国内外の有識者13人がOSIPPを診断

外部評価報告書を発行

「印象的な業績ある」が課題も多く浮き彫りに

OSIPPはこれまでの実績と今後のあり方について学外の学識者、専門家に評価、アドバイスを依頼する「外部評価」を実施し、このほどその結果をまとめた「OSIPP外部評価報告書」が発行された(=写真)。
 

外部評価委員は日本人8人、外国人5人の計13人。99年9月から今年3月にかけて来校し、OSIPPの資料、データを見た上でOSIPPの教官と面談。施設見学、学生インタビューなども交えて総合的にOSIPPの利点、弱点などを評価した。
 教授陣の研究能力の高さ、現実の政策課題に取り組む姿勢、入学志願者の増加など「最初の5年間、OSIPPは印象的な業績をあげた」と一定の評価は受けたが、一方、改善点も多く指摘された。
 「国際公共政策のコアになる基本講義がない」「研究・教育に熱心な教官とそうでない教官の差がある」「受講生が1-2人しかいない授業の非効率を改善すべき」「教官の授業負担や、指導学生の数に大きな差がある」「英語の論文を国際的なジャーナルにもっと出すべき」「米国ではよく『出版せよ(publish)、さもなくば滅びよ(perish)』と言われるが、そうした、教官への推奨、刺激が少ない」「金融工学など新しい分野の採用を国際的に公募すべき」「将来計画のVISION2010にはタイムスケジュールがない」「入学した学生の質にばらつきがあり、入試方法の改善も検討すべき」「ミニ経済学部、ミニ法学部となってはいけないがOSIPPのディシプリンはまだ未確定であり難しい時期にある」「法律と経済の融合というが実際はそうではないため失望する学生がいる」「A(80-100点)の成績が76%もあるのは規準が優しすぎる」「大きなシンボリックなプロジェクトを研究科あげてやるべき」「研究科長にリーダーシップを発揮する権限がない」「インターネットを利用した業績の公開などをもっとすべき」「裁量のきく資金源の確保」など率直で有意義な指摘が多かった。
 報告書は日本語版と英語版があり、OSIPP外部評価委員会(辻正次委員長)が作成。A4版でそれぞれ150-170頁にわたり各委員の報告の他、OSIPPの詳細な資料が網羅されている。特にライバル校との比較、入学辞退者数やその流出先・理由など通常は公表されにくいデータも示されている。
 辻正次研究科長は「外部評価の見本となるような報告書を作りたかった。OSIPPのオープンで透明な運営、アカウンタビリティを重視し詳細なデータを盛り込んでいる。示されたアドバイスをさっそく検討していきたい」と話している。

外部評価委員(敬称略)
▼有本建男(科学技術庁科学技術政策局政策課長)▼岡野行秀(東京大学名誉教授)▼長田博(名古屋大学大学院国際開発研究科長)▼小和田恆(日本国際問題研究所理事長)▼田中英俊(関西広域連携協議会事務局長)▼豊島喜則(京都大学大学院人間・環境学研究科長)▼中村道(神戸大学大学院国際協力研究科長)▼村上輝康(野村総合研究所常務取締役)▼サンフォード・バーグ(フロリダ大学公益事業研究センター 所長、教授)▼ジョン・カートン(トロント大学国際関係プログラム教授)▼エドワード・ラック(プリンストン大学ウッドロウ・ウィルソン・スクール教授)▼マイケル・マッカリア(西オーストラリア大学経済学部教授)▼ユルゲン・ミューラー(ベルリン経済大学教授)


後期課程で10月入学実施

OSIPPの博士後期課程への入学は従来2月に入試、4月に入学という年に一度だけの機会であったが、今年から9月入試、10月入学も認めることにした。10月入学は大阪大学では基礎工学、理学、工学の各研究科が導入しているが、文系大学院では初。
10月入学は留学生、帰国子女らにとっては入学時期の時間差が解消でき、多忙な社会人にも柔軟な修学の機会が提供できる。入学志願者への利便と同時に多彩な人材の確保という点でも期待できるため、4月の教授会で導入が決定された。
辻正次研究科長は「グローバリゼーションに対応しOSIPPの門戸をさらに開こうとするもので、もちろん一般の学生も歓迎。今までと同じ入学条件を維持するが定員は若干名。柔軟に対応したい」と話している。
今年の9月の入試は9月3日(日)に行われ、出願期間は8月15(火)−17日(木)。試験科目は従来通りで、英語の筆記試験(TOEFL570点以上は免除)、研究計画書と、それに基づく口頭試問。詳細は学生募集要項に記載。問い合わせは国際公共政策研究科事務室(文科系事務部教務課教務第四掛)、住所=560-0043大阪府豊中市待兼山町1-31、電話=06-6850-5612まで。
なお、修士課程(博士前期課程)は従来通りで、2月と9月の2回の入試があり、入学は4月からのみ。


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