IPP研究会で蝋山教授ら報告
地震、ビッグバン、魚つり

「IPP(International Public Policy)研究会」が9月4日と10月2日、共通教育管理講義棟で開かれ、蝋山昌一教授、林敏彦教授、飯田善郎助手が研究報告を行った。
蝋山教授は「日本版ビッグバン」に関して報告。ビッグバンは2001年に東京市場が国際マネーセンターとして復権することを狙いとしているが、同教授はこの点には悲観的な見解を示し、「むしろ日本金融の危機的状況を回避することの方がその主眼である」と強調した。その上で、改革案の策定については、「日本の場合は行政主導型だが、複数の審議会により戦術が違うので整合性に欠ける」などの問題点を指摘。改革の要点としては「金融機関別の規制から金融機能別規制、業者規制から市場規制、事前予防から事後監視へという体制移行」などをあげた。
林教授は「震災復興の経済学」と題して、阪神・淡路地震後の地域の経済について分析。まず日本の政策では、クライシスが発生する前の「リスク管理」に重点が置かれ、発生後の「危機管理」の側面が欠けていたと指摘。神戸を中心にした状況は、インフラや住宅をはじめ、マクロレベルでは産業復興は約9割に達しているが、一方で産業別、企業規模別、地域別の復興格差が目立つと説明。具体的な方策として、震災で失職した中高年を対象にした、ボランティアと雇用の中間的位置づけの「生きがい雇用」制度の導入などをあげ、「神戸ブランドなどのバーチャルな累積を図る一方、アクチュアルな産業については分散化すべき」と提言した。
「A Fishery Game with Asymmetric Information(非対称情報下でのフィッシャリーゲーム)」のタイトルで報告した飯田助手は、ゲーム理論を用いて最適資源制御の問題に情報の要素を入れたモデルを構築。再現性はあるが有限な資源を、2企業が寡占的に収穫し販売する経済を想定し、この場合、情報が一企業のみに偏っていると、かえって全体としての資源収穫は慎重になり、結果的に資源の枯渇を遠ざける可能性があることを示した。


北東アジア非核化 黒沢教授らが提言

国際シンポジウム・講演会「北東アジアの非核化と日本の役割」(朝日新聞社、広島市など主催)が7月29日、広島市で開かれ、黒沢満OSIPP教授がコーディネーターとして参加した。デクラーク氏(南アフリカ共和国前大統領)、セリグ・ハリソン氏(ウィルソンセンター客員研究員)ら6人が報告とディスカッションを行なった。
討論者の意見を受けて同教授は、北東アジア非核化のための条件として、アジアに残っている冷戦構造の終結、民主化と協力的安全保障の促進、原子力平和利用のための地域的枠組みの創設、域内の信頼醸成が必要であるとまとめた。さらに具体的には、非核兵器地帯の範囲の選択肢を3つにまとめ、その対象兵器は戦術核から始めるべきこと、グローバルな核軍縮の必要性から中国も含めた形でのSTARTの進展を提言した。


三和総研がCOE報告会

アメリカのCOE(Center of Excellence = 中核研究機関)の実態に関する報告会が7月17日、共通教育管理講義棟で開かれた。三和総研が受託して4月にまとめた報告書「米国における公共政策大学院・研究機関調査」について、同社の担当者が要点を説明、それを受けてOSIPPの教官が質問と問題提起を行った。
同社の荒川潤氏が概要のプレゼンテーションを行い、「米の公共政策系の大学院は実務との距離が近く、各校とも戦略的な試みと明確な理念を持っている」と総括。質疑応答では、「実務重視の教育方針では学者としての評価は落ちるのではないか」「修士論文を課さない場合、コースワークはどうなるのか」「ロースクールやビジネススクールと競合しないのか」といった質問が出され、それぞれ三和総研の担当者が、「優秀な実務家を送り込むことは教育者としての評価になる。また教官のポストも流動化している」「インターン制度など多彩なコースがあり、成績も日本より細かく、厳しく付ける」「ロースクールやビジネススクールとの違いがあいまいな点もあり、学生に逃げられないよう努力している」などと、返答した。


助手に阪口氏

OSIPPの助手にこのほど、阪口規純(さかぐち・きよし)氏が就いた。同氏は1983年早稲田大学商学部卒業、85年同政治経済学部政治学科卒業。(社)関西経済同友会に9年間勤務した後、95年大阪大学大学院国際公共政策研究科(OSIPP)博士後期課程に入学、97年6月同課程を退学、助手に採用された。
同氏は、早大政経学部時代は故・鴨武彦東大教授(当時は早大教授)のゼミで国際政治を専攻、関西経済同友会では主任研究員として主に日本の安全保障を中心に国際問題に関する調査を担当した。OSIPPでは当初、神余隆博教授(現・在独日本大使館公使)の下で学び、昨春からは津守滋教授の指導を受ける。国連の安全保障システム、戦後日本の安全保障政策史に関心が深い。