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大阪大学大学院における博士後期課程の支援制度について
博士後期課程への進学を考える際、多くの学生が気になるのが研究費や生活費などの経済的支援ではないだろうか。そこで今回は、博士後期課程の学生を対象としたさまざまな支援制度の中から、代表的なものとその特徴を紹介する。以下の3、4に挙げられている制度の多くは博士前期課程も対象としているので、博士前期課程への進学を検討している人の参考にもなるだろう。
1.日本学術振興会特別研究員(DC1・DC2)
博士後期課程の学生にとって最も代表的な制度が、日本学術振興会の特別研究員制度である。博士後期課程の学生を対象とした区分には、DC1とDC2がある。DC1は主に博士前期課程2年(M2)の春(秋入学の場合はD1の春)に応募する制度で、採用されると博士後期課程の入学時から3年間支援を受けることができる。 一方、DC2は博士後期課程1年(D1)以上の学生が対象で、採用年度から2年間の支援が行われる。
特別研究員に採用されると、月額で研究奨励金が支給される。科学研究費助成事業(特別研究員奨励費)に同時応募が可能で、特別研究員の申請と同時に受付となる。さらに、研究内容によっては、統計法第33条の下で管理される公的ミクロデータ(例えば「21世紀出生児縦断調査」など)について、特別研究員本人が研究代表者として利用申請を行える場合があるという研究上のメリットもある[1]。なお、応募にあたっては学内締め切りが例年5月中旬頃と早いため、事前にスケジュールを確認しておく必要がある。
また、OSIPPでは研究支援室による申請書のチェックサービスもあるので必要に応じて活用できる。
2.大阪大学次世代挑戦的研究者育成プロジェクト

近年新しく始まった制度として、文部科学省および科学技術振興機構(JST)によるJST-SPRINGがある。大阪大学ではこれを「次世代挑戦的研究者育成プロジェクト」として実施している。以下、本記事では「次世代」と表記する。
この制度は、国が個人を審査する特別研究員制度とは異なり、国が大学を採択し、大学が学生を選考して支援するという仕組みが特徴である。採用されると研究奨励費や研究費などが支給されるとともに、英語論文投稿支援や語学試験(TOEFL・IELTSなど)の受験費用の支援、留学生向け日本語レッスンなど国際性を涵養する活動への支援も充実している。なお、2027年度以降、研究奨励費(生活費相当額)支援の対象は日本人学生に限定するという方針が文部科学省から示されていることに注意する必要がある。
応募は例年採用年度直前の1月頃[2]に行われ、採用されると大学院の標準修業年限まで支援を受けることができる。ただし、OSIPP博士後期課程の冬期入試[3]を受験する場合、出願後は教員とコンタクトを取ることが難しいため、学外からの出願者で博士後期課程1年次から次世代の支援を受けたい場合は、夏期入試で出願することを強く推奨する。学外の出願者向けに次世代の募集について個別のアナウンスはないので、定期的に次世代のホームページを確認する必要がある。
なお、特別研究員(DC)とJST-SPRINGにはいくつか共通する注意点がある。
まず、どちらの制度も指導教員の推薦や評価書が必要であるため、応募を考えている場合は早めに現在の指導教員と博士後期課程での受け入れ予定教員に相談しておくことが重要である。また、これらの制度は多くの場合博士前期課程2年生の時期に出願することになる。そのため、博士後期課程への進学を検討している学生は、博士前期課程の早い段階から情報収集と準備を進めておく必要がある。
また、特別研究員とJST-SPRINGの併給は認められていないため、採用された場合はいずれか一方を選択することになる。
3.そのほかの支援制度
博士後期課程の学生は、以下のような制度も利用できる。詳細は各ホームページを参照されたい。
特に民間奨学団体による奨学金は、博士後期課程進学前の時期に募集が集中する傾向がある。多くの場合、扶養に入っていない場合でも家族の収入証明などの書類提出が必要になるため、早めの準備が求められる。
4.OSIPPによる支援制度
OSIPPでは独自に以下の制度を提供している。(2025年度の実績)詳細は各ページを参照されたい。
- 英文校正費助成
- 国際学術交流助成・・・海外で開催される学会等における研究報告(司会、討論者は対象外。受給は年1回まで)に対して渡航先が欧米の場合はおおよそ15万円、アジアの場合はおおよそ5万円が支給される。
- OSIPP大学院生研究活動奨励賞
- 海外インターンシップ・海外調査助成
- メキシコ研究留学奨学金・・・研究留学のための費用に対し年間140万円を上限として、渡航一時金(1回限り) 200,000円・奨学金月額100,000円が支給される。
おわりに
博士後期課程には多くの支援制度が用意されているが、それぞれ応募時期や条件、目的が異なる。進学を考えている学生は、早い段階から情報収集を行い、指導(予定)教員と相談しながら準備を進めることが重要である。これらの制度をうまく活用することで、経済的な不安を減らし、研究に集中できる環境を整えることができるだろう。
なお、制度についての情報や応募時期については執筆時点(2026年5月)の情報である。特に近年は毎年のように応募に関する変更があるため、常に最新の情報を確認してほしい。
(OSIPP博士後期課程 辻本篤輝)
[1] https://www.e-stat.go.jp/microdata/data-useの法第33条第1項第2号に該当する。
[2] 例外的に採用年度の5月に募集が行われた年度もある。
[3] 11月出願、2月合格発表の場合が多い。この場合、OSIPPに出願してから合格発表までの間に次世代の出願(例年1月)があることになる。