担の課題を分析。研究開発型とインフラ整備型で制度設計を区別し、ポートフォリオ管理、検証可能なマイルストーン設定、死の谷を越える橋渡し資金、意思決定権限の明確化など5つの改善策を提言し、真に民間投資を誘発する制度設計の必要性を論じている。