提言

−リーダーシップ養成プログラム

OSIPPで開発を

野村美明


 経済や政治、行政など、日本のあらゆる部分が、閉塞感で覆われている。人々の閉塞感は、新たなリーダーを求める。体制に浸りきった現在のリーダー達には、国民の利益に立った改革のリーダーシップは期待できない。
 確かに、日本の未来を託すことができるリーダーは、派閥のボスでも高級官僚でのない。だからといって、宗教団体の教祖であってもいけない。われわれがいま必要なのは、人々に虚偽と真実を見分けさせ、一番大切だと思われるものを自由に選択させるように導くリーダーである。いいかえれば、社会が直面する深刻で複雑な問題を人に理解させ、解決に向けて人を動かす能力である。
 民主主義社会におけるリーダーシップとは、言葉を通じた説明と説得に基づくものでなければならない。しかし、伝統的な「業界」での実務や経験は、このようなリーダーの養成にはつながらなかった。日本の教育も、正確な知識と迅速な情報処理能力を重視し、自発的なリーダーシップを育てるいとまがなかった。 これに対して、権限も営利目的もない、ボランティアの市民運動から、菅直人さんなどのような新しいタイプのリーダーが生まれてきた。
 だからといって、リーダーの養成を市民運動にまかせきりにはできない。他方、教育制度の改革には、時間がかかる。コストと効果の点および組織の柔軟性からも、リーダーシップ養成のためのプログラムは、この分野で先行するOSIPPで開発すべきである。
 OSIPPでは、3年前からプロジェクト演習の1科目として、実務家や他大学の教官と共同でネゴシエーション・セミナーを開催してきた。1997年度からは村上正直助教授によるディベートのセミナーが計画されている。言葉による説明と説得能力の習得をめざすネゴシエーション、さらに意思決定の要素を加えたディベート。これらのセミナーを利用すれば、リーダーシップ養成プログラムに 必要なノウハウと教材の開発が可能である。
 OSIPPは総合的な政策立案能力をもったプロフェッショナルの養成を教 育方針とするが、精神のない専門人(マックス・ウェーバー)を増産すべきではない。生み出すべきは頭脳と心情を兼ね備えた未来のリーダーである。 日本の閉塞状況を打ち破り、日本が国際社会で名誉ある地位を占めるために、経済、政治および法律の分野でのリーダーを育てること、これこそが税金で設立されたOSIPPの責務であり、同時にOSIPPが世界につながる道なのである。 (国際取引法・国際私法、教授)

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