アジアの市民社会研究(大阪大学国際公共政策研究科と
CSOネットワークの共同事業)


近年、中国、韓国、ベトナム、フィリピンなど、アジア諸国においても市民社会やNPOセクターが台頭している。第一回研究では、ベトナムのシビル・ソサエティと政府とNPOの関係などについて調査研究を実施する。

「ベトナムのシビル・ソサエティ調査」
社会主義国のベトナムにおいても、近年、民間企業セクターの発展と共に、シビル・ソサエティが萌芽している。本プロジェクトでは、これを念頭に、ベトナムにおける民間業界団体や民間のアソシエーションが、従来から社会サービスを行ってきた政府機関や共産党下の大衆組織、ならびに、国際的なドナー機関や国際NGOの活発な動きといかに連関しながら発展しているのか、そして、政府とシビル・ソサエティの関係がどのように変化しているのかを調査する。本研究では、主に、民間業界団体、アソシエーション法、その他のシビル・ソサエティを調査対象とする。
民間業界団体
2005−6年のWTO加盟、AFTA加盟をにらみ、国際競争力を強く求められているベトナムでは、2000年に新企業法が施行され、民間企業の数は激増した。民間企業を取り巻く事業環境はまだまだ十分なものではないとはいえ、民間セクターの発展には、近年急激に発展してきた民間主導の業界団体(business associations)が大きく寄与している。これらの業界団体は、セクターを横断し地域レベルで活動するもの、特定の業界の企業が集まっているものなどがある。
アソシエーション法(法規88号)
2003年7月に、ベトナム政府は、はじめて、ベトナムの市民活動におけるアソシエーションの組織や運営などに関するアソシエーション法「Decree 88: Regulation on the Organization, Operation and Management of Associations」を発令した。法制化にはまだ数年かかると見られている。この法規にはまだまだ問題が多く、早急な見直しが必要とされる部分も少なくはないが、ベトナムのシビル・ソサエティの発展にとって、一里塚になることは間違いがない。
その他のシビル・ソサエティ組織
市場経済化の波の中で、新たな経済問題や社会問題が浮上してきている。貧富の格差、地域間格差の拡大、ストリートチルドレン、若年層の麻薬中毒などである。エイズ感染やその他の感染病も深刻な問題となっている。政府の予算が削減する中で、このような複雑な問題を取り扱うのは、国際ドナー機関、国際NGO、共産党下の大衆組織(の下部組織)−例えば、女性連盟、青年連盟など−、そして新興の非政府のアソシエーションである。従来から社会サービスを提供している大衆組織と新興のNPOが、国際的なNGOや国際機関からの支援を受けながら、シビル・ソサエティの一翼を担っているという構図が見られる。

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