大阪大学学位記授与式が3月25日、大阪・中之島の大阪市中央公会堂で挙行され、OSIPPでは「国際公共政策博士号」が5人に、「同修士号」が38人に授与された。博士号はOSIPPとしては初の授与で、修士号は2度目の授与。
式は全学合同で行われ、OSIPPでは博士号の河瀬義博さんが、修士号の中川幾郎さんがそれぞれ代表として、金森順次郎総長から学位記を手渡された。
式の後は、梅田の別会場で祝賀懇親パーティーが催され、教官、修了生、在校生らがともに学位授与を祝福しあった。博士号授与者のあいさつでは、「出勤前、朝4時に起きて書き続けた」社会人院生の苦労話などが明かされる一方、各教官の親身の指導に対し厚い感謝の意が表された。
林敏彦OSIPP研究科長は今回の学位授与について、「修士論文はどれも教官側の予想を超える水準であり、中には学外の懸賞論文に入選したのもあった。博士論文も初の授与にふさわしい力作ぞろいで、高度の研究能力、豊かな学識が認められた」と講評、「今後それぞれの道でオピニオンリーダーとして活躍されるように」と修了生の前途を激励した。博士号授与者の氏名と論文名、内容は以下のとおり(敬称略)。
OSIPPの入学式が4月4日、共通教育管理講義棟で行われ、4期生として61人が入学した。これで今年度OSIPPに在籍する院生は、博士前期課程が93人、同後期課程が53人で、計146人となる
今年度、博士前期課程には162人が志願、153人が受験し49人が合格、うち43人が入学した。実質競争率(受験者数÷合格者数)は3.1倍。同後期課程には34人が志願、32人が受験し22人が合格、うち18人が入学した。実質競争率は1.5倍。博士前期、後期あわせた新入生全体の33%を、社会人学生が占めている。16%が留学生。年齢層も23歳から72歳と幅広い。
OSIPPへの入学希望者は年々増えており、特に博士前期課程は初年度は志願者51人、実質競争率は1.3倍だったが、次年度は同86人、同1.8倍、3年度は同133人、同2.8倍、さらに今年度同162人、同3.1倍と伸びが著しい。博士後期課程は、今年度の志願者は昨年度よりやや減ったが、それでも1、2年度より増えている。競争率も微増している。
これについて林研究科長は、「この右肩上がりの志願者増はOSIPPが政策研究のメッカとして、評判が高まっていることを示す。教官の間からは今年の新入生はなかなか手応えがいい、との声も聞こえ、今年度から改正したカリキュラムの効果も出ている」と話し、4年目を迎えたOSIPPの充実ぶりに意を強くしている。
来年度入学希望者の入学試験は、1997年9月13日(土)(博士前期課程のみ)、1998年2月14日(土)(博士前、後期課程とも)に行われる。
OSIPPのCOE(Center of Excellence = 中核研究機関)化を進めるための資料、「米国における公共政策大学院・研究機関調査」が、このほどまとまった。このレポートは、すでにこの分野のCOEとして評価の高い在米研究機関の実情を分析するもので、OSIPPの今後の針路を探る上で、有効な資料となる。
調査は「三和総合研究所」が受託、アメリカにおける「公共政策研究」「国際関係」分野の実務型大学院(Professional School)13校を対象に、多角的に分析した。
これによると、全体としては、各校とも「政策現場や国際舞台において、強力なプロフェッショナリティと何らかの形で、特徴的な関わりを持つことにより、高い名声・評価を維持しようとしており、特に新しいスクールは戦略的な試みを通して、他校と違う特徴を演出していく傾向」が認められる。
個別には各校の特性が反映している。まず設立の使命(Mission)については、ほとんどが「リーダーの育成」「理論、知識、実践のバランスのとれた教育」をあげているが、実務教育と、アカデミックな研究のどちらに重点を置くかで、違いがある。ジョンズホプキンス大学のSAIS(The Paul H. Nitze School of Advanced International Studies)などは実務重視で、プリンストン大学のウィルソン公共・国際学スクールは比較的にアカデミズム色が濃いとされる。
研究科長・校長(Dean)については、伝統あるスクールではアカデミズム出身、新しいスクールでは実務出身の人が就任する傾向。
カリキュラムは、ほぼ共通して経済学、統計学が必修とされ、公共政策関係では行政管理学、国際関係では語学、国際関係理論などがコアサブジェクトになっている。また、実際のクライアント向けに研究を行うOJT式の授業、インターンシップも広く取り入れられているが、反面、修士論文を課すところは少なく、Ph.D.コースへの進学も限定されている。修了後の進路は幅広いが、多くのスクールが"マフィア"と呼ばれる強い同窓意識、同窓ネットワークを持っており、就職をはじめ利点が大きい。
また、スクールの専門分野を特化する例も多い。カリフォルニア大学サンディエゴ校の国際関係・太平洋研究大学院は、研究対象を環太平洋地域に限定、新設にもかかわらずこの専門性により評価を上げ、一方、タフツ大学のフレッチャースクールは伝統的に外交、国際関係に特化して著名。ピッツバーグ大学の公共・国際問題大学院は地元経済の復興に貢献した研究で成果。シラキュース大学のマックスウェルスクールは学際的な研究を特徴としている。
他方、ジョージタウン大学のウォルシュスクールのように首都にある地の利を生かす学校や、コロンビア大学のSIPA(The School of International and Public Affairs)のように、学生への経済支援を充実して優秀な学生の確保に成功した例もある。
OSIPPでは今後、COE研究会などを開き、このレポートを基に、OSIPPのCOEとしてのアイデンティティー確立に向け、具体的な戦略を立てる方針。
OSIPPの編集、発行する紀要『国際公共政策研究(International Public Policy Studies)』第1巻第1号がこのほど創刊された(=写真)。 |
国際公共政策研究の新たな場となる「IPP(International Public Policy)研究会」がこのほど発足、その研究報告会が6月3、5日、7月3日に、阪大で開かれた。
「IPP研究会」は、1)経済系研究者と法律・政治系研究者の知的交流促進、2)博士論文作成者への中間報告の機会提供などを主な目的に、基本的にはOSIPPの教官と博士後期課程の学生が報告を行う。今年度は9月以降、さらに3回予定されている。
第1回目は阪大・待兼山会館で催され、ゲストスピーカーとして世界銀行のA.Bhattacharya氏とR.Johannes氏が「開発金融と民間資本の途上国への流入」について報告した。2回目は奥井めぐみ氏(D2)が「職種間賃金格差に関する実証分析」について報告(=写真)、3回目は加納正二氏(D3)が「地域金融機関の実証分析」、石川誠氏(京都教育大学講師)が「標準化と知的所有権」について、それぞれ発表を行った。
「IPP研究会」の問い合わせは、C. McKenzie助教授(文・法・経済学部本館4階、TEL:06-850-5622)まで。報告希望者は随時受け付けている。
OSIPPの事務関係を統括する国際公共政策研究科等事務長に、新しく平ノ上昭夫さん(54)が就いた。4月1日付の異動により、前事務長の城戸廣司さんが基礎工学部事務長に、平ノ上さんは経済学部事務長からの着任となった。
国際公共政策研究科等事務長は、OSIPPの事務の他、学部1、2年生への基礎講義課目を提供する全学共通教育機構の事務関係も統括するポスト。学生の年齢や講義内容の全く違う部局を同時に扱うため、「瞬時に頭を切り替えねばならない」困難な側面もある。「発足4年目に入り、今後のOSIPPの長期展望を事務方としてサポートしていく責任は重大」と語る。当面はOSIPP校舎の着工に全力をあげる。