研究プロローグ

伊藤公一(公法学)

「今でも文学部の講師控え室の方がなんとなく居心地よく感じるんです」。言われてみれば、文学肌の雰囲気もただよわす伊藤教授。西陣織の「紋彫」職人をしていた父が、小説を書いていた影響もあり、当初、阪大の文学部に入学。人間形成の面白さにひかれて教育学を専攻した。教育制度や教育行政に関心が移り1960年、阪大の法学部に学士入学したが(写真=左)、このころから家業を継ぐことには不安を覚え、法学で身を立てるしかないと考えるようになった。
「人生は全く偶然が支配することがある」と進路相談に来る学生によく話すという。阪大法学研究科の修士課程当時、弁護士になるか、研究者になるかで大いに逡巡。ある日、通学の電車で司法試験用の参考書を読んでいると、隣の見知らぬ婦人が「自分の夫も弁護士だったが、いやな仕事だと言いながら数年前に亡くなりました。向く人、向かない人がいますから」と、話しかけられたそうだ。貧しい人からも法律相談料をとらざるをえない面など、弁護士業のある種の冷徹さにわだかまりを覚えていたところだったので、この一言が天啓となり、研究者の道を選ぶことになった。
68年から阪大教養部の講師、以後、同学部の助教授、教授として主に憲法、教育法学などを教えてきた。「教育法学の世界は、文部省側か日教組側かしかない極端な世界でして。自分では中間のつもりなのだが、どうも文部省に近いとみられたのかなあ」と苦笑する。今は両者の対立が緩和、議論もだいぶカタが付いたが、「振り返ると、なぜあんなにけんかしたのか、むなしい思いも残る」という。最近は、国際人権、環境、外国人問題などを取り上げ、OSIPPの特徴である国際的視点を持つテーマに、関心を広げている。


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