交 流 金宇城・招聘教授 韓国・ウルサン大学教授 (国際法・国際関係論)

エイジアン・フィーリングで相互理解を

東アジアの新安保システム構築を研究


 「日本と韓国、中国は同じ漢字文化圏。共有している“エイジアン・フィーリング”で協力体制が築けるはず」。東アジアにおける新しい安全保障体制の構築について研究を進める金宇城・招聘教授は、日本での研究先として歴史的にも 日韓の交流が盛んな関西を選んだ。1961年 ソウル大学で修士号(国際法 )を取得後、出版・放送などのマスメディアを統括する中央官庁の「公報部」入り。2年間の公務員生活の後、ジュネーブ大学、ロンドン大学の各大学院で国際関係論を学んだ。ジュネーブでは当時、米・シカゴ大学から招かれていたハンス ・モーゲンソー教授の薫陶を受けた。
 「彼はいつも『中国を国際社会の孤児にするな』と話しておられました。その頃から、東アジアにEUのような協力体制ができないものかと考え始めたのです」。
 帰国後は一時政治家を志すが、事情により断念し1978年にウルサン大学へ。国際法を教えながら、博士論文となる「政治思想史においての自然法の展開に関する研究」を完成させた。「日本に来て痛切に感じるのは、日本が外交においてなかなか本音を出さないということ。アジア諸国への配慮もあるのでしょうが、主権国家として胸を張って国益を追求すべきです」と歯に衣を着せない持論を展開。「現代の国際社会では、国益を守るために国際協力が不可欠。ナショナリストが本当のインターナショナリストになれるんです」とも。
 日韓関係については戦争を一つの歴史的事実として冷静に見つめ直すことを主張、「加害者と被害者という視点から脱して、両国が協力して安全保障体制づくりに着手すべき」とする。
 長男(29)は現在、名古屋大学大学院で数学を、次男(27)は金沢大学大学院で日本語を勉強中。甥と夫人の弟2人は米国籍だという。外国をより深く知ることが真の信頼関係につながる、という持論を実践する国際派である。
 「東アジアの協力体制づくりは第2次世界大戦を知る世代が残っているうちにつくるのが理想。過ちを犯した世代が民主主義と平和の本当の意味を考えて議論を進めればいい。それを引っぱるのが我々、研究者の仕事です」。
 OSIPP滞在は1997年2月までだが、帰国後も両大学の交流を深めて、若い世代の相互理解を促進したい、という。

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