プロ志向強い米のCOE

実務型大学院調査まとまる

 OSIPPのCOE(Center of Excellence = 中核研究機関)化を進めるための資料、「米国における公共政策大学院・研究機関調査」が、このほどまとまった。このレポートは、すでにこの分野のCOEとして評価の高い在米研究機関の実情を分析するもので、OSIPPの今後の針路を探る上で、有効な資料となる。
 調査は「三和総合研究所」が受託、アメリカにおける「公共政策研究」「国際関係」分野の実務型大学院(Professional School)13校を対象に、多角的に分析した。
 これによると、全体としては、各校とも「政策現場や国際舞台において、強力なプロフェッショナリティと何らかの形で、特徴的な関わりを持つことにより、高い名声・評価を維持しようとしており、特に新しいスクールは戦略的な試みを通して、他校と違う特徴を演出していく傾向」が認められる。
 個別には各校の特性が反映している。まず設立の使命(Mission)については、ほとんどが「リーダーの育成」「理論、知識、実践のバランスのとれた教育」をあげているが、実務教育と、アカデミックな研究のどちらに重点を置くかで、違いがある。ジョンズホプキンス大学のSAIS(The Paul H. Nitze School of Advanced International Studies)などは実務重視で、プリンストン大学のウィルソン公共・国際学スクールは比較的にアカデミズム色が濃いとされる。
 研究科長・校長(Dean)については、伝統あるスクールではアカデミズム出身、新しいスクールでは実務出身の人が就任する傾向。
 カリキュラムは、ほぼ共通して経済学、統計学が必修とされ、公共政策関係では行政管理学、国際関係では語学、国際関係理論などがコアサブジェクトになっている。また、実際のクライアント向けに研究を行うOJT式の授業、インターンシップも広く取り入れられているが、反面、修士論文を課すところは少なく、Ph.D.コースへの進学も限定されている。修了後の進路は幅広いが、多くのスクールが"マフィア"と呼ばれる強い同窓意識、同窓ネットワークを持っており、就職をはじめ利点が大きい。
 また、スクールの専門分野を特化する例も多い。カリフォルニア大学サンディエゴ校の国際関係・太平洋研究大学院は、研究対象を環太平洋地域に限定、新設にもかかわらずこの専門性により評価を上げ、一方、タフツ大学のフレッチャースクールは伝統的に外交、国際関係に特化して著名。ピッツバーグ大学の公共・国際問題大学院は地元経済の復興に貢献した研究で成果。シラキュース大学のマックスウェルスクールは学際的な研究を特徴としている。
 他方、ジョージタウン大学のウォルシュスクールのように首都にある地の利を生かす学校や、コロンビア大学のSIPA(The School of International and Public Affairs)のように、学生への経済支援を充実して優秀な学生の確保に成功した例もある。
 OSIPPでは今後、COE研究会などを開き、このレポートを基に、OSIPPのCOEとしてのアイデンティティー確立に向け、具体的な戦略を立てる方針。