証券取引自由化を多角的に考察  
―OSIPP寄付講座の ファイナンスコンファレンス

OSIPPの資産管理サービス産業寄付講座が主催する第6回大阪大学国際ファイナンスコンファレンスが1月21,22の両日、大阪・豊中市の千里ライフサイエンス センターで開かれ、米ヴァンダービルト大学のハンス・ストール教授やベリンダ ・ブレイン米国証券取引委員会主任らが証券取引システムの現状や取引の自由化に伴う新しい法規制などについて報告を行った。


規制緩和と民営化の是非を問うシンポジウム

−メルボルン大と共催−

OSIPPでは2月6,7の両日、豪メルボルン大学で、同大学公共政策センターと共催の経済コンファレンス「規制緩和と公共部門のリストラクチャリング」を開いた=写真

コンファレンスではまず、ストール教授が米国の証券取引システムについて詳述。従来、取引所で行われている「競売買制度」と、証券取引自由化の中で拡大しつつある「ディーラーズシステム」を比較検討。さらに同一銘柄に2種類の相場が立つ可能性のある現状について述べ、自由化の是非を考察した。
 続いて英国のリサーチ会社「オックスフォード・ファイナンス・グループ 」のルービン・リー氏は、証券の情報ヴェンダーの出現や証券取引のコンピュー ター化で問われつつある取引所の意味、新しい証券取引の法規制の問題などについて発表。ブレイン証券取引委員会主任は、証券取引を監督する立場から、二重相場を規制するためのルール改正について論じた。
 このほかQUICK総研の宇野淳・金融工学調査室部長が日本の証券取引における重複上場制度の問題点を「クロス取引」という側面から考察するなど、国内外の証券取引システムの問題点に対し重層的な検討が行われた。
 同コンファレンスはOSIPPが「国際学術研究共同研究計画」として海外の大学と3年連続で開催するもので、統一テーマは「アジア太平洋協力関係における日本の役割」。
 昨年、米コロンビア大学で行われた第1回コンファレンスに続いて、今年は オーストラリア・メルボルン大学との共催となり、OSIPPからは林敏彦・研究科 長や蝋山昌一教授、辻正次教授、コリン・マッケンジー助教授、松繁寿和助教授が参加。海外からはヒュー・パトリック米コロンビア大学日本経済経営センター所長や、オーストラリア国立大学のピーター・ドライスデール豪日研究センター 所長らが各国の現状を紹介した。
 コンファレンスではまず、「セッションT概観」でマッケンジー助教授が日本における規制緩和や企業民営化のマクロ的効果を分析、ドライスデール所長は国際的な競争力を得るという強いモチベーションのもとで段階的に進められつつあるオーストラリアの規制緩和の実情を説明した。
 「セッションU民営化」では公共性が強い企業の民営化の是非がテーマとなり、日本の旧国鉄やオーストラリアの航空会社、空港などの民営化事業を検討。 経済原理によって損なわれる可能性のある公益と企業の効率性のバランスが論じられた。
 この後、コンファレンスでは「労働市場の改革」や「金融市場」「競争原理」などをテーマに、各国の規制緩和や自由化の現状、問題点などの検討が行われた。
 なお、同コンファレンスの詳細はOSIPPがディスカッションペーパーとして発表する予定だが、参加各研究者の論文に興味がある人はマッケンジー助教授まで。

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